2-94 世界樹中層
―1―
買い物は終わった。うーむ、まだ集合予定の時間までは余裕があるな。
うん? そういえば、あの遠くに立ち上っている二つの光って……あー、ミカンさんとシロネさんか。そういえばパーティを組んだままだもんな。
よし、時間も早いし迎えに行くか。
立ち上っている光が目印になるから迷うことも無いな。直線距離をすすーいっと移動だな。
「お、芋虫のあんちゃん、今日も買ってくかい?」
途中、露店のあんちゃんに声をかけられる。朝ご飯を食べたばかりなんだけどなー。ま、いいか。
『うむ、貰おう』
銅貨1枚を渡し購入する。
「まいどあり」
よし買い食いだ。もしゃもしゃがりがり。
あ、そうだ。この機会に歩きながら魔石も砕いておこう。溜まりに溜まっていたからな。ショルダーバッグがぱんぱんだぜー。
全ての魔石を砕くとMSPは124にもなった。うお、良い感じ。
あ、そうだ。ついでに魔結晶の欠片も砕いてみるか。ぱりーんとな。うお、MSPが100も増えた。これ、もう一個あったよな。よし砕くか。同じようにMSPが100も増える。うお、なんだコレ。こんなにも簡単にMSPが増えるなら、もう少し『湖に浮かぶ洞窟』に通っても良かったかも……って、よく考えたらゲームじゃないんだから次も手に入るって保証は無いか。にしても、これで総MSPは415か……。何を伸ばすか悩むな。って、まずは転移か。
MSPを240消費して転移のレベルを3に。……240の消費は痛いよなぁ。それだけあれば、もっと戦闘が有利になるスキルが上げられるもんなぁ。
【《転移》スキルがレベルアップ】
【最大チェック数3 最大転移人数3】
うん、予想通りの変化だ。これで3人パーティでも安心だね。次は320か……ちょっと多すぎるな。さあて、残りの175はどうしようかなぁ。上げたいモノが多すぎて悩む。《集中》もよく使うから上げたいし、《早弓》や弓技も上げたいし、侍の《心眼》にも興味があるんだよなぁ。と、とりあえず保留で。
―2―
二つの光の下へ向かって歩いていると大きな建物へ到着した。え? この建物の中に居るの? 塀も有り、門番が立っている大きな木造の建物だ。その建物の前で待っているとミカンさんとシロネさんが建物の中から出てきた。にしても、この建物は何だろう。なんだか偉い人が住んでそうな建物ですなー。
「ラン殿、こちらまで迎えに」
うむす。で、ミカンさんよ、ここは何の建物なのかね。
「むふー。余り言いたくないけど私の実家だねー」
実家。実家だと? なんだお金持ちなのか? 偉い人なのか?
「私の親が里長ってだけ」
シロネさんは肩をすくめ嫌そうに答えてくれる。そういえばシロネさんって半森人族だったよな。森人族と普人族のハーフなのかなぁ。両種族の友好の為に長が結婚したとかありそー。
ま、準備も終わったし世界樹に向かいますか。あ、そうだ《転移》が3になったことだし、世界樹の迷宮の近くでチェックしておくかな。そうすれば次からは簡単に世界樹の迷宮前に到着出来るしね。世界樹の迷宮の攻略が完了すれば解除すれば良いわけだからな。
よし、そうしよう。
では、世界樹までとぼとぼと歩きますか。そうだ、歩きながらシロネさんに何が出来るかを聞いておこう。これはパーティとして必要なことなのです。
「むふー。私ですか?」
そそ。
「そうですねー。狩人スキルの増加と解体、それに探求士の探索に探知と初級鑑定、木属性と水属性の魔法ですねー」
ふむふむ。解体は分かるな。初級鑑定は探求士のクラスだったのか。アイテム名とかが分かるのかな。まぁ、俺には中級鑑定があるから関係ないけどね。探知は罠とかを発見するんじゃないかなー。探索は何だろ?
「むふー。そうですねー。増加はそのスキルレベル分、魔法の袋が拡張されますねー。コレの為に狩人をメインクラスにしてるんですよー。探知はランちゃんさんが考えているように罠を見つけますねー。でも探求士がサブクラスなんで効果は半減なんですよねー」
あー、やはりサブクラスはスキルの効果が半分になるのか。
「それと探索は、頭の中で地図を描けますねー」
む。もしかしてオートマッピング的なスキルなのか。何だか、探求士って便利スキルが多いな。余計なお節介かも知れないが狩人よりも探求士をメインにした方が良いんじゃないか?
「ソロだと所持数増加の恩恵は計り知れないのですよー」
あ。俺もソロでやってきたから凄い分かる。なるほどなー。俺が狩人のクラスを取ったら探求士をメインにして欲しいなー。欲しいなー、ちらちら。
「そして武器はこのダガーですねー」
シロネさんは腰に付けた2本のダガーを見せてくれる。あれ、これ真銀製じゃね? お金持ちかよ、セレブかよッ! にしてもダガー2本とか、アサシンみたいだなー。こっそりそういうクラスとか無いのかな。
―3―
世界樹の迷宮に到着。さっそくチェックをしておくか。
――《転移チェック3》――
よし、これで簡単に世界樹の迷宮に来ることが出来るぞ。
では、さくっと転送装置で中層に向かいますか。
隠し部屋の転送装置に触れると3種類の画像が表示されるようになっていた。よし、次は中層だな。俺は中層の画像を選び転送を実行する。
瞬きをする間もなく中層へ。
さあ、この目の前のはしごを登りますか。って、俺、はしごを登れないんですけど。ちょっとこの体ではしごを使うのは無理かなー。しかも結構長さのあるはしごぽいんだが……。仕方ない。
『すまない、先に行っている』
――《魔法糸》――
二人の了承が得られたのを確認して魔法糸を飛ばす。はしごに魔法糸を飛ばしながら登っていく。なんだか、魔法糸を使って登っていると世界樹の外壁を登っていた時のことを思い出すなぁ。今にして思えば、外壁に魔獣が居なかったのが不思議だな。空飛ぶ鳥の魔獣とか居てもおかしく無いのにな。うーん、外壁を登ろうって考えるような冒険者は居なかったのかなぁ。
魔法糸ではしごを登っていると終わりが見えてきた。はしごを登り切った先は超巨大な広間になっており、外周部分に螺旋階段がくっついていた。
そして、その巨大な広間の中央には鎖に繋がれた一つ目の巨人が居た。な、なんだ、コレ。俺、60人分くらいのサイズがあるぞ。巨大にもほどがある。というか、こんな鎖に繋がれた状態で生きているのか? 食べ物をどうしているのか? とか色々不思議に思っちゃうぞ。
と、とりあえずミカンさん達がはしごを登ってくるのを待ってから行動しよう。




