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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
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3-2   魔人族

―1―


 木で作られた橋を渡り終え、ついに大陸へ。大陸への第一歩ですよ。


 ……。


 ま、まぁ、大陸と言っても特に何も変わらないな。ゲームじゃないんだから、いきなり風景が変わったり、火山や雪景色になったりはしない。強いて言えば木が少なくなったくらいか。でもでも感慨深いことには違いないよね。


「むふー。では、この半島を南下していくことになりますねー。しかし! まずはここでもう一度野宿ですねー」

 む。木の橋の半分で野宿、そこから残り半分を歩いたといっても、時間的にはもう少しくらいは進むことが出来そうなんだけど。

「無理は禁物ですねー。特にここからは魔人族の生息地ですからねー。ここで翌朝まで休んで、そこから歩き続けて夜通しになってでも半島エリアを抜けるべきですねー」

 うーん。魔人族か……。要は盗賊集団の出現するエリアってコトだよなぁ。もしかして橋で人通りが少なかったのは魔人族の生息地を抜けるのが面倒だから、なのかなぁ。


『分かった。そうしよう』


 野営の準備です。シロネさんが前日と同じように匂い粉を振りまく。

「むふー。匂い袋の残数が気になりますか? 大丈夫ですよー。ちゃんと帝都に着くまで足りるように計算してますからねー」

 なんというか、シロネさんってば、こういうとこは優秀なんだよなぁ。熟練の冒険者ぽいです。落とし穴に落ちていたイメージが先行していてがっかりさんな印象が抜けないんだけどなぁ。


 食事、食事。食事をしよう。しかし、これから帝都までは野宿が増えるんだろうか。野宿だと交代の見張りが必要になるから熟睡出来なくて睡眠不足にもなるし、食事も保存食ばかりでつまらないし、結構キツいんだよなぁ。


 ミカンさんは魚の保存食をシロネさんの魔法の袋から出して貰っている。俺もシロネさんから何かの肉の干物を出して貰おう。って、……あれ、これ、いつの間にか俺たちのシロネさんへの依存度が凄いコトになってない? 俺も《増加》のスキルを2ほど上げたから魔法のウェストポーチXLのサイズは3になったし、Sの方も3だから色々と捗るようになっているんだけどなぁ。

「にゃあ?」

 エミリオもシロネさんから果物を貰って食べている。良くわからないがこの果物一個で一日は持つみたいだ。


 ま、まぁ肉を食べよう。お肉、もしゃもしゃ。肉食系芋虫です。




―2―


 翌朝。交代での見張りを終え出発することに。俺とミカンさんは大陸の地理がさっぱりなので道順はシロネさん任せです。

「むふー。私もうろ覚えなんだけどなー」

 まぁ、まぁ。それでも大陸を歩いた経験があるのはシロネさんだけだし、頼みますよー。


 魔人族の生息地と言われる半島を黙々と南下していく。


 出てくる魔獣も豚ぽいイノシシとか森ゴブリンよりはちょっと装備がマシなゴブリンくらいで苦戦らしい苦戦もなく楽勝です。いや、だってねぇ、俺たちのパーティって、こう見えてドラゴンスレイヤーな訳じゃないですか。樹木竜を倒しているパーティな訳ですよ。今更、雑魚で苦戦なんてねー。


 ……そう思っていた時期が俺にもありました。


 目の前に居るのは大きなトンボ型の魔獣。名前はドラゴンフライ。って、トンボじゃねえかよって突っ込みたくなるけど、そんな魔獣です。こいつらの何が恐ろしいかって、羽ばたきの音を聞くと頭がくらくらして、まともに立ってられなくなることだ。

 凶悪な歯で噛みついてくるし、頭は痛くなるし、数は多いし……。やばい普通に全滅の予感がする。


 見ればミカンさんが見当違いの方向に侍技を放とうとしているし、シロネさんは頭を抱えて座り込んでいる。

 俺は芋虫型モンスターだからか、ミカンさんやシロネさんほど、まだ深刻な状態になっていない。


――《魔法糸》――


 魔法糸を飛ばし二人を回収。そのままぐるぐる巻きにして俺の背中へ。脱兎のごとく逃げるのです。あー、頭がフラフラする。とにかく羽音の範囲から逃げないと冗談抜きで全滅してしまう。俺の逃げ足の方が早かったからか、ドラゴンフライ達はすぐに追ってくるのを諦め、どこかへ飛んでいった。……ふぅ。


 俺は二人を背中から降ろし魔法糸を解除する。

「む。敵は!?」

 はい、ミカンさんは完全に混乱していましたね。

「あー、うー。ランちゃんさんありがとうございますねー」

 シロネさんの方は耐性があるのか、ミカンさんよりはマシな状態だ。って、そうか叡智のサークレットを付けているから、その効果かな。

「にゃぁ」

 俺の頭の上に居座っているエミリオも返事に元気がない。ノックダウンされているようだ。この子もテイムされた魔獣扱いなんだから、もう少し働いて欲しいよなぁ。ただ、俺の頭の上に居るだけで何の役にも立ってないんですけどー。食事代分マイナスなんですが……。


 にしてもいきなりヤバイのが出てきたな。混乱系はレベルが幾つになってもヤバイってのがゲームのお約束だしなぁ。現実でも一緒か。


 うーん、適当に逃げたから方角がわかんなくなったぞ。

「あー、一応大丈夫ですねー。探索スキルで大体の方向は分かりますからー」

 シロネさんが有能です。

「むふー。多分、こちらですねー」

 って、今、多分と言いましたかッ! 多分、多分かぁ。まぁ、でもシロネさんに頼るしかないから信じていますよー。


 そうして歩いた先にあったのは小さな集落だった。動物の皮で作られたような小さな家々。人の姿もちらほらと見える。わあい、これで一休み出来るねー……って、なるかよ。見えている線が全部、魔人族じゃないか。フラグかよッ!

「こ、これは。むふー。見つかる前に逃げないと危ないですねー」

 だねー。

「む?」

 み、ミカンさん。絶対に状況が分かってないですよね? 今、敵地の真ん前に来ちゃった状態なんですよ。

「そ、そうなのか? ならば全て斬るべきなのか?」

 どうどう。考え方が危ないです。とりあえずゆっくりと遠回りしていきましょう。


 ここで枝を踏んでしまって見つかるとか、何らかの形で見つかってしまって戦闘になる、なんていうのがフラグであったり、よくある物語展開だったりなんだろうが、そういった事態は起こらず普通に魔人族の集落から離れることに成功した。


 しかしまぁ、集落や生活を見ると魔人族も普通の人と変わらないなぁ。姿も人と同じだしね。なんだろう、盗人をやっているから魔人族と呼ばれるようになったとかなんだろうか。

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