3-22 4回戦
―1―
【パーティを組んでいるメンバーと離れすぎた為、メンバーが離脱します】
【シロネさんがパーティから離脱しました】
【パーティメンバーが0になった為、パーティが解散されました】
いつものようにオーガスとの朝練を繰り返していると恐れていたシステムメッセージが表示された。ついにこの時が来たか。はぁ、ミカンさんに続いてシロネさんも離脱と。何コレ、俺ってば見捨てられているの?
シロネさんとミカンさんの件もキツいけど、真紅が食べる魔石集めもなぁ……。今は砕かなかった魔石を食わせてしのいでいるけれど、いよいよとなったら、まったく美味しくない団体戦に参加する必要が……うーん。
にしても何で目を付けられたんだろう? 俺、何かやったか? オーガスの助命が悪かったのか? いや、でも、フロウのあの感じでは問題無いと思うんだけどなぁ。ま、控え室に戻りますか。
控え室に戻るとずだ袋さん達が居た。
「次の試合が決まった」
ほほー、やっとですか。すっごい待ってたよ。早朝訓練のし過ぎでムキムキになるかと思ったよ。むきむきな芋虫だよ。
「本日の12:00からだ。遅れないようにな」
当日ですか。急過ぎない? オーガスとの戦闘の時は3日後って教えて貰えたのにさ。いや、もしかしてアレはフロウの親切だったんだろうか?
ま、ご飯を食べてくつろいでから試合に挑むとしますか。
今日も芋チップスです。さあ、小っこい羽猫よ、一緒に食べようぞ。もしゃもしゃ。
「急な試合だが、大丈夫か?」
大丈夫、大丈夫。もしゃもしゃ。
「旦那、期待してますぜ」
はーい、余裕っすよー。もしゃもしゃ。
なんだかこの三人ぷらす1匹でご飯を食べることが増えたなぁ。もしゃもしゃ。
みんなでもしゃもしゃ。やけくそのようにもしゃもしゃ食べるのです。
―2―
時間になり、ずだ袋さんに連れられて奥の通路へ。
「今回も頑張ってくれよ」
ずだ袋さんからの応援。うお、なんだか凄く嬉しいなぁ。
通路を抜け闘技場へ。闘技場の舞台上にはすでに対戦相手が待ち構えていた。ん? 持っている武器が……?
俺が対戦相手をよく見ようとしたその瞬間、銅鑼の音が闘技場に響き渡る。え? 俺、今、舞台に上がったばかりなんですけど。相手とかなり距離があるんですけど。
観客席から大声援が聞こえる。
「芋虫が来たぞ、殺せ」
「魔獣だ、殺せ、倒せ」
観客席には結構お客さんが多いなぁ。俺への暖かい声援も嬉しい限りだ。……って、余裕をかましている場合じゃ無いな。
大歓声の中、対戦相手が『弓』を構える。
へ? 弓? 弓だと! 何で相手は『弓』を持っているんだよッ! 卑怯じゃないか。
相手の弓から矢が放たれる。ちっ、結構、素早いな。
――《集中》――
飛んでくる矢を右に避け――その瞬間、左に赤い点が走る。
――《魔法糸》――
すぐさま魔法糸を飛ばし体を滑らせる。それを追うように矢が軌道を変え飛んでくる。ちょ、ホーミング性能を持った矢? それともスキルか。
俺はすぐさま真紅をじゃきーんと起動し、サイドアーム・ナラカに持たせる。そして、そのまま矢を打ち払う。
「芋虫、お前の行動は読んでいる。喰らえ、アローレイン」
今回の対戦相手は必殺技を喋っちゃう系だったか。聞こえないと思っているんだろうけどさ、こちらは字幕で分かるんだよな。アローレイン? って、ことは上かッ!
上に打ち上げられた矢が空中で無数の矢に分かれ落ちてくる。範囲攻撃か……逃げ道なしだな。行くぞ、真紅ッ!
――《百花繚乱》――
穂先も見えないほどの高速の突きが落ちてくる矢を次々と打ち砕いていく。打ち落としきれなかった矢が体に傷を付けていく。この程度のかすり傷、構うものかッ!
上からの矢を防ぎきった俺の目の前に次の矢が迫る。すぐさま躱して体を前に。俺の敏捷補正を馬鹿にするんじゃないぜ。
しかし前に出ようとした俺の足下に次の矢が刺さる。
「芋虫は素早さ自慢みたいだが、こちらの矢とどっちが早いかな」
俺が前に出るとそれを防ぐように矢が刺さる。右へ、とそこへも矢が。右へ、左へと俺の動きに合わせて矢が刺さる。俺を攻撃したいのか足止めするだけで満足なのか、もうね、何だコレ。
まぁ、焦らずに確実に矢を回避しますか。だってさ、遠視の効果で見える相手の矢筒の中の矢、目に見えて減っていってるんだもん。焦らなくても矢が無くなったら俺の勝ちじゃん。楽勝楽勝。
矢筒の矢が切れたのを見計らい相手へと駆け出す。その瞬間、観客席から矢が放り込まれる。は? そういうの、有りなんですか? 卑怯じゃないか? いや、この間に距離を縮めるッ!
駆ける。相手が拾った矢を慌てて放つ。すぐに赤い線が走る。走った赤い線に合わせるように真紅を走らせる。お遊びは終わりだぜ。
赤い線に合わせて真紅を走らせ矢を貫いていく。線をなぞるだけの簡単なお仕事です。
そのまま一気に距離を詰める。
「弓に近接技が無いと思ったか!」
対戦相手が矢を握り、こちらに斬りかかってくる。俺はそのまま相手の内側に入り込み槍を一回転、石突きを腹へと打ち付ける。
「くぽぁ」
対戦相手の口から空気が漏れる。そのままッ! 俺は真紅を野球のバットのように振り回し叩き付ける。
べちんと言う嫌な音と共に対戦相手が気絶する。
よっし、勝利。……にしても何だったの、コイツ。