黒須涼子 運営団体の女
ゲーム内世界に戻ってきた。
空の上で、何かが閉じるような音がした。
これでもう、あの現実世界の東京には戻れない、ということか…。
東京からゲーム内世界に戻り、しばらくはのんびり過ごしていた。
そんな中、また新たな人物との出会いがあった。
バトルマスター・オブ・ファンタジア
運営団体 東京支部
黒須涼子
黒須涼子と名乗るその女は、見た感じは、
20代くらい。
黒須涼子「初めまして。黒須涼子です。」
もしかして、俺の知り合いの誰かに似ている?と思って、顔を見てみたが、思い当たらない。初めて見る顔のようだ。
だいたい、俺の周囲には、それほど知り合いと呼べるような人はいなかった。
運営団体の女が、わざわざ訪ねてきた、
ということは、運営団体の方で大きな動きとかあったのか?
ゲーム開発者、運営団体の代表者を名乗る謎の人物の肝いりで採用されたという。
さらには、あの謎の老紳士、案内人とも、
知り合いであるようだ。
「このゲームには、『異世界編』と『現実世界編』があるのは、ご存知ですね。
このゲームは、世界中でプレイされています。
プレイヤー同士はゲーム内では知り合うこともありますが、外の世界ではお互いの顔も知らないという関係です。」
今回は、『現実世界編』の状況についての話だ。
「現実世界編は、核戦争で荒廃した世界で、プレイヤーたちが敵と戦うという設定で来ました。
私が生まれるよりも前に、核戦争が起こったという設定です。
私が生まれて、物心ついた後は、あの核戦争は『大破壊』という名で、呼ばれていました。」
やはり、あの核戦争は、ゲーム内設定だったのか。
おそらく、異世界編の魔法戦争で荒廃した世界というのも、ゲーム内設定だろうと思っていた。
そして、東京が核戦争で荒廃したというのも、実はゲーム内設定。
このゲームの開発者は、なんでわざわざ、
そんな設定にしたのか?その意図は?
聞ける機会があれば、聞いてみたい。
「しかし、それから数十年の時を経て、大破壊後の世界は見違えるほど復興が進み、
今や世界は、『バトルマスター・オブ・ファンタジア』のゲーム攻略の実績次第で、全ての評価が決まる、という世界になっていったのです。
大破壊前の旧世界の肩書きとか地位とか、社会的評価とか、そんなものは何の役にも立たなくなりました。
私たちは、新世界を創ったのです。」
異世界で、のんびり過ごしている間に、
現実世界では、数十年が経過していたとのこと。
さらに、その数十年のうちに変わったこといろいろ。
S級よりもさらに上、EX級という格付けができた。
そして何より、錬金術師の扱いが向上したという。
黒須涼子「あなたには、錬金術師 ゴッドハンドという称号を授けましょう。」
ゴッドハンド、神の手という意味だ。
これは間違いなく、俺にとっての有益な情報だ。しかもそれを、わざわざ俺だけに教えてくれるなんて。
黒須涼子「実は、『バトルマスター・オブ・ファンタジア』は、世界中の言語で制作されており、国ごとに世界観、クリア条件なども、全く異なります。
私はその、東京支部の人間です。」
国ごとに、その国の神話や、民間伝承などに基づいたゲーム内世界になっていて、
また、出てくる敵のモンスターや、魔法やアイテムや、人物なども、それぞれの国の神話や、民間伝承などに基づく名称や外観になっているとか。
他の国のことは、ひとまず置いといて、とりあえず自分らは、東京編の攻略を目指そう、ということになる。
それからもう一つ、最後の話が衝撃的だった。
黒須涼子「新たに、オリハルコン鉱石という、レアアイテムが登場します。
オリハルコン鉱石と、各種装備を錬金術で組み合わせれば、今よりも強力な装備になります。」
なんだって!?
黒須涼子「ですが、オリハルコン鉱石を使った装備は、S級でも装備することはできません。普通のプレイヤーには扱えない装備なのです。
EX級のプレイヤーだけが、このオリハルコン鉱石を使った装備を、装備することができるのです。」
この情報も、俺だけに教えてくれた。
この情報は、全プレイヤーの中で俺だけしか知らない極秘情報だ。
しかもそれを、わざわざ俺だけに教えてくれるなんて。
いったい、この黒須涼子という女は、何者なのか?
ただ、彼女のもたらした情報は、間違いなく、俺にとって有益な情報だ。




