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16 地の民

「地の民、昔は……精霊がいた時代の事ですが、その様な種属がいたと、長老から聞いたことがあります」

「どんな種属だったか教えてくれないか?」

 ここにいるエルフの中でも最長老と思われる者に話を聞く。

 地の民は他の妖精達とは少し違っていたそうだ。妖精と言うよりも獣人や人族に近い種属だという。

 鉱物や土を操る精霊魔法に長けていて、精霊樹には滅多に近づかない変な奴らだと思われていたそうだ。

 ハーフリングと似た姿形で、彼等よりも毛深く頑健な身体の種属だったようだ。

 主に山や、地下に住処を構え、他とは交流を持たない種属だった。

 北の国から精霊達がいなくなり、苛酷な住環境に耐えきれなくなった精霊樹が枯れてしまった。アルマ(魔素)も段々薄くなり、そうして妖精達はわずか数十年で呆気なく消えてしまったという。今は唯一残っているのが精霊国だと彼(または彼女?)は話を締め括った。

「そうか、ありがとう」

 

 やはり、あの地下空洞には、地の民が居ると言うことだ。

「彼等は岩を通り抜けることが出来る。入り口は見付からないだろうな」

 クリステルがあきらめ顔で言うと、サムエルが、

「あのキノコが生えていた場所は彼等の食糧を栽培している農地のような場所では無いでしょうか?」

「そうかも知れないな。彼処で気配を消して見張っていれば、その内会えるかも知れない。明日から交代で見張ってみるか!」

 見張りを続けて三日後、地の民が壁から浸み出てきた。

 全部で十人いる。ルシオは姿を隠したまま彼等に精霊語で話しかけた。

「君達は地の民でしょうか? 話を聞かせてくれませんか?」

 地の民は、突然声を掛けられて慌てだしパニックに陥り、我先にと石壁に走って行ったが、其処にはクリステル達が先回りしていた。

 そこで、地の民は開き直り、それぞれ武器を構え威嚇してきた。

「争いたくはないんです。話を聞くだけですから。お近づきの記念にプレゼントを持ってきました」

 少し強引な接触だったが、彼等が、石の中に隠れてしまえば、この先会えなくなってしまうだろう。

 姿を現したルシオは、魔法袋を彼等に差し出すと、地の民の一人が、恐る恐る受取り、魔法袋を検分し始めた。

「おおっ! これは魔法の鞄じゃ! お前達は人族の魔法使いどもか」

「はい、そうです。グランデ大陸を回り調査している探索隊です。この度北の地を探索中に貴方たちの仲間を目撃しました。どうか話を聞いてくれませんか?」

「わし等の所には連れていけん。ここでなら話を聞いてやる。一体何を話したいんだ、人族ごときが!」

「……貴方たちは何時からここに住んでいるか、どんな暮らしをしているか聞きたい。そして出来るなら交流を持ちたいんですが……」

「交流だと! あれほど助けてやったのに、オマエ等は我らになにをしたか忘れたのか。交流など絶対にせん!」

「助けた? とは……」

「オマエ等が言うところの『聖地』が無くなり、難民がわし等に助けを求めて来た。以前より交流があったツォアルの国に庇いきれない多くの難民が来たのじゃ。懇意にしていた国の力になるため、あの国に逃れた難民達を西の獣人国へ逃がすのを助けてやったでは無いか。それなのに人族はわし等を捕まえ、連れ去ろうとした。奴隷としてこき使われて死んでしまった仲間は数知れないんだ。人族は信用出来ん」

 そうか、山脈の北側の迂回路を通るために地の民の力が必要だったのか。ツォアルと言う国があったのは知らなかった。まだ其処に人が住んでいるのだろうか? 山際をもう一度探索して見なければ……。

