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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
124/999

3-12  烈風剣

―1―


 目が覚めると朝になっていた。ふあぁ。首から提げたステータスプレート(銀)に表示されている時刻は……6:32か。まだまだ早い時間だな。頭の上に乗った小っこい羽猫も周りの闘技者達も寝ている。


 よし、時間もあるし練習場に行ってみるか。


 控え室にも練習場にも、まだ誰も居ないようだった。うん、この世界では早朝訓練をやらないのが常識なようだな。


 今日もロングソードをサイドアーム・ナラカに持たせて振ってみる。ぶんぶん、と……やはり軽いよなぁ。


 俺はここの闘技者の練習風景を思い出す。えーっと剣の構え方はどうだったかな。確かこう持って……って、駄目だ参考にならない。練習的なモノではなく、もっと実践的な……うーん。実践的な剣の形と技が欲しいんだよなぁ。


 剣ねぇ。ウーラさんは斧だったしなぁ。あッ!


 いや……俺は知っているぞ。実践的な剣の技を知っているぞ。


 確か、剣を水平に構えて――サイドアーム・ナラカを水平に、だよな。相手を貫くように突きをッ! そうだ、コレだッ!!


 【《ゲイルスラスト》が開花しました】


――《ゲイルスラスト》――


 剣が激しい風を纏い空気を貫いていく。……出来たッ! 出来ちゃったッ!


 俺、愛用の《スパイラルチャージ》を破った技――烈風突き。見よう見まねだったけど、やはり自分で受けたことのある技は違うなぁ。と、ここから更に二段突きに派生していたよな。そちらも何とか習得出来ないかなぁ。よし、練習だ。


 さっそく烈風二段を……って、《ゲイルスラスト》が発動しない。うーむ、リキャストタイムかな。まぁ、周りに人も居ないし、時間をかけて黙々と練習しようか。




―2―


 大部屋に戻るとずだ袋の集団さん達が居た。お仕事ご苦労様です。

「今日の配給だ」

 ずだ袋の男達がお食事券を配っている。俺も貰っておこう。並んでいる闘技者の後ろにつく。


 俺の順番になり、お食事券を受け取る。


 ……。


 あれ? 今日は試合がないのか。となると今日一日、暇になるな。個人的には結局習得出来なかった烈風二段の練習を続けたいんだが。あー、でも練習風景を他の闘技者に見られたくないからなぁ、どうしよう。


 よし、団体戦とやらに参加してみるかッ! ……って、どうやって参加するんだ。まぁ、考えても仕方がないしご飯を食べよう。


 食券を持ってフードコートへ。カウンターには見本とおぼしき定食が2種類。今日は山盛りの謎肉とパンか山盛りのトウモロコシとスープか……って、昨日と同じ2種類じゃないかッ! 手抜きか、手抜きなのかッ!

「お、ランじゃん」

 キョウのおっさんが声をかけてくる。聞いてください、今日も昨日と同じメニューなんですよッ!

「ああ、ここの食事は、1週間は同じなんだぜ。もうすぐ変わるから、それまで我慢だぜ」

 マジですか。八日間も同じ食事とか発狂しそうだよ。……仕方ない、今日は謎肉定食にするか。


 山盛りの謎肉とパンもどきを受け取り、そのまま座席へ。俺の向かいにキョウのおっちゃんが座る。キョウのおっちゃんはトウモロコシか。ふむ、死に紙を使っておかずを増やさないんだな。

「俺はこれで充分なんだぜ。まぁ、ちょっと飽き気味だけど」

 俺は肉に齧り付く。焼いただけの肉……だなぁ。ちゃんと両面焼かれているけどさ、焼いただけなんて微妙だよね。


 あ、そうだ。この時の為のアレが。こういう事態を見越して隠し持っていたアレが役に立つ時がッ!


 俺は魔法糸で包み隠し持っていた魚醤を取り出す。はっはっは。コレだけは隠し通したぜぃ。


 魔法の魚醤を一滴垂らし、そのままかぶりつく。もしゃもしゃ。うん、美味い。というかだね、この世界の人々は調味料を軽視しすぎだと思う。いや、待てよ。食堂ではしっかりと風味が付けられていたし、もしかして俺の境遇が酷かっただけなのか……うーむ。

 キョウのおっちゃんがぽかーんと俺を見ている。

「おいおい、何処からそれを取り出したんだぜ?」

 それは秘密なんですぜ。

「それにその糸……器用に使うな。いや、なんというか芋虫だから当然なのか?」

 そういえばサイドアーム・ナラカを隠しているから久しぶりに魔法糸でしゅぱぱぱっと食器を移動させていたな。ま、俺の努力の賜物ですよ。


 そーれ、小っこい羽猫よ、お前も食べるがよい。そして早く大きくなって俺を楽させてくれ。

「にゃあ?」




―3―


「で、ランの旦那よ。今日は暇かい?」

 おうさ、暇なんだぜ。

「今日も団体戦があるから参加しないか?」

 むう。確かに暇だから参加するのは問題ないけどさ。このおっちゃん、やけに俺に絡んでくるなぁ。何だか裏がありそうで、うーむ。

「団体戦でも死に紙が稼げるんだぜ」

 そりゃまぁ、何のメリットもなかったら誰も参加しないよな。よし、モノは試しだ。参加しよう。

『分かった。自分も参加してみよう』

「よし、そうこなくっちゃだぜ!」

 ふむ。

「いや、な。団体戦は3人以上からなんだけどさ、後一人足りなかったんだぜ」

 つまり、俺は数合わせだった!?

「頼りにしているぜ」

 はいはい。って、何時からなんだぜ?

「いや、旦那。掲示板見ていないのか?」

 見ていません。そんなのあるの?

「あれだぜ」

 キョウのおっちゃんが指差した先、控え室にある長椅子の下に掲示板があった。ちょっと待て。こういう大事なモノはもっと目立つところに置けよ。

 掲示板には今日一日の予定が書かれている。闘技は10:00から18:00までか。予定表を見ると殆どが団体戦だな。余り通常の試合は組まれないのか?

「一番盛り上がる時間帯は13:00の試合と17:00の試合なんだぜ。そこを中心に試合が組まれて、空いている時間に団体戦が入るって感じだぜ。ま、基本は団体戦ばかりだぜ」

 ふむふむ。団体戦が中心で試合は余りやらないのか。まぁ、闘技者がどれくらい居るか知らないけどさ、こんな殺し殺されを毎日毎日、毎時間毎時間と繰り返しやっていたら、どんどん闘技者の数が減っていくだろうしな。その補充で新人ばかりのレベルの低い戦いをやっていたらお客さんも来なくなるだろうしね。


 次の団体戦は14:00か。横に参加希望者を記入するようだが、無記入になっているな。

「じゃ、俺たちで14:00の団体戦に参加しようぜ」

 ふむ。にしても、これ参加希望者が居なかったらどうなるんだ? その時間は興行しませんってなるのかなぁ。

「参加者が居ない時? そういう時は俺たち買い取りの闘技者が強制参加だぜ?」

 あー、なるほど。俺たちってそういう立場な訳ね。


 はぁ……、では団体戦頑張ってみますか。

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