2-4 食事
―1―
起きて天井を見る。ああ、見知らぬ天井だ。……って、ごめんなさい。
木の窓を開け、外を見てみる。いやあ、外はまだ薄暗い感じだねぇ。昼まではまだまだ時間がありそうだ。ちょっと早く起き過ぎたみたい。
ということで朝ご飯を貰いに行くことにする。初めての葉っぱ以外の食事にチャレンジです。今の時間だったら食べて体調を崩したとしてもお昼頃にはなんとかなりそうだしね。
一階に降りるとカウンターにはすでに女将さんがいた。
「ああ、なんだい。もう起きてきたのかい?」
『ええ、何か食べるものを貰えないかと思って』
「ふーん、なるほどね。もしかしたら知らないかもと思って説明するけれど、貰った料金だと二回分の食事代だから、三食目からは料金を貰うからね」
『ええ、かまいません』
そっかー。この世界だと一日二食が当たり前なんだね。
女将さんは何かのスープと丸いパンのような物2個を用意してくれた。
「ここで食べるかい? それとも部屋で食べるかい?」
『部屋で食べます』
「ああ、皿は後でカウンターに置いといてくれたら良いよ。っと、あんた、ちゃんと部屋まで持って行けるかい?」
ははは。俺のこのドラ○もんアームを心配してくれるのか。この程度の容器を持つくらいなら、なんとかなるんだぜッ!
右手に何かのスープが入った容器を、左手にはパンのような物がのった皿をッ! そして階段をのっしのっしと上がる。自分の部屋の前に来て気付く……ドアが開けられない!?
なーんてね。ここで《糸を吐く》スキルの出番です。糸で鍵を取り出し鍵穴に入れ、もう一個の糸でドアを開ける。ホント、器用に扱えるようになった物です。
部屋に入り、さて実食。
まずは何かのスープ。里芋ぽいものとお肉が浮いてます。里芋ぽい物を食べてみる。ゴリゴリしているけど、少し甘みがあって本当に里芋みたいな感じです。次に何かのお肉。ちょっと筋張った感じがするけど柔らかく煮込んであり鶏肉みたいな味がします。全体的に薄味だけど、まぁ食べられるかなって感じです。というか、この身体でも味覚がしっかりあるッ! 良かったー。実は凄く嬉しいです。ホント、食べられない、食べても味が分からない、ということを心配していたからね。やはり食が楽しめるというのは良いッ!
次は丸いパンのような物です。囓ってみる。サクサクとクッキーみたいに崩れます。粉っぽいし、まったく美味しくないッ! なんだコレ。多分、スープに浸けて食べろってコトなんだろうけど、スープに浸けて食べてみても、食べやすくなるだけで美味しくないんですよねぇ。人の食べ物とは思えない。んでまぁ、後になってから気付いたんですが、このパンもどき、お腹が凄い膨れます。ああ、そこそこ食べられるスープを付けるので、後はこの片栗粉の塊のような物でお腹一杯だけにはしてくださいねってコトなんでしょうか。
総評価。スープは薄味だけど普通に食べられる。パンは栄養剤とか錠剤系と同レベル。これが毎日続くのはちょっとキツいなぁ。
あ、そうそう魔法のポーチに入れる物を決めました。とりあえず小金貨4枚を魔法のポーチに、残りの銀貨は手作りの鞄に入れることにし、残りの1枠にはステータスプレート(黒)を入れました。貴重品を入れるのが正解な気がするんですよねぇ。
―2―
昼前には宿を出ました。早めに出たのは寄るところがあるからですね。まずは露店で背負い袋を購入。皮製で大きめなのを買ったので銀貨2枚もしたんですが、おおむね満足です。君とは長いつきあいになりそうだ、よろしく頼む。
次に寄ったのは服飾店。出来た服を受け取らないとね。
『お邪魔する』
「ああ、お客様、お待ちしておりました。服の方は出来ていますよ。ここで着て帰られますか?」
『ああ、すぐに着てみたい』
「ええ、では奥が試着室にもなっているので、こちらにどうぞ」
試着室に案内される。試着室は四畳半くらいの広さがある。お、おい、これ、下手したら自分が住んでた部屋より広いぞ……。なんで試着室がこんなに広いんだよッ!
とまぁ、服に袖を通してみる。まずは麻糸のベストを。なんだか上半身だけ服を着ていると紳士スタイルに通じる物があるな。
その上から麻糸のガウンを羽織る。前は結ばない。ホントはそういう着方じゃないと思うんだが、気にしない。これはコートを羽織っているみたいで割とカッコイイ気がする。……って、素直に、ガウンじゃなくてコートにすれば良かったんじゃね。うん、ちょっと聞いてみよう。
『えーと、コートとかもあるのかな?』
「はい、コートもありますよ。防水のレインコートや防刃のコートなんかは冒険者の方々に人気ですね」
あ、あるのかよ。しかも魔法効果が付与されているぽいのがあるじゃないか。なんだソレ、サイショニショウカイシテクダサイヨ。
『え、えーと、何故、最初に紹介してくれなかったのか聞いても良いだろうか?』
「お客様の場合ですと、コートの場合は手直しになる部分が多すぎコートの形を成さないからですね。袖などは全部切り取ることになりますし……それなら素直にベストなどの方がよろしいかと思いました。ただ、まさか、お客様がベストの上から着込むことを想定してガウンを買おうとしていたとは……予想外でした」
あ。
あー、なるほどなー。服の手直しを考えたらそうなるか。言われてみれば、その通りだよな。この体型だと着られる物が限られるもんなぁ。後は、付けられそうなのはストールやマントくらいになりそうな予感。
『すまない、では、ガウンとベストをもう一着ずつ貰えるだろうか』
「はい、では今回も7680円お願いします」
俺は銀貨2枚を渡し、お釣り受け取る。
『ところで、この服は青くないんだな』
「あー、そうですね。ここの冒険者の方々の装備は青色ばかりですからね。気になりますよね。アレはファッションで青くしているんじゃないんです。水の属性を付与しているので青くなっているんです」
え、そうなの? もしかして一般常識だった? うは、もしかして恥ずかしい質問をしてしまった?
『そ、そうなのか』
「ええ、この里にも魔法具屋に付与術士の方が居られるので銀糸製などの付与をしやすい服を買われたときはお願いしてみることをオススメします」
乗せられている気もするけど、お金が出来たら銀糸製装備を買うことにしよう。
と午前中の用事を済ませたところで、ちょうど太陽が真上に来ていた。急いで冒険者ギルドに行くことにしよう。
4月25日修正
露天 → 露店




