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青空の下に  作者: bluewind
11/13

11:新思案

 やがて彼女は全てを終えて、また立ち上がって頭を下げて、こちらに戻ってきました。坂の途中で、タカシの存在に気づいて、少しヨシコに目配せをしながら、彼女の側に立ちました。

「隣のクラスのタカシだよ。あ、そうだ!」

 ヨシコはタカシを指して叫びました。

「ユウ、コイツに教えてもらいなよ、数学」

 ハ? と怪訝な顔を浮かべたのはユウとタカシ。

「さっきの話。タカシは数学メチャメチャ得意だから、計算すんごい速いよ」

「ああ……」

「……何?」

 タカシがヨシコに伺いを立てました。

「あ……突然ゴメン」、ヨシコは申し訳なさげに頭を掻きました。

「あっ……と、とりあえず紹介したほうがいいかな。タカシにはユウのこともう教えたから……、ユウ、コイツはタカシっていって、去年の二年生の時に同じクラスだったんだけど、数学がチョー凄いの。前のクラスでは『デカルト』って言われてたっけ」

 と言って、ヨシコは下品な引きつった笑い声を立てました。

「うわー、そのあだ名を言うな! やっと忘れかけてたのに」

「実際、目鼻立ち似てんのよね〜ピッタリだと思わない? このエラソーな顔立ち!」

「ほりが深いだけだ! っていうかデカルトに失礼だろッ」

「なに言ってるのよ、デカルトは実際に偉い人じゃない。アンタは顔ばっかし立派なだけ、ウハ〜」

「ていうかあだ名言い出したのも、よく使ったのもお前ばっかりなッ。でも何人かが本気にして使われて、迷惑だよ」

「大丈夫だよ、褒め言葉だから、一応。あ……」

 そこで、ヨシコは気づきました。ユウが片手にコブシを作って、それを口元に当てている姿に。

「ハッハッハ〜、こりゃこりゃ凄いわ!」

 唐突にヨシコが大声で笑い出しました。

「凄いって、お前の頭の中が?」

 タカシの憎まれ口に、ヨシコは何故か平然とこう答えました。

「ウン」

「夏の暑さでイカレたか……」

「とりあえずさ、三人で図書館に行こうよ。三人で少し勉強しない?」

「ハッ?」

「ねえ、ユウはどう?」

「あ、うん……」

「よし、行こうよ! ね、タカシは国語苦手でしょ。ユウは国語メチャ得意だから、かわりにユウは数学苦手だから、チョッと一緒に教え合えばちょうど良いじゃん」

「いやまあ……そうかもしれないけど、強引だなオマエ。えっと、ユウ……さん」

「あ……ハイ」

「脳ミソ蒸発してしまったらしいヨシコさんが、あんなこと言ってますけど……どうします?」

 二人の背後でヨシコが何か奇声を発してます。

「ハイ……あたしはよくヨシコと一緒に勉強してますから。それより……」

「俺? いや構わないけど」

「あ、じゃあ……」

「図書館でやろうよ!」、ヨシコが強引に会話に入り込んで言いました。

「そだね。俺、じゃあ一旦家に帰るよ、教科書とかノート持ってくるから」

「ウン」

「じゃあ図書館で集合って形で、あたしとユウはこのまま行くから」

「ああ」


…………………………………………


「歴史面倒臭ぇ〜死んだ人のことなんかどうでもいいしッ」


「ちょっとタカシ、アンタ馬鹿過ぎ。ユウに教えてもらいな」


「やっばい、チョー計算カンペキ」


「眠い……現国はともかく古文とか役に立つのかなぁ〜」


「あっはっは〜、やっぱ英語はサイコー。もっと勉強してタカシに英語で(悪口)言ってやろ。理解できてなくて二重に馬鹿。アンタ英語ちゃんと勉強しないと外国人に馬鹿にされるよ、『日本人は英語出来ないくせに横文字好きだ』って」


「あ〜、ちょっと忙しいからユウに聞きなよ」


「お、おッ、オッ! マジヤバイ……パーフェクト……!」


 一人の声だけが、静かな図書館によく響いていました。


…………………………………………


「じゃあね〜」

 夕刻、三人は手を振って、図書館の前で別れました。

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