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14 ソフィアとの別れ

 南の地下都市に、魔道師を派遣することが決まった。

 新しい王との面会も叶い、神殿を作る許可が下りたようだ。

 その事を伝えるためにミゲル魔導師がルシオの元にやってきた。

「魔道師は、戦闘魔導師数人に、魔法兵と錬金術士も派遣することにした」

「神官魔導師は派遣しないのですか?」

「君達が仮の神官の役割になるだろう。 神官は未だに人手不足だ。責任者は戦闘魔導師にして貰い、君達が神官として三つの地下都市を担当することになる」

 そう言えば、ロマゴでは以前、若い神官が国中を廻って歩いていた。その役割がソフィアとルシオに廻ってきたようだ。

「まさか裁判官の役割もするのですか?」

「必要になったらそうなるだろうが、暫くは無いと思う。神による裁判という制度自体に馴染みがないようだからな」

 神殿の建設場所は、孤児院が所有している土地で、其処に新たに神殿を建設した。孤児院は其処に取り込まれるようだ。

 フリアは、落ち着かない。

「私……孤児院に戻りたい……」

「まだ、魔法の勉強は中途半端でしょう。暫くここで勉強しないと」

 ソフィアはそう言うが、帰りたいものを引き留めることはしてはいけない。

「ソフィア、魔道師が神殿に入ることになったんだ。彼等に養い親を変わって貰おう」

「でも、フリアは女の子なのよ。受入れてもらえるかしら……」

「ペニーニョも変わってきた。君のお陰で、今では女性にも魔法を教えているんだ。まだ女性の魔道師はいないが、確か、錬金術士を目指している養い子がいると聞いたよ」

「……」

 ソフィアは、寂しいのだろう。可愛がっていた子供が半年余りで早々にいなくなってしまうことが。

 ルシオだって同じだったが、子供が地下都市に戻りたいというなら、引き留めてはいけない。引き留めることは自分のエゴだ。

「僕達はこの地下都市を廻る仕事になった。何時でも会いに来られるじゃないか」

「……そうだったわね。フリアを他の魔道師に預けましょう」

「僕は心が読める。ちゃんとした魔道師を選んでやれる」

 ところが、フリアが地下都市に戻る事が決まると、他の子供達までソワソワし始めてしまった。

 ここに居たいと言っていたネポムまでもが羨ましそうにフリアを見ているのだ。

 ルシオ達は途端に自信をなくして仕舞った。養い親として、足りないものがあったのだろうか。

 理由を問い質しても答えてくれないかも知れない。無理に聞き出すと彼等を追い詰めてしまうかも知れない。

 彼の心を読んでみる。人の心を勝手に読むというのは、余り褒められた事ではないが、どうしても理由が知りたかった。

『地下の方が安心出来る。ここは明るすぎて苦しい』

 ――そう言うことだったのか。

 人族に見えても、やはり人種が違うのだ。ルシオ達が心地よい環境でも、彼等にとっては苦しいと感じられるのだ。

 ソフィアと話し合い、自分達は身を引くことに決めた。

 三人の養い子は、神殿の戦闘魔導師に預かることに決まった。

 養い子がいなくなって、ソフィアは元気がない。何もしないで一日中ボンヤリしていることが多くなった。

「空の巣症候群って言う奴だな」

「から……何それ」

「子供が巣立って寂しくなって、することが無くなってしまったと感じることさ。だけど、ソフィア、僕達にはまだ沢山やることがある。地下都市を回る事もそうだし、エルフ達の安住の地を探す事だってまだ残っているじゃないか」

「……そうなんだけど、物足りないの。まるで私の異空間そのものだわ。小さな島がポツンとあるだけで、後は命の宿らない大海原……」

「……そんなこと……」

 ルシオは「そんなことは無い」と言うつもりだったが、余りにも異空間がソフィアの心そのものを表わしているようで愕然としてしまった。

 ――ソフィアは、僕といても寂しいと感じているのだろうか?

「ソフィア、僕といても空虚だと感じる?」

「……貴方のことはとっても好きよ。それとは違う思いが私の中にあるの……自分が死んだ後には何も残らない。生きた証が欲しいと、この頃切に思うの……」

「それは、仕事の成果ではダメなのかい?」

「そういう風に思えるのは、貴方が男だからよ。私はそれだけでは物足りない。養い子を育ててみてハッキリ分ったの。自分の子供で無くても良いのよ。私が手塩に掛けて育てた子供が立派になっていく姿を見ることが、私を満足させ充実感に繋がっている」

 同じ人種でも、男と女は違うと言うことなのだろうか。

 ルシオは子供はいなくても気にならない。いたら愉しいのは本当だが、何れ子供は巣立つものだと諦めが付いていた。

 ルシオ自身親から早くに離されたし、養い親も変わった経験があるのだ。養い親達には皆一生懸命育てて貰ったし、未だに行き来がある。そのせいで家族というものに憧れがないのかも知れない。だがソフィアは、違うと言うことだ。

