11 子供達の処遇
「この少年達三人は、私に任せて貰えないか。彼等にとってルシオの異空間は明るすぎて辛いだろう。私の異空間なら少しはましだ」
「遮光出来る眼鏡を作ったんだ。大丈夫になったんだよ」
「いや、私が彼等を育ててみたいんだ。お願いだ」
「彼等が良いなら、勿論クリステルに任せるよ。でも、君の部屋では狭くはないか?」
「それが、また異空間に変化があった。開かずの部屋はそのままだが、他の部屋が沢山出来上がったんだ。これは神からの使命ではないかと思うんだ」
――部屋が沢山? まるでホテルだな。
「そうね、それならやらなければね。何時でも手伝うから、自分一人で抱え込まないで、クリステル」
「ああ、分かっている。今回のことで身にしみた。度々手伝って貰うよ、今度からは」
折角の希少な魔力持ちだ。頑張って鍛えて貰おう。
魔力があれば国の発展に寄与出来るだろう。地底都市に限らず、これからのグランデ大陸には必要になる人材だ。
ルシオとクリステルは、ブルホに転移し、これまでの経緯を報告した。
「素晴らしい成果だ。これほど異種族がいたとは、考えてもおらなんだ。然も何れも魔力があると言う。エルフという摩訶不思議な妖精に、地底人か。獣人までおったのう。世界は広いな、ルシオ魔道師」
「本当ですね。ボクも今回の事で心からそう思います」
「これからどうする? ブルホへ帰ってくるか?」
「いえ、子供を育てると言う仕事が増えました。エルフのアダ王のこともあります。アダ王は妖精達の安住の地を探しているようです。そのお手伝いをしなくてはなりません」
「ほほう、子供がな。ソフィアは喜んでいるであろう?」
「はい、毎日子供達の世話を嬉々としてやっています。余程愉しいのか何時も和やかにして居ます」
「神からの褒美じゃな……」
「そうでしょうか?」
「我々は子を持つことは適わぬのだ。養い子を育てるのが精一杯だの。だがそれでも子供を育てると言うのは喜びであった。私も何度か経験した。あの頃は毎日が輝いておった」
「……確かに。パブロ魔道師やミゲル魔導師、ウゴ錬金術士にはお世話になりました。実の親よりも親に近い存在です」
「その様に言って貰えるのが一番嬉しいのだ。クリステルもそうであろう?」
「は! 私も養い親には大変世話になりました。養い子を育てるのはその恩返しになると考えています」
パブロ魔道師やミゲル魔導師も今回は同席していた。ルシオからの感謝の言葉に少しだけ落ち着かないようだった。
咳払いを一つしてミゲル魔導師が言い出す。
「ルシオ、北をもう一度探索するというのは本当か?」
「はい、転位陣はクリステルが敷き終わりました。今度はそんなに時間が掛からないと思っています」
「その事だが、戦闘魔導師達を派遣しようかと考えている。北は彼等に任せてはどうだ? お前達は養い子を育てるのに手を取られるだろうからな」
ミゲル魔導師の提案は今となってはルシオには有り難かった。だがクリステルはどう思うだろう。
「……クリステル、どうする?」
「私はもう一度北を見に行きたいと考えています。もし宜しければ、その案内をさせて貰えませんか? 私の養い子は年齢が十三歳から十五歳と比較的大きい子ばかりです。彼等を鍛える一如にもなると考えています」
「そうか、お前には異空間があるから、助かる。そうしてくれるか」
「はい、承りました」
パブロ魔道師が、ソワソワしている。ルシオにはその理由が分かっているが、ミゲル魔導師がいるため言い出せないようだ。もう異空間の転位陣のことはミゲル魔道師に明かしてもいいのでは無いか。鍵があるのだから問題は無くなったのだ。
「パブロ魔道師の牝馬は、無事雄の子馬を産みました。今見ますか?」
「……る、ルシオ良いのか?」
チラチラとミゲル魔導師の方を見る。ミゲルは、何のことか分からないようだった。
「ほっ、ほっ、私がミゲルに話そう。ミゲルよ、気分を悪くしないで聞いて欲しい。ルシオの異空間には自由に行き来出来るのだ。自分の異空間からな」
「なっ! 何時ですか、何時からそんな凄いことになっていたのですか!」
それからは一悶着あったが、ミゲル魔道師の異空間にも転位陣を敷く事になった。
「鍵があるなら隠さなくても良かったではないのか?」
まだミゲル魔導師の機嫌が治っていないようだ。
「……初めはなかったんです。鍵は後からで……」
「そうだったのか。誰でも入ってこられたら不味いものな。して、アレハンドロには? 教えたのか」
「いえ、ここにいる人だけです。あと、ルバレロも……」
「アレハンドロにも教えてやってくれないか? 彼奴も心配しておった。仲間はずれにしては可哀想ではないか。人が入れる異空間持ちは、後はアレハンドロだけだぞ」
「え、そうなのですか? 十人いると聞いたのですが」
「十人の異空間持ちの中で我々以外は住めないと言うことだ。大きさは申し分ないが、空気が薄くて長く異空間で過ごせないのだそうだ」
「そうなのですか? 不思議だ。何が原因だろう。クリステルの異空間は変化しました。その方達の異空間も変わるかも知れませんね」
「……そうだろうか?」
【ルシオ】
――ご先祖様。どうしました?
