3-16 クラス
―1―
ずだ袋さん達がキラキラ男を回収していく。ずた袋さんの一人がこちらを向いてこっそりと何かのサインを送ってくる。ああ、多分、ぐっじょぶってことかな。
俺もずだ袋さんに連れられ通路へ。その際、ちょっとした興味で特等席に座ったお嬢さんを見てみる。お嬢さんは、言葉に出来ないくらいのとても酷い顔で手に持った扇子をたたき折っていた。うひー、関わり合いになりたくないなぁ。
「よくやった」
ずだ袋さんからの祝福。ありがとうございます。
「これで闘技場にちょっかいをかけてくることもなくなるだろう」
そ、そうかなぁ。最後のあの悔しそうな顔は更に手を出してきそうなんですけど。なんだか変なのに目を付けられちゃった予感が。
「これが今回の報酬だ」
10死に紙が3枚と魔石2個か。1万までは遠いなぁ。
魔石も死に紙も魔法の巾着に入れておく。まぁ、魔石はすぐに使ってもいいんですけどね。なんとなく欲しいスキルが取得出来るまで砕くのを我慢しちゃうんだよなぁ。
よし、今日も晩ご飯は我慢しよう。
さあて、消灯時間まで練習場で皆さんの訓練を観察させて貰いますかね。
剣を振るったり、色々回避動作を繰り返したり、そんな練習風景です。うーん、どの方々も強そうに見えません。そういえば、今日のキラキラ男とか練習場で見たことがないな。もしかして強そうな方々を見ないって、そういうことか!?
つまり外部から参加する闘技者も居るってことか? そういえばキラキラ男は特別な武器に鎧だったよな。外部からの参加者は持ち込み有りってコトか。えー、それって卑怯じゃないかよ。だってさ、俺たち買い取りと言われた闘技者は、品揃えが毎回変わる上にたいした物が並んでいない武器屋で装備を揃えるしかないんだぞ。しかも俺たち買い取りの闘技者は外出することも出来ないからなぁ。外に装備品を買いに行くことも出来ないって……不利なことばかりじゃないか。
持ち込みが有りなら、俺の装備品を使わせてくれても良かったじゃないかよッ! 今からでも遅くないので俺の真紅を返してください。
―2―
目が覚めると朝になってい……って昼じゃないか。現在の時刻は11:22か。珍しく遅い時間に起きてしまったな。これでは朝練が行えない。まぁ、仕方ないか。
いつものお食事券を配ってくれるずだ袋さん達もすでに帰ってしまっているようだ。がーん、俺のお昼ご飯が……。まぁ、仕方ない死に紙を使って食事するか。
「芋虫魔獣は居るか……お、ちゃんと居るな」
うん? 誰だ。
「ほう、ちゃんと生き残ってるみたいだな」
俺に会いに来たのはフロウだった。この闘技場のお偉いさんの一人が俺に何のようかね。
「昨日はよくやってくれた。スイメイのトコの餓鬼のあの顔……ククク、見ていて痛快だったぞ」
もしかして、それを言いに来たのか?
「いや、そうだな。お前の3回戦が決まったぞ」
へ? 昨日の今日で、ですか?
「相手は、オーガスだ。今日から3日後の13:00だ」
お、マジカ。あのハイオークさんが相手かよ。しかも三日後とか……どう準備しろってんだよぅ。ここだと経験値も入らないからレベルも上がらないんだぞ。気絶させた1回戦と2回戦は当然として、団体戦でも経験値が入らなかったからなぁ。強くなる方法が、なんとか強い武器を手に入れるかスキルを憶えるしかないんですけどー。
「お前には期待しているからな」
ふーん。余りそうは見えないけどな。
「クラスを得ていた魔獣は、俺が知っている中ではお前が4人目だ。更にこの闘技所で戦士のクラスを得ることが出来たのはお前で2人目だ。それだけしか居ない。つまりだ、俺の言っていることが分かるよな?」
うん? 魔獣って、普通はクラスを得ることが出来ないってことか?
「色々な魔獣に――知識を持った魔獣にクラスが取得出来ないか、まずは試させているんだがな、どれも上手くいかなかった」
俺が2人目だと? そういえばチャッピーさんは『種族』がゴブリンナイトだったな。もしかして魔獣はランクアップして進化する感じなのか? 普通はクラスを取得出来ないのか?
『自分が2人目というコトは――最初の一人は、あの……?』
フロウは首を振る。
「はは、お前が予想したのはオーガスのコトだろうがな、違う、ヤツじゃない。まぁ、お前が勝ち続ければ会えるだろうさ」
勝ち続けたら……か。
―3―
お食事券が貰えなかったので普通に死に紙を1枚使ってご飯を選ぶことにする。お食事券が無いので定食は選べないようだ。
謎肉を焼いただけのモノと謎芋ブロックの揚げたモノと黄色い平べったいパンみたいなモノか……。うーん、どれも微妙。
とりあえず今日は謎芋ブロックの揚げたモノを食べようか。あ、おばちゃん、次に謎芋を揚げる時は薄く切ってからにしてください、お願いします。
謎芋に魚醤を垂らす。よし、小っこい羽猫も食べるが良い。
もしゃもしゃ。
俺たちが食事をしているとキョウのおっさんがやって来た。このおっさん、よく俺に絡んでくるなぁ。
「旦那、あんたの次の試合が決まったようだぜ」
はい、知ってます。暇そうなフロウさんから聞きました。
「で、勝てそうな見込みはあるのかい?」
無いです。無いから困ってます。
まぁ、結局、今まで温存しておいたサイドアーム・ナラカを使って何とかするって感じになるんだろうけどね。後はギリギリまで死に紙を貯めてグレイトソードを買うってトコか。
ということでッ!
『キョウ殿、暇かね?』
一緒に団体戦に参加しようぜー。死に紙を貯めようぜー。
「団体戦だな? ま、旦那と一緒なら楽が出来そうだし、俺も参加するぜ」
おー、有り難いな。とはいえ、楽はさせないんだぜ?
『後一人はどうするんだ?』
「掲示板にチェックをしておけば他の誰かが勝手に参加してくれるんだぜ……多分」
おいおい、多分かよ。まぁ、今の俺にはこのおっさん以外に知り合いは居ないし、誰かが参加してくれるのを待つか。
団体戦って、一日に何度でも参加出来るのかなぁ?




