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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
2  世界樹攻略
103/999

2-93 風槍

―1―


 道場に帰還です。


 道場の大きな庭ではユウノウさんが木刀を持って素振りをしていた。もしかして真剣で素振りをしていたのは、それしか無かったからなのか……?

 って、おい、ちょっと待て。ユウノウさんの横に同じくらいの背丈のちっこいのが居るぞ。背の小さめな猫人族と同じくらいだから、少年か? 青白い肌に尖った耳……森人族の少年がユウノウさんを見習うように素振りをしていた。

「あ、お嬢、とランさんお帰り」

 ああ、ただいま。で、その少年は誰なんだね。攫ってきたのかね。

「いや、あの、その」

 ユウノウさんの猫目が泳いでいる。説明に困っているのか? いや、マジで変なことはしていないよね?

「じ、実はですね、彼の父親が鍛えて欲しいと、この道場にっ! 弟子ですよ、初弟子ですよ!」

 う、嬉しそうですねー。木刀が買えて良かったですね。良かった、良かった。これで解決ですね。

「それではお嬢達も帰ってきたので、晩ご飯にしましょ、そうしましょ」

 るんるんと浮かれながら家の中へ入っていくユウノウさん。……今まで一人も弟子が居なかったのか、そりゃあ辛かっただろうな。

 大人しそうな森人族の少年も、こちらに軽く会釈をして家に入っていく。さあ、晩ご飯だな。


 食事室に入り、自分の席にて待っていると晩ご飯を持ったユウノウさんがやって来た。さあ、今日の晩ご飯は何だろうなー……って、芋じゃねえかよ、またかよ。まただよ。少年よ、こんな晩ご飯で良いのか?

「僕、モリイモ嫌いじゃないです」

 うんうん、健気な少年だねぇ。って、この芋の名前はモリイモって言うのか。

「モリイモは里の外、青い木の下を掘ると良く取れるな」

 ミカンさんが解説をしてくれる。ほうほう。何というか、例のキノコと同レベルの食材って感じだなぁ。

 まぁ、今から食堂に行くのも面倒だし、皆が揃った中、俺だけ『食堂に行ってきます』って言うのもアレだし。空気読めてないし。あ、そうだ。

『ユウノウ殿、弟子も増えたのだ。これで彼に美味いモノでも』

 俺はユウノウさんに小金貨1枚を渡す。さすがに今回は弟子の手前、食事レベルを改善してくれるだろう。この少年も泊まり込みみたいだからな。うん、これで俺も幸せって寸法さー。

「あ、ありがとうございまーす。これで道場の施設を拡張しますね」

 いや、あの道場じゃなくて食事を改善……。ま、いいか。次こそは食堂へ通うことにしよう。


 まぁ、泊めさせて貰う関係上、お金を入れたってことで納得しよう。そうしよう。


 あー、にしても筋っぽくて粉っぽい芋だ。油で揚げたいなー。深い鉄の鍋とか売ってないかなー。無いならホワイトさんとか作ってくれないかなー。と、それよりもまずは食用油が必要か! やばい、チートの予感がする。料理チートだ。




―2―


 朝、起きて食事室へ。すでに少年とミカンさんが食事をしていた。……うん、今日も焼き魚だ。ミカンさんは目をらんらんと輝かせて嬉しそうに食べている。少年の方は眠いのか箸が止まりがちだ。って、この少年、普通に箸を使っているぞ。箸って割と扱いが難しい道具だと思うんだけどなぁ。初見で使い方が分かるような道具じゃないよな。

 まぁ、いいや。俺も食事をしよう。体を内側に丸めて椅子に座……れないので、のっかる。

「今日も釣ってきました」

 ええ、分かっていました。

「ラン殿、今日の予定は世界樹の攻略ということでよろしいか?」

 いぐざくとりぃー。

「その前に買い物を、だったな。では私がシロネ殿を迎えに行こう。10時に冒険者ギルド前でどうだろうか?」

 うん。では、そういう感じで。



 サクサクッと鍛冶屋の前に。ホワイトさーん。

「ち、誰かと思えばランかよぉ。今日も朝がはええな」

 眠そうな犬頭のホワイトさんです。鍋とか扱ってませんかー。……て、まぁ、そういうのはまた今度だな。

「おう、そうだ、ランよぉ。あの槍だがな……」

 あの槍……ってレッドアイかッ!

「ちょっと面白いことになっててよぉ。ちょっと待ってな」

 なんだと? 面白いこと?

「見てみろ」

 ホワイトさんが持ってきてくれたレッドアイを見ると折れた部分が尖り、その下からスカートのようなモノが生えていた。なんだコレ。

「そして、よぉ」

 ホワイトさんが懐から魔石を取り出し、レッドアイに近づける。魔石はレッドアイに取り込まれ……いや、喰われる。それに合わせてパキパキっという音ともにスカート部分が少しだけ伸びていた。魔石を喰って成長した?

「こいつは魔石を喰って成長していやがる」

 マジカ。ちょっと待て、俺、砕いていない魔石が結構あったよな。それに名前付き(ネームドモンスター)の魔石はレアぽいから、と取っていたはず。うん、ラットキングの魔石があった。これは凄いことになりそうな予感だぜー。

『ホワイト殿、これを』

 俺はホワイトさんにラットキングの魔石を渡す。

「うお、こいつは凄い魔石だな……。どうやってこんなもんを手に入れたんだか。相変わらずお前は良くわからないヤツだよなぁ」

 レッドアイがラットキングの魔石を喰らうとスカート部分が一気に伸びた。成長した、成長したッ! これもう槍として使えるんじゃね?

「うむむ。後は武器として使えるように加工したら行けそうだな。よっし、明日までには使えるようにしとくぜ」

 マジカ、マジカ。どうしよう、ワクワクして今日はもう冒険に行かずにごろごろしたい気分になっちゃったんだが。

 と加工代金を聞いておかないと。

「327680円(金貨1枚)だな」

 ぐぼぁ。高えぇ。高いよ、ホワイトさん。く、しかし仕方ない。持ってけ泥棒ー。俺はホワイトさんに金貨1枚を支払う。はぁ、一気に貧乏転落じゃないか。

 にしても、ここで金貨1枚を支払ってしまったから、他の買い物が出来ないな。属性矢とか買おうと思っていたんだけどなぁ。仕方ない、また今度ってコトで。


 とりあえず食料だけ買ってミカンさんと合流しようか。

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