【お主等の異空間は、特別製じゃ。他の異空間は変わらぬ】
「どう言うことか……よく分からないのですが」
「ん? どうしたルシオ。何かあったのか?」
「あ、いえ、何でもありません……」
「ミゲル、多分ルシオは今、神からの言葉を受取ったのだ。そうであろうルシオ」
「はい。ごせ……神は仰いました。私達の異空間は特別で、他の方の異空間はこれからも変わらないと」
「そうか……神の仰せなのなら、我々の異空間は神からの褒美だという事だな。そうかそうか」
パブロ魔導師は満足そうに頷く。
それから皆でルシオの異空間に入る事になった。ミゲル魔導師は様変わりした異空間を見て酷く驚いている。
動物も、住人も増え、賑やかになったのだ。そして、獣人達が騒いでいる。
「次は俺の番だぞ! 順番を守りやがれ!」
「るっせい! お前は長く乗っていたじゃないか!」
喧嘩が始まりそうだ。何があったのだろう。ルシオ達が駆けつけると、フライトモービルの取り合いをしている様だ。
「僕のも貸してあげるから喧嘩しないで。そんなに欲しかったら幾らでも作ってやるから」
獣人達は喜んでフライトモービルに乗って飛んでいった。
それを見ていたパブロ魔導師は、眉間にしわを寄せて
「ルシオ、あれはなんだ! 何か発明したらまずは知らせるようにと言っておったはずだ!」
またルシオは大目玉を食らってしまった。
ルシオの創造魔法で作り出したことを正直に言い、これを魔導師達に作らせるのは時間が掛かるだろうと言ったが、
「いや、出来るぞ。軽くて丈夫なら良いんだな。魔物素材を使えば良い。この権利はきちんとしなければならない。私に任せなさい。ところでそんなに簡単に出来上がるというなら私にも作ってみなさい。きちんと対価は払う」
ルシオはその場で二台のフライトモービルを作り上げミゲル魔導師にも渡した。
出来上がって直ぐに、パブロ魔導師と一緒になってミゲル魔導師もフライトモービルに乗って行ってしまった。
「全く、まるで少年に戻ってしまった様だの」
神殿長は呆れている。
「アレは魔水晶を沢山使いますから、一般には売れないと思います。魔素が濃い場所では効率が良い物も作ったのですが、そっちを作った方が良かったかな……」
「なんと、周りの魔素を使って動くのもあるのか?」
「はい、初めはそれでした。グランデ大陸には魔素が極端に少ない場所があってその為に作り変えたんです」
「では、その初めの飛行物体、フライト、モービルか、それも作ってくれないか? その方がペニーニョ島では売れるであろう」
ルシオは少し考え、魔水晶と魔素を切り替えて使用出来る様に作り変えた。
「良いものが出来たの。これからは馬ではなく、このフライトモービルが主流になるだろう。荷物は魔法鞄に詰めれば、流通が格段に変わるはずだ」
確かにそうだろう。道の整備は必要無い。前世の交通手段よりも優れているのではないだろうか。材料は魔素だから空気汚染の心配も無いのだし。
「ルシオ、北の探索には通信の魔水晶の設置を主に考えているのだ。君が以前言っていた中継地点と言ったか? それを大陸の端と島の端に造れば、ペニーニョ島との通信が出来る様になるのであろう?」
「そうでした、すっかり忘れて居た。ソフィアがそうしたがっていたんです。直ぐに取りかかりましょうか?」
「ああ、また魔水晶の森へ行って選んできなさい」
「……それも必要なくなりました……」
「どう言うことだ?」
ルシオは濃い魔素を魔水晶に変換できるようになったことを話した。
「そうであったか、では困ったの。君にやる褒美は何にすれば良いのか……」
「褒美なんか要りません。僕は自由にさせて貰ったお陰で、宝が沢山あるのです。魔素も、子供達も」
「そうか……そうだの、神から沢山の褒美を受取っておるようだの」
神殿長は眩しそうにルシオを見ていた。
アレハンドロが任されているシュバリスの神殿に転移し、久し振りに再会した。
「ルシオ、なんでこっちに来てくれなかった! 転移すれば一瞬だろうが!」
凄く怒っている。そう言えばここ暫く通信もして居なかったなと今更ながら申し訳なくなった。
「ごめん忙しかったんだ。色んな事がありすぎて忘れて居た」
「忘れて居た……ってお前! 通信くらい出来るだろう。まあ、俺も忙しくて通信出来ていなかったが……」
「お詫びに良い物をやる」
フライトモービルを出して使い方を説明すると、途端にアレハンドロの機嫌は直った。彼は引きずらないさっぱりした性格だ。ついでに転位陣のことも話して設置しようと言うと、
「え、パブロ魔導師や神殿長まで自由に来るのか? それは……チョット困るな」
アレハンドロの異空間に入らせて貰うと其処には五人の女性がいた。相変わらずハーレム三昧のようだ。
「今更だよ。みんな君の事は諦めている。観念しろよ。嫌なら鍵を渡さなければ良いだけだ。さあ、敷くからな! 転位陣」




