3-23 フラグ
―1―
ずだ袋さんに連れられて通路へ。
「よくやった」
はい、頑張りました。
「報酬だ」
100死に紙が8枚に小っちゃな魔石が4個。おー、800死に紙かー、急に貰える枚数が多くなってきたな。これで食事には困らないし、魔石が4個もあれば当分の間は真紅も持つかな。うん、助かった、助かった。
現在の死に紙の枚数は993か。これだけ余裕があるならグレートソードを買おう。武器が増えるのは良いことだよね。
通路を抜け控え室へ。待っていた小っこい羽猫と合流。小っこい羽猫がぱたぱたと一生懸命、もふもふな羽を動かし俺の頭の上に。そのまま、どべーとだらしなく広がる。俺の頭はお前のベッドじゃないんだがなぁ。
「よお、旦那。今日も勝ったのか?」
勝ったんだぜ。にしても、結構な数の闘技者が控え室にも居るのに、仲良くなれたのはキョウのおっちゃんとオーガスくらいだよな。ゴブリンナイトのチャッピーさんとは団体戦で一度だけ一緒に戦ったけど、あれから特に話すことも会うこともないしなぁ。
「なんだ、旦那。ここの連中と仲良くなりたかったのか? それなら簡単だぜ」
いやまぁ、仲が悪いよりは仲が良い方がいいよね。
「こいつらは強い者が好きだからな。強くなれば、勝ち続ければ簡単に認めてくれるぜ」
ま、何にせよ、勝ち続けろってことだよな。
「なんだ、お前は最強に興味があるのか?」
オーガスも絡んでくる。君ら暇なのかね。後ですね、お、俺は、べ、別に最強に興味があるわけじゃないんだからね。
「ま、この帝国で最強と言えば間違いなくゼンラ帝なんだぜ」
うん? 全裸と言いましたか? 何それ? 脱げば脱ぐほど強くなるとかそういう系の人?
「何だ、旦那。余り帝都のことには詳しくないのか? なんなら説明するぜ」
お、説明してくれるのか。俺の中ではキョウのおっちゃんってば説明好きな説明キャラってイメージで固定だよなぁ。
「この帝都を治めているのが、その、まだ幼いゼンラ帝なんだぜ。まぁ、まだ幼いから政治とかは無理なんだけどな。それを手助けしているのが八常侍と呼ばれる8人の大貴族なんだぜ」
へー。ゼンラ帝って名前なのか。全裸のおっさんを想像してしまったぜ。にしても幼いのに最強なのか?
「旦那に絡んできているスイメイのお嬢ちゃんトコも八常侍の一人だぜ。闘技場に出資をやっているから、困ったもんだぜ」
スイメイってアレだよね。キラキラ男と一緒に居たお嬢さんだよね。ほー、俺に絡んできているのはその八常侍って言われる大貴族だったのかー。って、よく知っていたな。闘技場での試合って観戦できないはずだから、そこからの絡みは分からないだろうし、どこで情報を仕入れたんだろうか。このおっちゃん、謎のコネを持っているぽいよなぁ。
「ゼンラ帝か……。我は嫌いな強さだな」
ほうほう。
「ゼンラ帝は仕方ないんだぜ。無異装備が強力過ぎるんだぜ」
あー、装備に頼った最強系な訳ね。
「物理完全防御、魔法反射、精神攻撃無効な無異装備なんだぜ。しかも歴代の帝のみに受け継がれ、それ以外には装備することも外すことも出来ない代物なんだぜ」
へ? 何ソレ? チート装備じゃないか。そんなものどうやって攻略するの? あー、だから最強なのか。だから幼いのに最強な訳ね。俺も無異装備を持っているけど、そこまで破格な性能じゃない気がするんですが……何この差。にしてもフロウが無異装備を知っていたのは自分とこの帝が持っていたからなのかな。
「ま、旦那。旦那の試合を見に来ているヤジを飛ばしている奴らも勝ち続ければ変わるだろうぜ」
ほー、はー、へー。ま、勝ち続けるしかないってことか。
ま、行けるところまで行きますか。
―2―
今日も今日とて朝練です。朝練のやり過ぎで基礎的な体力や力がかなり付いた気がします。
早く次の試合が決まらないかなぁ。
グレートソードを買って、剣と槍を組み合わせた全く新しい戦い方も練習しているしね。
にしても槍と弓だけではなく剣も使うようになるとは思わなかったなぁ。ま、この腕と手だからね。うん、サイドアーム・ナラカが便利過ぎる。
朝練が終わり、控え室に戻るとずだ袋さん達が居た。お、もしかして次の試合が決まったのか?
「次の試合が決まったぞ」
お?
ずだ袋さんがオーガスに話しかける。って、俺じゃなくてオーガスか。
「お前の次の試合は今日の17:00だ」
ふむ、今日の17:00か。観戦出来ないのが残念だよなぁ。
『オーガス、待ってるぞ』
俺はオーガスに声をかける。オーガスは腕を組み、ニヤリと笑っている。ま、この黒豚さんが負けるところは余り想像が出来ないし、大丈夫か……って、そんなことを考えることがやばくないか。なんだかフラグみたいになっていないか? だ、だ、大丈夫だよな。
「それとお前の試合も決まっている。3日後だ。3日後の12:00だからな。忘れないように」
うお、俺の試合は3日後か。にしても急だなぁ。いや、でも当日、今、みたいな感じでは無い分、マシなのか?
ま、のんびりと食事や訓練をしながら次の試合を待ちますか。
俺はご飯を食べ、のんびりとくつろいでいた。
そして、その日、オーガスは戻ってこなかった。え? まさか本当にフラグだったのか? う、嘘だろ……?