「君は人を育てることが好きなんだね」

「そうね、そう思うわ」

「……孤児院で働きたいかい?」

「……ごめんなさいルシオ。私も本当は孤児院へ行きたいの。ここは素晴らしいところだけど、私がいなくても問題は無い。でも、子供達には私の支えが必要だと思うのよ」

 それからソフィアとの間がギクシャクするようになった。

 ルシオはどうしたら良いのか悩みに悩んだ。

【暫くソフィアと離れて暮らせルシオ。本人がやりたいようにさせることが大事なのではないのか?】

 ――確かにそうだ。子供達のときは「自由にさせよう」そう思ったではないか。だけど、ソフィアは自分からは離れないと高を括っていたのだ、僕は。

 ソフィアは、ルシオの所有物ではない。彼女のやりたい事を手助けするべきなのだ。それこそ会いたければ何時でも会えるのだから。


 ソフィアは、地下都市の神殿を任せられることに決まった。

 神殿長にソフィアのことを話したとき、

「そうしてくれるか。それは願ってもないことだ」

 と言われた。

 当初、地下神殿に神官を派遣したかったが、神官が足りず、ルシオかソフィアに受けてもらいたかった。だが、二人を離すのは可哀想だと、二人で巡回して貰うことに決まったのだそうだ。

 神官が二人で何時も行動を共にして居たのだから。今の神官が足りない状況では勿体ないことなのだ。

 神殿長が以前辺境の神官を二人で任されたときは、一方が病気でその補佐に廻った。その様な不測の事態でも無い限り神官を二人とも派遣するような勿体ないことは、現状では出来ないことなのだそうだ。

「今後神官が増えればまた状況が変わるが、神官が育つには時間が掛かる、然もグランデ大陸中に範囲が広がったのだ。実現するのは数年先のことになるだろう。それまでは何とか我慢してくれないか?」

 神殿長からそう言われ、今まで気が付かなかったルシオは自分を恥じた。

 ソフィアは、神官魔導師だと言うことをすっかり忘れて居たのだから。

【ソフィアにはソフィアの使命がある。あの選別の日、ソフィアは神より未来の可能性を見せられた。だが、彼女はお主に付いていくことを選んだのだ】

「え! ソフィアは、本当は僕とは別の使命があったのか?」

【そうだ。彼女には人を育てる才能がある。彼女はこれから子供達を鍛え教え導いていくだろう。そして沢山の魔道師を世に送り出してくれることだろう。お主はもう妻としてのソフィアのことは諦めろ。これからは同志として接した方が良い】

 ルシオは、自分がソフィアの自由や可能性を潰していたことを知り落ち込んだ。

 あれほどの才能を持っているのを知りながら、自分に縛り付けていたんだと後悔もしていた。

 ――暫く、僕は立ち直れそうもない。その事をもっと早く知りたかった。


 ソフィアは忙しいのか、滅多にルシオの元には来なくなった。

 ルシオの方は時々ソフィアの異空間へ行っていたが、彼女の生き生きと忙しくしている姿を見ている内に、行くのを遠慮する様になった。

 彼女はそっとしておいた方が良いとご先祖様に言われていたのだ。会いたくても行かない方が良いだろう。返って気を遣わせてしまう。

【お主はソフィアに嫌われたわけではないのだぞ。彼女に他にやりたい事や使命があったと言うだけだ。友であるならば喜んであげなければならないぞ】

「そうだね、確かにその通りだ。彼女が大事なら彼女のことを応援しなければ……な」

 

 その後、ソフィアの異空間で魔水晶を浄化して貰う以外は通信だけの付き合いとなった。

 通信は殆ど毎日やりとりしている。彼女の関心は子供のことばかりだった。

「ソフィア、僕は北の探索に加わることにしたよ。何でも北にも地下洞窟が見付かったらしいんだ」

「まあ、そうなの? 気を付けて行ってきて。また新たな種属が見付かるかもね。それよりルシオ、こっちの子供達に魔力持ちが沢山見付かったのよ。それが不思議なことに女の子の割合が多いの。私の力が大いに必要になりそうよ」

「そうか、頑張れよ。助けがいるようなことがあったら、何時でも言って」

「ええ、その時はまっ先に連絡する。ありがとう」

 ルシオが神殿長から受取った大量の本は、ソフィアにやることにした。今のソフィアには最も必要だろう。


 ソフィアがいなくなった屋敷は広く閑散としている。ソフィアが作った異空間にある小さな神殿に、ルシオは一人祈りを捧げている。以前は二人でしていた習慣だった。

「ソフィアが、これから沢山の子供達と触れあい、充実した生活を送れますように……」

 ルシオが祈っていると、この頃妖精達が見に来る様になった。ルシオの真似をして跪き、ぼそぼそと何やら祈りを捧げていた。

 その内に獣人達も来るようになった。

「君達には昔から信仰している神はいなかった?」

「神か? いなかったけど、ここに来ると気分がスッキリするんだ。来てはダメか?」

「いや、何時でも来て良いよ。好きなだけ祈るといい」

 彼等が祈っても、魔力を供給できないし、知識も受け取れはしないが、それでも、純粋に祈りを捧げている。

 彼等の曇りない祈りには、ルシオの祈りよりも価値があるのではないだろうか?

 祈りが終われば、クリステルの異空間へ行き、北の探索隊に参加する。

 そのままクリステルの異空間の部屋を借りて暫く滞在することも多くなった。クリステルは

「ソフィアとのこと、気になっていたんだが、ルシオは大丈夫か?」

「ああ、連絡は毎日している。喧嘩別れしたわけではないんだ。彼女のやりたい事をして貰っているだけなんだ」

「そうだったのか。君さえ良ければ、ここにずっといれば良いさ。君の異空間は広すぎて気が滅入ってしまうだろう。今の君にとっては……」

「ありがとう。確かにそうだな、暫くここにいさせてくれ」

 


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