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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
2  世界樹攻略
101/999

2-91 世界樹中層

―1―


 台座の前で待機し、ミカンさんと一緒に揺れている糸を見守る。……魔獣だったらどうしよう。


 しばらく見守っていると幻の床からにょきっと白い手が生えてきた。あれ、そういえば『落とし穴』……このシチュエーションに見覚えが。

 床から手が現れ、次に頭、体と……やはり、見覚えがあるぞ。


「むふー。助かりましたー」

 ああ、この良くわからない『むふー』言葉、俺は覚えがあるぞ。


 俺の延ばした魔法糸を登ってきた少女はキョロキョロと辺りを見回し、こちらに気付き、あっと声を上げる。

「もしかして、あなたたちが……って、あの時の!」

 そうそう、俺が世界樹のうろで初めて会話した『人』だよな。


 魔法糸を登ってきた少女がこちらへ……って、ちょっと待った。

『待つのだ』

 そのまま、こちらに歩いてきたら……また落ちるぞ。


――《魔法糸》――


 俺は少女の元へと魔法糸を飛ばす。

『この上を』

 少女が俺の飛ばした魔法糸の上を器用に伝ってくる。うん、器用さ補正が高いに違いない。

『久しぶりだな』

 俺は目の前に降り立った少女に声を掛ける。雪のように白い肌、木の枝のように尖った耳――見間違えようがない、俺が初めて出会った半森人族(ハーフエルフ)の少女、シロネ・エヴァーグリーン・スイロウだ。


「この糸は、もしかして星獣様が?」

 俺は頷く。と言っても芋虫が首を下げるというか、頭部分を動かしているだけだから、頷いているように見えているかは……まぁ、考えないことにしよう。

「むふー。助かりました。あのまま地の底で死に絶えるかと思いましたー」

 なんというか、いつから居たのか知らないけれど、よく落とし穴の下で生き延びられたね。

「むふー。お腹空きましたー。もし良ければ、何か分けて貰えないですかー?」

 何だろう、最初に会った時はもう少し上品? 丁寧? な感じだった気が……。この里の人たちって二度目に会うと馴れ馴れしくするってルールでもあるんだろうか。




―2―


 とりあえず帰ろう。もうね、シロネさんという荷物を抱えたまま進むのは危険だし、帰ろう。元々、帰る予定だったし、問題なし、帰ろう。

 と、俺が考え込んでいるとミカンさんとシロネさんが何やら話し込んでいた。冒険者同士の情報交換でもしているのだろうか。

『ミカン殿、里に戻ろう』

 ミカンさんはシロネさんとの話を中断し、こちらを向き頷く。


 となると、この竜の台座を起動して戻るのが手っ取り早いけど……シロネさんが、なー。

『シロネ殿、パーティに加入して貰いたいのだが』

 俺はシロネさんにパーティ申請を飛ばす。よし、二度目も上手く出来たぞ。

 しかし、シロネさんは俺の行動に首をかしげていた。……いやいや、加入して貰わないと竜の台座を使った時に一緒に転送出来ないかも知れないじゃん。いやまてよ、このまま加入して貰わずに転送するとどうなるかの実験をするか? いやまぁ、でも何かあった時が怖いしなぁ。

「シロネ殿、ラン殿には考えがあるようだ、一時的にでもパーティに加入を」

 ミカンさんのフォロー。


【シロネさんがパーティに加入しました】


 うーん、ミカンさんにフォローして貰ってまで加入して貰う必要があったんだろうか。ま、まぁ、何故加入して貰う必要があるのかを説明せずに加入してって言っても無理があるか……。

 にしてもミカンさん、シロネさんの名前を知っているんだな……って、さきほどの間に自己紹介でもしていたんだろうか。

『シロネ殿、下に描かれている円から出ないように』

 これ、体が半分出ている状態で転送したら切断された、なんてなったら怖いな。とまぁ、冗談はこれくらいにして台座に触ろう。


 俺が台座に触ると周りの景色が変わった。うん、転送成功。


「こ、これは……!?」

 シロネさんが、驚いている。って、やはり普通の冒険者はこの転送装置を利用出来ないのか……。

『世界樹入り口横への転送装置だ。と、しばらく待っていて貰っても良いかな?』

 二人に確認を取る。頷く二人。二人の了承が得られた時点で俺はもう一度転送する。よし、画像はちゃんと3個出てくるな。

 行き先はもちろん下層の上層である。


 景色が変わり下層の上層に到着。さあ、置いといた素材の回収だ。だって、勿体ないもんね。俺の《魔法糸》でぐるぐる巻きにした蜂の死骸の山を浮遊で浮かせ運ぶ。そのまま転送装置へ。さあ、今度こそ帰還だ。


 周囲の景色が変わり、世界樹の入り口横の転送装置へ。俺が転送から戻ってみると、シロネさんが一生懸命台座を調べていた。……て、俺、転送先に人が居た時のことを考えていなかったよ。いやぁ、何事もなくて良かった。

「ランちゃんさん、これは何なんですかー!」

 何なんですかって聞かれてもわかんないよ。触れば転送出来るってコトしかわかんないよ。

「むふー」

 シロネさんは腕を組み考え込んでいる。……まぁ、いいや里に帰ろう。

『帰ろう』

 俺の言葉にミカンさんが頷く。シロネさんも名残惜しそうに台座を見ていたが、お腹が空いていることを思い出したのか俺たちに付いてくる。


 さ、外に出たら転移で戻るか。そうだ、転移スキルもシロネさんに説明しておかないと……って、今の最大人数は二人までだったッ!


 仕方ない、歩いて帰るか……。

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