表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青空の下に  作者: bluewind
4/13

04:暗黒の水中(セカイ)

…………………………………………


 夏だというのに、異様に冷たく寒い、黒い虚無の世界。辺りをひと掻きする度に、指先は痺れを感じるように、痛い。こんなに怖く、こんなに寂しい、何も無い世界。だが、この先に必ず、居る。

 しゃにむに手を振り回して、その指先に当たる偶然だけを期待する。視界は全く無い。あっちに振るっては、硬い感触、こっちに振るっては、柔らかい感触。それぞれに触れては一喜一憂。桟橋の垂直の足だったり、これは藻か、水草か。その度に心臓が強く猛り、その度に息が苦しくなっていく。

 任せられた以上、必ず助けてやらなければと、母親にこっ酷く叱られると。一念しなければ、気が持たない。

 どこに、どこに、この暗闇の一体、どこに。一度、上にあがって息を吸おうか。

 そう思い始めた、その瞬間、また微かに指先に感触。こっちか。体を乗り出して、腕を突っ込む。伸ばした指先に当たり、突き指。柔らかくもしっかりした存在感、肌の感触。間違いない。大きく手のひらを開いて、両手で腕をわしづかみ。でも華奢な体、あくまで優しく。

 泳げ! 水面へ! 急げ!

 もう息はろくに持たない。しかしこの暗黒の世界の中、どちらが上なのかまるで分からない。がむしゃらに泳いでいるうちに忘れてしまった。泡が漏れた、斜め上へ昇っていく。こっちが上か。

 段々と苦痛が、体中を支配していく。全身に、火炎が渦巻いているように、熱い。手足が震えて、止まらない。まともに水を掻くことさえ、出来ない。全てを投げ捨てて、無茶苦茶に暴れたい。手を放しそうになるのを、無理矢理、手に力を込めて引っ張る。

 あと、少し、あと、少し、あと、少し、水面に、出た、出た、押せ、押せ、押し出せ、ずっと、上に、押せ、力任せでも、強引でも、いけ、いけ、乗った、乗った?

乗った、乗った、乗った、……ッ…………ッ……………………。


…………………………………………

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