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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
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3-6   戦士職

―1―


 お馬鹿そうなお姫さまの一団も去り、また竜馬車が動き出す。


 一体何処まで俺を連れて行こうというのだね。


 最初の商店街を過ぎ、大きな建物が並ぶ通りを過ぎ、やがて帝都の外れへ。


 帝都の外れには柱の多く並ぶ天井の開いた円形の大きな建物があった。まるで闘技場だな……って、まさか。そういうことなのかッ!


「さあ、ついたで」

 竜馬車を闘技場もどきの近くに止め、冴えない男がそう言った。そのまま、檻の鍵が開けられる。

「荷物を持ってついて来るだ」

 隷属の腕輪を付けられた今の俺では逆らうことが出来ない。せっかく檻から出られたのに、なッ! にしても、この異世界には隷属の腕輪みたいな異常な物がありふれているのか? 俺みたいな魔獣もどきにも効果があるってコトは、例えば危険な魔獣の竜とかに隷属の腕輪を着ければ狩りも楽勝なんじゃね? あー、でも竜とかのサイズになると難しいのかな。それでも充分異常で効果的な魔法具だよな。

『何処へ連れて行くんだ?』

「喋る程度の知恵があるみたいだかんな。わかるだろ? 大人しくしてくれよ」

 喋る程度じゃないです。俺はもっと賢いです。


 俺は荷物を背負い、冴えない男の後を黙ってついていく。闘技場もどきの大きな正面入り口を避け、そのまま裏側の入り口へ。

「おお、ダナンか。また面白そうなのを連れてきたのか?」

 中には胴部分のみに鱗状の鉄板を巻いた鎧を着込んだ男が居た。

「念話で喋ることの出来る魔獣だなぁ」

 魔獣扱いは止めてー。

「ほう、ならオークやゴブリンと同じ人魔部門かな?」

 何だよ、人魔って。

『どうするつもりだ?』

 嫌な予感しかしない。

「ほう、本当に喋るな。さすがは人攫いのダナン。その名に違わないな」

 人攫いって最悪な二つ名じゃないかよ。冴えない感じだけど、もしかして凄腕か何かなのか?

「報酬ははずんでくれろ」

 報酬、報酬か。やはり俺は売られるって感じなのかよ。

「ああ、もちろんだ。おい、芋虫魔獣よ。喋れるってことは俺の言っていることが分かるよな?」

 俺の知能を疑ってかかるんじゃねえよッ!

「はは。大丈夫そうだな。今から隷属の腕輪を外す。これは、この帝国にも3個しか現存しない貴重な魔法具だからな」

 3個しか存在しない? この人攫いのダナンとやらの冴えない見かけから、(この程度の田舎くさい男が持っている程度なんだから)もっと多数存在するありふれた物かと思ったのだが――俺が思っているよりもかなり貴重なのか?

「今は2個だべ」

「ああ、そうだったな」

 2個? 1個は行方不明になったってことか? それとも壊れたのか?

「はは。これはお前のことを思っての忠告だからな。言葉が分かると思っての忠告だからな。隷属の腕輪を外したからと言って逃げようと思ったり、暴れたりはするんじゃないぞ。いいか? 忠告はしたからな?」

 うん? これは前振りなのか? もしかして逃げろって暗に言ってくれているのか?

「命が惜しいなら止めとくだね」

 男が俺に取り付けられた隷属の腕輪を外す。ふう、これで自由か。

「ほらよ。ダナン、持っていけ。貴重な魔法具だからな、丁寧に扱えよ。それでは、また頼む、っと報酬だったな。後で例の場所に手配しとくからな」

 その言葉を聞き、ダナンと呼ばれた男が帰っていく。命を助けてくれたらしいし――檻の中とはいえ――丁寧な扱いを受けた。性根は悪い奴じゃ無いのかもな。けどな、今の状況を納得を出来るかよ。どんな食べ物を食べても味がしない呪いにでもかかってしまえ、くそったれが。


「さあ、こっちだ」

 あ、そうだ。あのダナンって男には無視されたけど、この人なら。

『待って欲しい。このステータスプレートを見てくれ。自分は冒険者だ』

 男が俺のステータスプレート(銀)を確認する。

「ほお。お前、魔獣なのに冒険者をやっていたのか」

 いや、今も冒険者のつもりなんですが。過去形じゃないですよ。しかもEランクなんだぜ。

「それなら……期待出来るかもな。まぁ、すぐ死ぬなよ」

 え? いや? あの? 冒険者ですよ? ギルド所属ですよ? 何でここでも話が通じないんだ?

「おいおい、早く来てくれ。余り遅いと逃げたと見なされるぞ。いや、ホント、お前のことを思って言うんだが、素直に着いてきてくれ。寝覚めの悪いことは起きて欲しくないんだ」

 くそ。着いていきますよ。行けばいいんでしょ。




―2―


 案内された先は黒い直方体――クラスモノリスのある部屋だった。

『これはもしかして?』

「ああ、これが分かるのか。もしかしてお前、クラス持ちか。魔獣なのに珍しいな。ここでは戦士のクラスを取得出来るぞ。少しでも生存率を上げる為に、面白くする為にクラスを取得させているんだよ」

 なるほどな。まぁ、ここまで来れば俺でも勘違いのしようがないな。この先、俺に待っているのは剣奴の道ってことだよな……。


 俺は目の前のクラスモノリスに触る。


【基本クラスの戦士を取得しますか? Y/N】


 もちろんイエスで。


【クラス取得枠がありません。どのクラスを破棄しますか?】


 な? 破棄だと。


【弓士・狩人】

【侍】

【戦士】


 ちょ、マジか。うーん。ここは侍より戦士を取るべきなのか。まぁ、侍はフウキョウの里に飛べるようになれば再取得は楽そうだしなぁ。まったく上げていないし使ってないもんな。

 よし、侍を捨てて戦士を取得しよう。


【戦士を取得しました。クラス枠が一杯のためサブクラスに配置されます。詳しくはステータスプレートをご確認ください】


「ちゃんと戦士は取得出来たかい?」

 ああ。ついでに確認もしておくか。って、やべ。今の魔法のウェストポーチXLに装備品を入れたままメインとサブを入れ替えたらヤバイ。危うい、危うい。前回、試しにやってみて袋の中に入れた物が消えたからな。つい、うっかりやってしまうとこだった。こんなつまらないことで真紅やホワイトランスが消えたら再起不能だぜ……。


 ま、まぁ、ステータス補正やスキルの確認は袋からアイテムを出せるようになってからゆっくりと確認しよう。


「出来たようだな。じゃあ、次は控え室とお前の寝床になる部屋に行くぞ」

 ああ、この闘技場に住むことになるのか。にしても控え室と言いましたか。


 控え室……かぁ。もう、これ決定だよね。


 まさか異世界に来てグラディエーターをやることになるとは思わなかったよッ!

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― 新着の感想 ―
[一言] はぁん…百花繚乱が侍スキルだって気付いてないのね
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