「この地図を見て下さい。ツォアルとは何処にあった国ですか?」

 ホログラムの立体模型地図を出してみせると、彼等は今まで警戒していたのをすっかり忘れてしまい、ルシオの近くまで駆け寄って、興味深そうに見ている。

「ツォアルはこの山脈の裾野にあった……多分ここいら辺だな」

 ルシオは、彼が指さした場所に『ツォアル』と名前を書く。それを見ていた地の民が、面白がって次々と知っている過去の国の名前を教えて行く。

 彼等は意外と単純でお人好しだった。仲良くなれば良い友になれるだろう。彼等の警戒心を解くことが出来れば良いのに。

 ハーフリングよりも一回り大きく、手足は短く髭と髪は黒かった。肌色は灰色がかった白色で、目は薄茶色。体中毛だらけだと思ったのは獣の毛皮を着ていたためだったようだ。

 ――漫画やアニメで見たドワーフ? に似ている気がする。

 クリステルは収納から、彼の異空間で取れた果物を彼等に差し出す。

 地の民等は恐る恐る果物を一口囓った。飲み込んた瞬間、眼を大きく見開き、夢中でむさぼり始めた。

「旨かった、我らはもう帰る」

「あの、明日もここで待っています。果物をもっと沢山持ってきますから」

「……明日になって見ないと分からん!」


 次の日もルシオ達はキノコの栽培地に来て地の民が来るのを待っていた。彼等は来てくれた。

「ありがとう、今日も話をしてくれますよね?」

「それは構わない。だが、1つだけ聞きたいことがある。オマエ等は、少し前にわし等の種属を助けたか?」

「はい、怪我をしていましたので、僕が治癒を掛けさせて貰いました」

「……そうか。では、お前とお前、儂に付いてこい」

 昨日とは違う地の民に導かれて、石の壁から中に入ることを赦されたのだ。


「オマエ等は岩を通り抜けることは出来ない。だからこの通路を通って貰う」

 地の民が岩に穴を開けていく。人がやっと通れるほどの穴だ。みるみる通路が出来上がっていった。百メートルほどの通路だ。

 選ばれたクリステルとルシオが腰をかがめながら、通路を進んでいった。通った後は、直ぐに塞がれていく。

 ――随分厳重なセキュリティだ。何処に街があるか、皆目分からなかったはずだ。

 彼等の国、若しくは街には他の種属は入る事が叶わないだろう。出入り口がないのだから。

 いい加減腰がいたくなってきた頃、やっと広い空間に出た。

「街……か?」

「地下とは思えないくらい明るい」

 通路から出た其処には、大きな街があった。地下なのにほんのりと明るい。円柱状になった巨大な柱が天井を支え、柱全体が発光していた。ほんのりと明るいのはこのお陰だろう。

 また、その柱が住居にもなっているようだ。それが数百本、等間隔に規則正しく立ち並んでいる。

 街の中心は広く開いていて、ボコボコとお湯が湧いている大きな温泉池があり、地の民はその泥をすくい上げていた。

 前世の温泉地には硫黄の匂いがして居たものだが、ここでは清浄な空気が感じられた。

「魔素が濃いな」

「そうだね、然も穢れていない魔素だ」

 案内の地底人に泥を何に使うか聞くと、

「泥を乾燥させて植物やキノコの栽培に使う」

 以前、ハーフリング達が、湖の水を畑に蒔いていたが、それと同じようなものだろう。

「ここには地の民は何人くらい住んでいる?」

「ここ、スブムンドには八千人が住んでいる。以前はもう少し多かったが……新しい町に移住した」

 ここで増えすぎた地の民は他にも街を作り、別れていったようだ。

 連れて行かれた場所は、一際巨大な柱の中だった。

 多分ここの責任者、若しくは王の居城だろう。

一番上まで階段を上がり、部屋に招き入れられた。一人の年老いた地の民がベッドに横たわっている。

「スブムンドのボンゴ王だ。王様は病気だ、病を治せるか?」

 不安げに案内人はルシオを見ている。

 ――彼は病気ではなくて、寿命なのでは?

「……あの、王様はお年を召しておられます。病気ではないのでは?」

「いや、王様はまだ二百歳、それほど年を取ってはいない。病気のせいでこうなって仕舞われたのだ……」

 王様は幼い頃から虚弱で、魔法を使うと倒れてしまうことがよくあったが、このところ立ち上がれなくなってしまったのだそうだ。

 ルシオは取り敢えず鑑定を掛けてみる。王の身体は何処も悪いところが見付からない。もっと深く鑑定を掛けると、彼の身体の中に明るく輝く光が見えた。

 ルシオはもしやと思い光をよく観察する。すると光は少しずつ漏れ出しているのが分かった。

 ルシオ達とは似ているがよく見ると機能が違う魔力器だ。案内人の鑑定もしてみる。彼の魔力器も光り輝いているが何処からも漏れ出ていない。

 原因は魔力器に開いた穴だろう。直ぐに穴を塞ぐ。

 ルシオにも穴が開いているが、彼等と人間は根本的に違いがあるのが分かった。

 ルシオの魔力器は外から魔力を集めて魔法に変換しているが、彼等は魔力の自家発電を持っているのだ。

 吸収しなくても自分で魔力を作っている。出来上がった魔力は絶えず外側に圧力を掛けているようだ。

 ――地の民の魔力器では、何時も魔力を消費していないと破裂してしまいそうだな。

 王は、穴があっても周りからは吸収出来ない。絶えず外側に魔力が流れ出してしまっているようだ。


 ――妖精達とは全く違う。妖精はそのものが純粋な魔素の塊だ。地の民は妖精なのか? 寧ろ人族側に近いのではないだろうか?

 穴が塞がった王様は苦しそうな息づかいが治まって、今は静かに眠って居る。二,三日もすれば起き上がれるようになるだろう。


「お前のお陰で王様は楽になったようだ。ここに暫く滞在する許可をあたえる」

 ルシオ達には柱の一本を住居として与えられるという。ルシオ達が連れて行かれたのは細い柱。

 柱に入り、中を見るが、何も置かれていない、十二畳ほどのがらんどうだ。然も出入り口は地の民が塞いで出て行ってしまったのだ。

 室内もほんのり明るい。壁を触ってみると、ヒカリゴケの一種が一面に張り付いているのが分かった。

「そこそこ明るいのは良いが、ベッドも何もない。ここで、どうやって過ごせと?」

 クリステルは地べたに座り、壁に寄りかかった。ルシオもそれに習う。

「まあ、僕らには異空間があるから。別に不自由はないだろう。これは多分牢屋だな」

「これくらいの厚さの石壁なら、私でも穴を開けられるんだが。牢屋の意味が無いな」

「僕では微妙だな。ここから脱出するとしたら、転移だな」

 二人は、逃げる気は全くないが、閑を持て余し、ああでもない、こうでもないと脱出方法の案を面白おかしく話し合った。

「でも、人族や獣人は絶対に逃げ出せない、立派な牢屋だな」

 暫く待つと、地の民が食事を持って入ってきた。

「悪いがここで王が回復するまで待機してくれ」

 待機。要するに、万が一王に何かあれば制裁があると言う事だろう。


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