表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青空の下に  作者: bluewind
10/13

10:想う者たち

 坂を上って、上から湖を一望しました。空には山のような大きい入道雲。今日も湖は、青い空を色濃く映しています。どこまでも底無しのような青。


 桟橋の辺りを見ると、そこに誰かがいるのが見えます。その人はしゃがんでお祈りをしているようで、しばらく微動だにせず頭を下げていました。やがて立ち上がり、一度か二度、振り返ったりして、こちらへの坂を上ってきました。

 その人はユウたちより何歳も年上のようでした。薄くても綺麗に化粧した髪の長い女性で、凛とした落ち着いた佇まいの美しい人で、ちょうどすれ違う時、ユウたちを見て丁寧に会釈しました。二人もそれに合わせて頭を下げました。


「すっごい美人じゃない? 誰だろう」

 女性が行ってしまって、ヨシコがため息混じりに言いました。

「あのお兄ちゃんと同じくらいの歳の人だよね、友達かな」

 ユウは下げて持っていた花束を、胸元へと持っていきました。言い知れぬ恐ろしさを感じ始めました。あの人が……お兄ちゃんの親しい人なのか、好きな人か、あるいはもしかして単に身内だとか。どちらにしても、あの人の表情、あの人の姿、それらがフラッシュの光ように、ユウの頭の中に何度も光って、意識に深く焼きついてきます。

「ユウ、あたしはここで待ってるから」

 ヨシコが優しく微笑んで頷きました。ユウも頷き返し、静々と坂を下りていきました。

 その様子を、ヨシコはガードレールにもたれて眺めていました。彼女は桟橋の手前で一度頭を下げて、そこで立ち止まりました。しかし、しばらく迷った様子の後、意を決したようです、その先の桟橋の上へと足をのせました。そして、桟橋の先端で、またお辞儀をして、腰を下ろして花を、湖の中へ流しました。そのまままたお辞儀を……。


「ハヤカワッ」

 後ろから声がして、ヨシコは振り返りました。それは、隣のクラスのタカシでした。昨年の二年生の時に、ヨシコとタカシは同じクラスで、お互いウマが合い、よく遊んだり勉強を教え合ったりしていました。

「何してんの?」

「友達の付き合いで……ちょっとね」

 そしてユウを見ました。

「ああ、そういやここで事故があったって」

「あの子の知り合いのお兄さんだって」

「フゥン……」

 タカシもガードレールに肘をかけてユウを見つめました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