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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
137/999

3-24  5回戦

―1―


 俺がここに残っている理由を思い出す。帝都に残ったままなのは、シロネさんとミカンさん、三人で決めた当初の目標地点だったからなんだよな。

 ここで待っていれば合流できるかも、って思いが強くて、結局、今でも動けない。特にさ、今の(パーティが解散してしまった為)二人の最終的な行方が分からない状態で土地勘が無い場所に向かうのは得策じゃないからなぁ。

 だから、闘技場で頑張って勝ち続けて有名になれば、いつか合流する時の目印になるかと思って、ただそれだけで戦い続けたんだよな。その結果、ここで仲良くなった闘技者があんな目に遭うなんて……キツいな。心が痛い。


 ああ、オーガス、お前の仇は討ってやるからな。


「おいおい、旦那。オーガスを勝手に殺したら駄目なんだぜ」

 いやいや、俺も殺したつもりは無いんですぜ。

「ま、戻ってきた時の状態が酷かったから、俺も最初は死んだかと思ったんだぜ。さすがに魔獣は丈夫なんだぜ」

 体中が綺麗に切り裂かれていたらしいからな。輪切りのように切断された腕も今では綺麗にくっついているらしいし、そりゃ丈夫って思うわな。


 キョウのおっちゃんが情報を仕入れて俺に教えてくれなければ、本当に死んだと思っていたところだよ。さすがは魔獣の回復力って所か? いやまぁ、魔獣の回復力が強いというのは俺の勝手な思い込みなのかもしれないけどさ。


「今日は旦那の試合だな。応援しているぜ」

 うむ。負けるとは思えなかったオーガスですら負けるんだ。油断しないように気を引き締めないとな。


 控え室で静かに待っているとずだ袋さん達が現れた。俺は小っこい羽猫を控え室に残し、奥の通路へ進む。

 さあ、勝ってくるぜ。




―2―


 通路を抜け、闘技場の舞台へ。


 俺の登場と共に大歓声が起こる。ほう、俺も人気が出てきたモノだな。

「魔獣同士殺し合えー」

「芋虫、今度も殺さずに勝つのか?」

「殺せー」

 人気者は辛いな。


 そして舞台の上には完全武装をしたゴブリンナイトのチャッピーさんが居た。今度の相手はチャッピーさんか……。


 全身が重そうな金属の鎧に覆われ、右手に盾、左手に短めの剣、背中に大盾を装備したガチガチの重装備だ。団体戦で一緒に戦った時よりも重装備だな。これじゃあ、動くのも大変そうだ。


 チャッピーさんがガシガシと大きな金属音を立てて舞台の中央へ。俺も誘われるように舞台の中央へ。


 そこで試合開始を告げる銅鑼の音が響く。さあ、戦いの開始だ。



 チャッピーさんは盾を構えゆっくりと歩いてくる。さて、どうする? 動きの鈍い相手へのセオリーは……?


 俺は素早く、チャッピーさんの背中に回り込む。そして、そのまま突きを繰り出す。背中ががら空きだぜ。

 チャッピーさんが体を少しだけ動かす。その動きによって、俺の背後からの突きは背中の大盾にあたってしまい弾き返された。うお、安易な攻撃すぎたか。


 チャッピーさんがガシガシと重量感のある音を立てて振り向く。しかし、振り向いた時にはもう俺は居ない。先程と同じように、俺はすでに後ろへと回り込んでいた。うーん、盾はウェポンブレイクで壊せないのかなぁ。

 さあ、もう一度、貫くぜ! しかし、再度、背中の盾に弾かれる。安易な攻撃過ぎたか? 更に、そのままチャッピーさんがこちらに倒れこんできて、こちらを押し潰そうとしてくる。ちょ、重い。


――《魔法糸》――


 俺は魔法糸を飛ばし、そのまま体を滑らせチャッピーさんの下から抜け出す。重量で押し潰してくるとか怖いなぁ。

 俺が抜け出したことでそのまま倒れ込むかと思いきや、そのままごろんと一回転し、こちらへと斬りかかってきた。ちょ、こわっ。


 回転と共に振り下ろされる小剣。剣……? これなら行けるはずッ!


 チャッピーさんの小剣に合わせるように真紅とグレートソードを……!


――《Wウェポンブレイク》――


 真紅とグレートソードの二つの軌跡がチャッピーさんの小剣を砕く。キラキラと粉になって砕け散る小剣。よし、武器が違ってもスキルが発動したな。

 チャッピーさんは砕け散った剣を見、投げ捨てる。武器はもう無いぜ?


 チャッピーさんが背中の大盾を降ろし、左手で持つ。両手に盾だと? 盾を打撃武器として使うのか?


 しかし、俺の予想とは違い、チャッピーさんは盾を構えたまま回転を始めた。な、何が始まるんです?


 コマのような高速の横回転。姿形が分からなくなるような回転が横から縦に。そのままこちらへと突っ込んでくる。ちょ、そんなのも有りなのか? それとも何かのスキルか?


――《魔法糸》――


 魔法糸を飛ばし、チャッピーボールを回避する。

 避けたボールが大きく弧を描き、またこちらへと突っ込んでくる。ちょ、あぶな。どんな三半規管をしていたらこんな事が出来るんだ。

 幾ら俺が素早く動けるといっても瞬間移動が出来るわけじゃないからな。ここまで激しく突っ込んで来られると回避も困難だな。


 いっそ、槍で迎え撃つか? そうだな、真紅なら行けるはずッ!


 また弧を描き、こちらへと突っ込んでくるチャッピーボール。よし、勝負だッ!


 俺はグレートソードを背中に納め、真紅をサイドアーム・ナラカに持たせ、水平に構える。

 そして頭上に赤い線が走る。え? 何で頭上?


 そう思った瞬間には、チャッピーさんが回転を止め、その勢いのまま、盾を地面に打ち付けカタパルトよろしく空中へ飛び出していた。へ? は?

 そして上空からの強力な盾の打ち下ろしが。うお、マジか。くそ、一か八かッ!


――《魔法糸》――


 魔法糸を出し、そのまま自由な両手で糸を持ち、上にかざす。魔法糸が盾を受け止める。ふぅ、剣とか切断武器じゃなくて良かったぁ。

 そして、その勢いを利用し背中から倒れ込むように一回転、今度は俺が空中へ。空飛ぶ芋虫です。

 すぐにズドンという大盾が地面に叩き付けられた音が。アレを喰らっていたら即死だったな。

 そして空中から攻撃をッ!


 しかし、俺の空中からの攻撃を予想していたかのように、チャッピーさんが持っていたもう一つの盾が振り払われる。自由落下に任せる空中では逃げ場が無いッ? いや、まだだッ!


――《浮遊》――


 空中で俺の体が停止する。そして何も無い空間に振り払われるチャッピーさんの盾。チャッピーさんは体勢を崩している。終わりだッ!


――《百花繚乱》――


 穂先も見えないほどの高速の突きがチャッピーさんの鎧に突き刺さる。弾かれ飛ばされながらも金属鎧を凹ませ、飛び散った金属片が花弁を作っていく。削れ削れ。今なら、相手に俺の攻撃を防ぐ盾は無いッ!

 そして、トドメだッ!


――《スパイラルチャージ》――


 真紅が赤と紫の螺旋を描き、薄くなった鎧の一点を貫いていく。砕け散れッ! そのまま槍の突進力によってチャッピーさんの鎧が砕け散った。


――《魔法糸》――


 俺は魔法糸を飛ばし盾を持っていた片方の手を固定する。これで動けまい。


 片方の盾は地面に突き刺さったまま、もう一方の盾は魔法糸で自由に動けない。そして鎧も砕け散った。

 俺は真紅を突きつける。

『これで勝ちだ』


 チャッピーさんが戦意を喪失し、崩れ落ちた。


 今回も勝ったぜ!

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