2-7 森鼠
―1―
お昼前に起床。まずは下に降りて食事を受け取ろう。
今回、カウンターに居たのは娘さんの方だった。女将さんの姿は見えない。そういえば娘さんの名前、知らないや。
鑑定で見てみよう。
ちなみに延びている線は人の場合は『人』と、生き物の場合は『動物』とか『野兎』とか種別が表示されている。余り詳しいことは表示されないことが多い。詳しい線の時とそうじゃないときの条件がイマイチわかんないんだけどね。で、このぽっちゃりな娘さんも『人』って線が延びている。ソレを意識して調べる。アドベンチャーゲームとかのカーソルを合わせて、コマンド>調べる、みたいな感じだね。
【鑑定に失敗しました】
は? 何? 鑑定って失敗とかあるの? 中級鑑定なのと関係あるのかなぁ。出てくる情報も凄く、凄く少ないしね。ぽっちゃりな娘さんは何かに気付いたのかキョロキョロと辺りを見回している。む、もしかして鑑定に失敗すると気付かれるのかな? もしそうだとするとむやみやたらに使うのも考えるべきなのか。
ま、それでももう一度鑑定してみるんですけどね。
【名前:ステラ・ロード】
【種族:普人族】
ロードさん家のステラちゃんだね。なんとなくだけど、お店を経営しているのは普人族が多いのかもしれないな。
『すまない、食事をしたいのだが』
「あ、はい。すぐに用意します。食事はお部屋……でされますよね?」
『ああ、頼む』
少し昼には早いが食事にする。本日のご飯は『何かの肉のステーキ』と『ふわふわのパンみたいなもの』と『リンゴのような果実』でした。
何かの肉のステーキには甘酸っぱいソースがかかっており、肉の臭みを上手く打ち消してくれています。堅めの肉が美味しいです。
ふわふわのパンのような物はうっすらと栗のような甘みがありまあまあ食べられます。
リンゴのような果実は……騙されました。生でサツマイモを囓っているような感じです。これ絶対、焼くか蒸すかした方が良いと思うのです。てっきりデザートだと思ったのに……。
総評価。見た目に騙されたけれど、まぁまぁ満足です。
さあ、朝の食事も済ませたし、正午までには冒険者ギルドに行きますか。
―2―
冒険者ギルドにはすでにウーラさんが居た。ちょっとまて、まだプレートの表示だと11:54だぞ。俺の5分前行動よりも早いとは……。
『ドーモ、コンニチハ、ウーラさん』
「ええ、こんにちは。では、今日もクエストを受けますか」
今日もウーラさんはバンダナで立たせた赤髪短髪がさわやかです。
冒険者ギルドに入る。
ギルドのカウンターに居たのは、今日もちびっ娘だった。む、もしかして眼帯のおっさんの方がレアなのか、レアキャラなのかッ!
「虫」
ホント、この娘、失礼だなー。しかも必要最低限しか喋りやがらない。喋るの億劫系ですか、喋り過ぎちゃうと死んじゃう系ですか!?
『今日もクエストを受けに来た』
ささっとGランクのクエスト板の中からホーンドラットの狩猟と書かれた板を取り、ちびっ娘に渡す。
Gランク
常設クエスト(狩猟)
ホーンドラットの狩猟と解体
スイロウの里近くに出没するホーンドラットを狩猟し解体すること。
解体までがクエストです。
クエスト保証金:無し
報酬:640円
獲得GP:1
ホーンドラット、1体に付き640円で買い取ります。
一日一回限定
買い取り金額は銅貨1枚と言うことで、キノコよりも多いな。つまり、このクエストの報酬は報酬と買い取り代で最低、銅貨2枚になるってことだね。にしても解体かぁ、このドラ○もんハンドで上手く出来るのだろうか……。
「虫、頑張れ」
ああ、頑張るよ。
ちびっ娘に見送られ冒険者ギルドを後にする。
―3―
本日もウーラさんの案内でホーンドラットの生息域に向かう。キノコの群生地から少し進んだところだったので、キノコクエストと同時に受けてキノコを漁って向かうと効率が良さそうだ。
「あ、ランさん居ましたよ」
自分の視界にも線が見えている。線の先は『魔獣』になっている。
「ホーンドラットは角を持った鼠の魔獣です。角の突撃には注意が必要ですが、突撃の後に大きな隙が出来るので、そこを攻撃するとあっさり倒せますよ」
ふむふむ。ウーラさんの意見を参考に魔法糸を吐き出し準備する。
鼠は、こちらに気付いたのか駆け、近寄ってくる。人に驚いて逃げるとかはしないのね。
ある程度近くに来ると、突然、角を前に出し飛びかかってきた。これが突撃か……が、見切っているぜ。糸を離れた地面にくっつけ高速移動。ふっ、残像だ。
ホーンドラットは角が地面に刺さり動けなくなっている。
『森鼠、森鼠、森鼠、またのー』
俺はとある呪文を唱えながら鉄の槍を突き刺す。一撃では殺しきれなかったので、槍を引き、もう一撃。ホーンドラットは息絶えた。
「さて、ランさん、魔獣と野生動物の違いってわかりますか?」
と、そこでウーラさんからの突然の質問。
うん? 鑑定で魔獣と表示されるかどうかってこと?
「魔獣は体内に野生動物には無い魔石と言う物を持っています。魔石を得ることも冒険者の仕事の一つです。そして一番分かりやすい違いが魔獣は経験値を持っています。ランさん、自分のステータスプレートを見てください」
ステータスプレート(黒)を取り出し確認してみる。お、ホントだ。
EXPが2/1000になっている! って、次のレベルまでホーンドラット499体必要ってことですか……先は長いなぁ。それでも経験値が手に入って先が見えてきたのは嬉しいな。
「クエストは解体まで行って終了ですが、この場で解体しますか? 換金所で解体をしても大丈夫なので換金所の方で解体しますか?」
『換金所で行うことにする』
いやだって、いきなり解体とか……怖いですもん。
「それでは、せっかくなので、もう何匹か狩りますか?」
もちろん。経験値を稼ぎたいでーす。
「そうそう、解体ですが、『狩人』のスキルに《解体》と言ったずばりのスキルがあるんです。このスキルがあると解体作業に補助がかかり、スムーズに解体が出来るようになります。素材も痛めないのでオススメのスキルですね」
へぇ、便利なモノがあるんだな。
それから4匹ほどのホーンドラットを危なげなく狩猟し帰還することになった。
うーむ、次は解体かぁ。グロくなりそうだなぁ、余りグロく無いと良いなぁ。グロ耐性があるほうじゃないし、怖いなぁ。でも、こういうのって慣れるって言うし……うーむ。
4月25日修正
さあ、食事も取ったし → さあ、朝の食事も済ませたし
4月28日修正
ホーンドラビットの生息域に → ホーンドラットの生息域に