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龍之介と小次郎の言い争い  龍之介

 小次郎は、水痘の慎吾とおのぶが履物屋へ帰ってから、その翌日に戻ってきた。

 最初の予定よりも長くかかっていたため、龍之介は心配をしていた。


 葵は、小次郎の姉の孝子を供に連れていた。それだけでも龍之介や小次郎にとっては厄介なことなのに、甲斐の宿場ごとに歓迎を受けていたという。


「なぜ、孝子殿をお供に連れてきたのだ。葵殿は甲斐大泉藩の家老の娘と名乗って・・・この江戸まで来たと申すか・・・・」

 龍之介には珍しく、素っ頓狂な声をだした。小次郎は平伏する。

「申し訳ございません。まさか、姉上がついてくるとは思ってもみませんでした。宿場について、誠に驚いた次第です」


 小次郎の姉、孝子は櫻井家へ嫁に行くまで、葵の世話役として仕えていたのだ。

 龍之介と小次郎は、この年の離れた孝子が大の苦手だった。

 他の家臣に叱られても平気だが、この孝子に捕まってしまうと雷のような罵倒を受け、反省するまで愚痴愚痴とやられる。

 特に十歳も年上の姉は、小次郎にとっては母に近い存在のようだった。  二人は陰で、「カミナリお孝」と呼んでいた。


 その葵たちは、今日の昼過ぎに江戸へ着く。


「まずは、旅籠でゆっくりと湯に入ってもらい、それから江戸見物をさせて、二、三日で腰を上げてもらわねばなるまい。上屋敷にこのことが知れたら、大変なことになる」

「若、場合によっては、姉上にあのことを打ち明けなければならないとも考えておりますが」

「孝子殿に・・・・あのことを・・・・」

 龍之介は頭を抱える。


「ああ、なぜもっと早く言わなんだと怒鳴られるであろうな」

「はあ、この姉が信用できなかったのかとドヤされるかと・・・」

 二人で大きなため息をつく。


「小次郎、そちが内緒でどこかへ行って、孝子殿に打ち明けてはもらえぬか」

 小次郎は、一瞬、嫌な顔をするが、すぐに普通の顔に戻り、

「若、それでは姉上が治まりませぬ。若君が直々に打ち明けなければ・・・」

「小次郎の姉ぞ。何の遠慮があると申すか」


 龍之介も小次郎も、かなり本気になって声を荒げていた。

 

「お言葉ですが、若。若こそ、藩主のご次男にござりますぞ。たかが家臣の嫁に、なんの遠慮がございましょう。きつ~く一言を申されませ」


 雪江と徳田は、二人の喧嘩を見たことがなかった。それも、小次郎の姉が喧嘩の元だと知り、どんな人が来るのだろうかと不安になった。

 裕子だけは涼しい顔で、ミルクティーを飲んでいた。

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