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その一の一 少女 + 落下 = 物語の始まり

 「俺さ、今日めっちゃ気色悪い夢見ちゃったんだよ。昼休みに弁当開けたら、中に虫が詰まってんの。思わず叫び声を上げたところで目が覚めたよ。思い出すだけで背筋が凍るわ」

 

 下校中、一緒に帰っていた友人のトオルがいきなりそんな話を始めた。今日の昼食時、トオルがビクビクしながら弁当の蓋を開けていた理由が分かった。

 

 「そりゃ災難だったな。そういえば、俺は空を飛んでる夢見たな。なぜか翼が生えててさ、初めは気持ちよく飛んでるんだけど、いきなり翼が消えちゃうんだ。そしたら一気に落下して、地面すれすれのとこで目が覚めた」


 「空から落下する夢って、不安な事がある時とかに見るって聞いたことあるぞ。なんか不安でもあるのか?」

 

 不安なんていくらでもある。というか、高校二年ってのはそういう年頃だろう。

 

 「寧ろトオルには無いのかよ。そろそろ真剣に進路も考えなきゃ行けない時期だし」


 「ユウトは相変わらず真面目だなぁ。俺は現状でも十分幸せだし、大学はこのままエスカレーター方式で上に行ければいいかな、なんて思ってるよ」


 「呑気なやつだな。お前今の成績じゃ内部推薦厳しいんじゃないのか」


 「よ、余計なお世話だよ。それより、今はユウトの両親旅行に行ってて居ないんだろ。今日は二人で盛り上がろうぜ」

 

 俺の両親は一昨日から海外へ旅行に行っている。俺は学校があるので留守番だが。

 

 「そうだな、パーっと行くか」



 「あっ。コンタクトの保存液持ってきてねぇな」

 

 家の前まで来たところで、トオルが急に思い出した様に言った。

 

 「そこのコンビニで買ってこいよ。俺は家の中を軽く掃除しとくから」


 「じゃぁ言ってくるわ。ついでに夜食も買ってくるぜ」

 

 そう言うとトオルはコンビニへ駆けて行った。俺は取り敢えず散らかったリビングを軽く整理しておくことにした。

 片づけが一段落すると、ソファーに腰をかける。時計を見ると、トオルと別れてから既に20分ほど経っていた。コンビニまで一分もかからないだろうに、あいつは何でこんなに遅いんだ?

 俺は暇つぶしにテレビを付けると、天気予報をやっていた。どうやら今日は深夜から雨が降るらしい。今日の夜はあいつと何して過ごすかな、などと色々考えていると、突然、何か重い物が高い所から落下したような、轟音が辺りに響いた。

 

 「な、なんだ?」

 

 玄関からリビングへと繋いでいる廊下で、何か起こったようだ。電球でも落ちたのだろうか。いや、もっと派手な音だったような。

 なぜだか分からないが、胸騒ぎがした。嫌な予感がする。廊下恐る恐る覗いてみると・・・


 「イテテ・・・」


 抜けた天井。散らばる残骸。そしてそこにうずくまる人間らしきもの。異様な光景がそこには広がっている。俺はただ呆然と、その光景を見つめていることしかできなかった。

 どれくらいの時間そうしていただろうか。人間らしきものが声をかけて来た。


 「おい、いつまでも突っ立ってないで、早く私を助けろ」


 「あ、はい」


 話しかけてきたのは、同い年くらいの女の子だった。彼女に手を差し出す。勢いを付けて引き起こすと、バランスを崩したのか俺の方へもたれかかり、二人で抱き合っているような格好になった。


 「もっと丁寧にやれ」


 「す、すみません」


 この状況は一体なんだ。なぜ天井に穴が開いているのか。この女の子は誰なのか。何がどうなっているのか全く分からない。色々と思考を巡らせてみたが、この状況の答えはどうやら頭の中には入っていないようだ。段々と昇っていく思考の波は、チャイムの音により地上に引き戻された。


