表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
133/999

3-20  特訓と

―1―


 朝、目が覚めると……って、ここ何処だ? あ、ああ。部屋が変わったんだった。今の時間は、と……6:32か。下のベッドに居るキョウのおっさんはまだ眠っているな。昨日の戦いの後に回収した小っこい羽猫も眠ったままだ。

 眠ったままの小っこい羽猫を頭の上に乗せ、おっさんを起こさないように気をつけながら部屋を出る。

 さあ、今日も練習だ。


 俺は一人、こっそりと誰も居ないはずの練習場に向かう。


 しかし、練習場には俺以外の姿があった。


「待っていたぞ」

 練習場には新しいグレートソードを地面に突き立て仁王立ちしているハイオークのオーガスが居た。

「この時間、ここで待っていれば会えると思ったのでな」

 え、バレてた? 秘密訓練だと思っていたのにバレてたの? で、何の用なんでしょうか。

「お前に負けた我が言うの何だが、素早さと技のみに頼った今のお前では何れ勝てなくなってしまうだろうからな。そうならないよう、手助けをしたいと思ったのでな。練習に付き合おう」

 え? 何ソレ? 助けてくれるの? 昨日の敵は今日の味方(とも)的な展開なの?

「と言っても我は槍の扱いについては素人なのでな、剣を使った相手への練習にしかならないかもしれんがな」

 いやいや、それでも有り難いぜ。

「では、行くぞ!」


 まずはオーガスの縦斬り。甘いぜ。昨日の戦いと同じ結果になっちゃうぜ?


――《払い突き》――


 オーガスのグレートソードを打ち払い、そのまま一回転、突きを繰り出――目の前にはオーガスの左手が。大きな左手が俺の視界を塞ぎ、そのまま顔を捕まれる。痛い、痛い。顔が潰れちゃう。

「甘いぞ。例え片方の武器を弾いたとしても、もう片方に注意が行かないようでは、な。それに今のお前の力では返しきれない攻撃も多かろう。使い時をもっと見極めるのだ」

 む、むう。と、俺の顔を握っている手を外してください。超痛いんです。


 距離を取り、仕切り直しです。

「では、もう一度行くぞ」

 オーガスの縦斬り。ははは、見えているぜ。俺の素早さなら余裕で回避可能だぜ。さっきはスキルを使って失敗したからな、こんどは右に回避してっと。


 俺が右へ回避した瞬間、オーガスはその巨体に見合わぬ素早さで一歩後退し、すぐさまグレートソードを腰だめに構える。って、は、早い。

「それもお前の弱点だな」

 オーガスの腰だめに構えたグレートソードが振り払われる。ちょ、ま、待って。


 横に走る衝撃波。俺はすぐさま真紅を縦に構え攻撃を受ける。俺はそのまま吹き飛ばされ空中へ。


――《魔法糸》――


 空中で体勢を整え、地面へと魔法糸を飛ばす。しかし魔法糸を飛ばした先にはグレートソードを構えたオーガスが待ち構えていた。な、なんだと。

「素早いのは良いが、それに頼りすぎると範囲攻撃で一撃だぞ。さらにだ。お前の、その糸は便利かも知れないが移動先が見えすぎる。幾ら空中で方向転換する為とはいえ、そう単調ではな!」

 く、マジかよ。


 転がり落ちた俺の目の前にオーガスのグレートソードが……って、昨日と逆じゃないか。

「問題点は見えたか?」

 むむむ。俺、昨日、よくこの人に勝てたな。




―2―


「スキルを使うのは悪くない。ただ、スキルを連続では使えないのだ。使い時を考える……後は組み合わせだな」

 オーガスからの助言。


「単調な動きしかしない魔獣ならスキルの連打でも勝てるだろう。だが、人は考えるのだ。昨日、お前の手の内を知っただけで、今日は我の方が優位になったぞ?」

 ぐぬぬぬ。


「そろそろ、他の闘技者が来る時間だな。今日はここまでにするか」

 あ、ああ。くっそー、自信を無くすぜ。昨日、勝った相手に手も足も出ないんだからな。


 と、普段ならこの後、お食事券を貰ってて感じなんだが、お食事券の配給はどうなるんだろう。だってさ、今、俺は二人部屋じゃん。そこまでずだ袋さんが持ってきてくれるんだろうか。

「む、食事券か。3戦勝利後は貰えないぞ。アレは弱者救済も兼ねているのでな」

 なんだと。そうなのか。まぁ、仕方ない。昨日、200死に紙貰ったし、それを使おう。まぁ、ずだ袋さんという癒やしに会えなくなるのは残念だけどね。


 さてと、控え室側に戻るか。俺は練習場の片隅でごろごろと転がっていた小っこい羽猫を頭に乗せ、そのまま控え室へ。


「おや、旦那。居ないと思ったら早朝訓練だったのかい?」

 俺とオーガスが控え室に戻るとキョウのおっちゃんが居た。

「じゃ、丁度良いから食事にするんだぜ」

 ふむ、時間的には少し早いが食事にするか。なんというか、この世界って正午よりも早い時間にご飯が普通なんだよなぁ。

「我も一緒しよう」


 三人でフードコートから食事を選ぶ。オーガスはハイオークらしく肉肉しいモノばかりだ。キョウのおっちゃんは野菜系ばかり、意外と肉が苦手なのかな。

 俺はどうするかなー。ん? んん?


 薄く切られた芋を揚げたモノが……なんだと。

「あんたに言われて作ってみたんだよ」

 まさかのおばちゃんからの言葉。お、おおー。後は塩を振ろう、そうだ、塩だッ! おばちゃん塩ってありますかー?

「塩、塩ねぇ? 無いことはないけど、ちゃんと死に紙を貰うよ?」

 え? 塩あるんですか。塩って異世界だと高い! 貴重! ってイメージがあったんだけど、意外とそうでもないのか?

『塩も貰おうか』

 薄く切った揚げ芋は1死に紙、振り塩が2死に紙か……。確かに他の料理が全て1死に紙ってコトを考えれば高いけど、思ったほどじゃないなぁ。今度から塩も貰おう。美味しい食事、大事。


 もうサイドアーム・ナラカを隠す必要もないので、普通にサイドアーム・ナラカに器を持たせて移動する。すいーっと空中を移動する器。

「旦那、それどうやっているんだぜ?」

 秘密なんだぜ?


 俺たちは空いている席に着き、食事を始める。小っこい羽猫ももしゃもしゃと芋チップスを食べている。俺も食べるか。サイドアーム・ナラカで芋チップスを掴み、口の中へ。もしゃもしゃと食べるのです。もしゃもしゃ。


 うーん、ほんのりとした微妙な甘みが、微妙。もしゃもしゃ。薄味だしさ、もうちょっとジャガぽい感じの芋が欲しいよなぁ。


「で、旦那。俺はこの後、団体戦をやるけど、どうするんだぜ?」

「我も参加しよう」

 うお、オーガスさんも参加するの? じゃ、俺も参加でお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