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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
127/999

3-15  2回戦

―1―


 食事を終え、試合開始になる16:00までは暇なので武器屋に売られている装備品を見ながら時間を潰すことにする。この武器屋に並んでいる装備品だけどさ、日替わりで種類が変わるんだよな。値段も変わるんだけど、時価でもあるのかな?


 よし、今日は何があるかな。


【アイアンナックル】

【拳に付ける鉄製の武器。これで殴られると非常に痛い】


 俺が絶対に使えない武器だな。にしても鑑定のメッセージが痛いとか、かなり適当だなぁ。ナックル系武器とか、剣を持った相手が中心のこの闘技場で活躍の場があるんだろうか。ちなみに価格は10死に紙でした。お高いです。


【上質なロングソード】

【刃渡り1メートルほどの一般的な長剣。上質な素材と加工がされており品質が向上している】


 説明が長い。上質って一概に言っても素材違いなどで説明が変わってくるのかな。こちらは13死に紙か。


 値段が結構適当な気がするなぁ。昨日はグレートソードの値段が34死に紙だったのに、今日は99死に紙だもんな。気分で付けているとしか思えない。まぁ、死に紙というこの闘技場の中でしか流通していない紙幣だもんな、色々好きに調整出来るんだろうさ。


 武器を物色しているとずだ袋の人たちが現れた。もう時間か。

「こちらだ」

 案内されるがままに通路を進む。

「調子はどうだ?」

 ずだ袋さんが話しかけてくる。ばっちりですよー。

「今日の試合は是非勝って貰いたい」

 うお。運営側の人がそんな肩入れしたようなことを言っていいの? 頑張っちゃうよ?

『何かあるのか?』

 ……。

「いや、聞かなかったことにしてくれ」

 えー。凄い気になるんですけど。まぁ、闘技場に上がってみれば分かるか。




―2―


 舞台の上にはすでに対戦相手が居た。……うん? 二人?


 きらきらと輝く実用性が低そうな鎧に豪華な飾りのついた長剣を持った男と帯で締めただけの優雅な上衣にスカートのような下衣の姿の女性が居た。


「対戦相手が来たようですね」

 女性が口を開く。隣に居る男は黙ったままだ。

「この子の相手は魔獣もどきですか」

 観客席の入りは、と……うーむ、さすがは前座、微妙だな。

「さあ、私の可愛い子猫ちゃん。その力を示すのです」

 おー、これだけ観客席に人が少ないのに大張り切りですな。


 ずだ袋さんが俺に近寄ってくる。

「貴族の娘の一人だ。神聖な戦いを汚す……迷惑なモノだ。あの娘に現実を教えてやってくれると助かる」

 なるほどね。なんというか理由は分かったけどさ、俺も強制的に戦わせられている側だからなぁ。自身で望んで参加していたのなら共感したんだろうけどさ。


 貴族の娘が闘技場の外周に取り付けられた階段を上がり、特等席に座る。ほう、さすがに舞台上で観戦するわけじゃないんだな。まぁ、見るからに戦えなさそうなお嬢さんだしな。

 取り付けられた階段はずだ袋さん達によってすぐに片付けられた。


「ち、なんで俺がこんな目に……あのクソ餓鬼が」

 お、目の前の男が何かぶつぶつと呟いていると思ったら愚痴かぁ。このくらいの距離なら充分、字幕として表示されますな。

「こんな魔獣もどき、あっさり殺して……」

 はぁ。俺はあっさり殺されるんですかねぇ。


 そうこうしていると、大きな銅鑼の音が舞台上に響き渡った。おや? もしかして、コレ、試合開始の合図か。初戦の時や団体戦の時は無かったよな。ま、気にしても仕方ない。頑張りますか。


 俺は駆け出し、体当たりをするようにロングソードを振るう。しかし俺の攻撃はキラキラ男の剣によって防がれた。ほう、これくらいは防ぐのかぁ。

「ち、なんだよ、こいつ。こんなのは聞いていないぞ」

 いやまぁ、俺も聞いてないんですが、なんでしょう。


 剣と剣のつばぜり合い。俺は全身で押し込むように力を入れる。

「お、おい、お前、言葉はわかるか」

 キラキラ男の言葉。いやまぁ、こんな外見だから誤解されますけどね。普通に言葉くらい分かりますよ。

「よ、よく聞け」

 は、はぁ?

「お前、わざと負けろ」

 いや、あのー。ここって命のやりとりをする最低な場所ですよね。そこでわざと負けろって、死ねってコトですか。俺は剣に力を入れる。

「お、お前、貴族に逆らうのか?」

 うん?

『あなたは貴族なのか?』

 一応、聞いておくか。

「スイメイ家に逆らうのか」

 いや、あのさ……会話になってないなぁ。俺は更に剣に力を入れる。

「お、おい。俺はお嬢様のお気に入りなんだぞ、分かっているのか」

 あんたは貴族じゃないんだろうな。お嬢様お気に入りの剣奴か男娼ってトコか。ずだ袋さんも俺に勝てって言っていたし、そういうことなんだろう。


――《ウェポンブレイク》――


 ぶつかり合っていた相手側の剣にヒビが入る。うむ、この状態でしっかりと効果発動と。

「おい、何をした!」

 さてと、終わりかな。最初の時にハイオークさんの実力にびびったけどさ、この程度の相手ばかりならなんとかなりそうだなぁ。

 俺はキラキラ男の剣を打ち払い後方へ跳ぶ。

「くそ、死ね」

 キラキラ男が体勢を立て直し剣を振り下ろしてくる。お、近寄ってきてくれて助かった。


 俺は飛び上がりながら手に持ったロングソードを相手の振り下ろしに合わせる。ヒビが入っていたキラキラ男の剣は俺の力に負け刃の途中から砕ける。よし、そのままッ!


 飛び上がった空中でロングソードを逆手に持ち替える。あー、持ちにくいぜ、こんちきしょう。


――《魔法糸》――


 魔法糸を地面へと飛ばし、その勢いのまま相手の腹目掛けて剣の柄ごと体当たりをぶちかます。

「かっ、は」

 キラキラ男の口から体の中の全ての空気が吐き出されるような音が。鎧の上からとはいえ効いただろう?


 そのまますぐにキラキラ男の腹下から抜け出す。


――《魔法糸》――


 俺は魔法糸を地面に飛ばし、その勢いで空中へ。喰らえッ!


 俺の攻撃によってくの字に曲がったキラキラ男。その首目掛けて全体重を乗せた手刀を振り下ろす。まぁ、俺の小さい手足だと、手刀というか全身でのボディプレスみたいな感じになってしまったけどさ。

「げっ、ふ」

 俺の攻撃によってキラキラ男が崩れ落ちる。……死んでいないよな? さすがに殺しちゃうのは不味いだろうからな。


 えーっと、コレで勝利か。

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