 「いやー、遅くなって悪い悪い。お邪魔するぞ」


 家の扉を開いた者が見た光景は、廊下で抱き合う男女の姿であった。トオルと目が合うと、一瞬沈黙が流れた。ドサリと、トオルはその手に掴んでいたコンビニ袋を落とすと、中に入っていたペットボトルが玄関に転がった。


 「お前、いつの間に・・・」


 「いや、これは違うっ」


 咄嗟に女の子を押し退けると、彼女は尻餅をついて倒れた。


 「いてっ」


 「お前だけは信じてたのに。俺の先を行くどころか既に同棲までしてるなんて。まさか、初めから自慢するために俺を呼んだのか?」


 「違う。これは誤解だ!」


 「うおあああああああ」


 トオルは勢いよく外へ飛び出していってしまった。変な誤解を与えてしまったようだ。このままではまずい。

 そうして慌ててトオルの後を追おうと走り出した瞬間、何者かに足を掴まれて俺は派手にこけた。


 「いってえな。何すんだよ」


 「それは私の科白だ。いきなり押しやがって」


 「今は緊急事態なんだ」


 急いで玄関を出ると、トオルの姿は既に見えなくなっていた。これではもう追い付けないだろう。もうだめだ、明日が怖い。

 俺は諦めて、とりあえず廊下に散らばったものを掃除することにした。



 テーブルを挟んで二人、向かい合って座っている。テレビには女性歌手が元気よく歌っている姿が映し出されている。二人の間に会話は無い。最初にこの沈黙を破ったのは、彼女の方だった。


 「この白い液体、うまいな」


 「それはカルピスって言うんだ。知らないのか」


 「知らないな。天界にはこんなものはない」


 天界?何を言っているんだ?彼女には聞きたいことが色々とあった。というかありすぎて、何から聞けば良いのか迷っていた。


 「えっと、ではまず、どうやって家に入って来たんだ」


 俺がそう聞くと、彼女はまるで、人を小馬鹿にしたような表情で返してきた。


 「天井に穴が開いていただろう。あそこからに決まってるじゃないか。そんなことも分からないとは、本当に人間は馬鹿だな」


 さっきから感じていたが、なぜこの女はこんなにも態度がでかいのだろうか。


 「すまない、聞き方がまずかったようだな。なぜ天井を壊して家に入ってきた?君は泥棒か何かなのか?」


 「泥棒だと?私を犯罪者などと一緒にするんじゃない」


 「言っておくが、人様の家を破壊するのは立派な犯罪だからな」


 「人間界の法など知らん。それよりお前、私の事が知りたいのか?私はな、あそこから来たんだよ」


 そう言って、彼女は天井を指差した。


 「知ってる」


 「天井を破って来たという意味じゃないぞ。私は天界から来たのだ。つまり人間ではないのだよ。分かりやすく言えば、見習いの神様とでも言ったところかな」


 「はあ?」


 この女は何を言っているんだ?


 「この女は何を言っているんだ?という顔をしているな」


 ギクッ。少し動揺してしまったが、まさか他人の心が読める訳はないだろう。女性は勘が鋭いと聞いたことがあるが、当てずっぽうに決まっている。


 「ほう、人間の女は勘が鋭いのか。まぁ、私のは勘ではないがな」


 「!?」


 まさか、本当に心を読まれてる?


 「お前の感情は読みやすいな。だが、あまりやり過ぎるとこちらが疲れるから、このくらいにしておいてやろう」


 一挙に体中から嫌な汗が出てくる。恐怖感が全身を駆け巡り、筋肉が強張るのが分かった。訳が分からない。今、俺の眼の前にいるこの女は一体何者なんだ。


 「な、何者なんだよ」


 彼女は頬杖をつくと、にやりとしてこう言った。


 「私の名はソフィー。愛の女神様だよ」

勢いで書いたので、至らぬところが多々あると思われます・・・。

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