第一話 俺が俺でなくなる日
キーンコーンカーンコーン
学校の終わりを知らせるチャイムがいつも通り鳴り響く。
「今日は虚無症最多だってさ!」
「怖いなー…私達だっていつそうなるか、時間の問題だね…。」
学校ではみんな虚無症ー憂鬱ーと言う病気が流行っているニュースでもちきりだ。
虚無症というのは、いきなり感情を失ったかのように人間が廃人化してしまう。
昔からある病気みたいだが、原因は不明で治療方法もわかっていないみたいだ。
SNSでは、神の祟りだ、遺伝だで誰もが言いたい放題であるのが現状だ。
俺もその一人で、まぁ遺伝説が高いんじゃないかと信じてるところはある。
「おーい、漣!ぼーっとして何してんだよ!?虚無症になったか?」
「おい、悠人。冗談でも病気をそう言うふうに言うなよ。バチが当たるぞ。」
いきなり話しかけてきたのはこの高校でできた、俺の友達である悠人だ。
根はいいやつだが、すぐこうやってブラックジョークのようなことをいう。いつか背中を刺されそうでヒヤヒヤだ。
「俺の家族に虚無症はいないし、遺伝しないから大丈夫だし!」
自信満々に笑顔で答えるが、本当に病気にかかった人に失礼なやつだ。
俺が代表して謝っておこう。
いつも通りの帰宅路を歩き、悠人とくだらない話をして孤児院へ帰る、これが俺の日常だ。
俺には誰もいない。父と母は俺が生まれてすぐ急死したらしい。
ずっと孤児院で過ごしてきた俺にとって、孤児院が俺の家。
まあ、別に悲しいことは何もない。物心ついた時に亡くなったんだし、何も知らないから、かえってそっちの方が気が楽だ。
「じゃあまた明日な。背中は守れよー」
「俺は無敵だから大丈夫だ!」
「厨二病かよ!」
なんて笑いながら別れようとした。
その時ーーー
俺の影、なんかぐにゃぐにゃしてないか?
すると形を変えて”何か”が影から出てきた。
『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィーーー』
ーーーは?なんだこれ?
奇声をあげて、妖怪?が俺に迫ってきた。
え、なんとかしないと、なんだこれ、足が動かね。
「漣!!!!危ない!!!!!」
ドンッッッ
妖怪が、悠人の胸をえぐり、何かを喰べる。
「え、悠人…?」
何が起こったのか把握ができない。
悠人は俺を庇って、妖怪から攻撃を喰らったらしい。
しかし、あんなけ激しい攻撃を胸に喰らったのに、悠人は死んではない。
がーー、様子がおかしい。
これって…
「虚無症…」
目の前で悠人が虚無症に成り果てた。
なんだこれ。
嘘だろ?
「虚無症って、病気じゃないのかよ…」
『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィーーーヒヒヒヒ』
妖怪は悠人の何かを喰って、吸収させ、少し体を大きくさせた。
そしてまた俺に迫ってくる。
「ふざけんなよ、なんなんだよ。」
次は足が動いた。俺は必死に足を動かして動かしてとにかく、少しでも遠くにと走った。
くそっ。早すぎる。
俺も、悠人のように虚無症になってしまうのか?
俺の心の中で沸々と、怒り、悲しみ、絶望、拒絶、とにかくたくさんの感情が渦巻いた。
ついに足が絡まり、スローモーションを見てるかのように転けてしまう。
だっせえ。悠人は勇気を出して俺を庇ってくれたのに、なんだこの体たらくは。
妖怪は止まることなく、俺の心臓にえぐるように手を入れ、俺の何かを喰おうとする。
すると、俺の血液がどくどくと、体を駆け回り、手に集まるのがわかった。
咄嗟に手を前に出すと、ズドォォォォンと、妖怪が吹っ飛んでいく。
「っ、は…?」
妖怪はピクピクとしながら、起き上がり、また俺に近づいてくる。
俺はもう一度手を伸ばした。
妖怪に触れ、妖怪の何かを取り出したのがわかった。
これは、たくさんの恐怖の感情…。
俺は何も考えず、それを喰った。正確には本能的に喰った。
そして、妖怪は消え去った。
俺は一体何をしたんだ。
それに、自分の体に異変を感じる。
世界の色が変わった。いや、感情が色として見えるようになったと言うべきか。
近くを通り過ぎた男の人女の人は、悲しみや喜び、それぞれの色を帯びていた。
悠人もいつの間にか姿を消していた。
俺の体は、あの妖怪は、虚無症は一体なんなんだ。
全てがよくわからなくなったが、わかることは一つ。
きっと俺のしたこと、妖怪、虚無症は全て繋がっている。
「ふふっ大体貴方が想像してることで合ってると思うわ。影守漣。」
どこからか、女性の声が聞こえる。
「誰だ?」
すると、目の前に白いフードを着た少女が現れた。
「やっと覚醒した力を見せてくれたわね。ついに確信したよ。やっぱり貴方がそうだったんだね。」
覚醒?なにいってんだ?よくわからないが、この人が何かを知ってることは分かった。
「真相を知りたいでしょ?ついてきて。あ、ちなみに拒否権はないわ」
すると踵を返し、歩き始めた少女。
おいおい、俺何も返事してないんだけど…。
とにかく、この人について行けば何かわかるかもしれない。
俺はその少女の後を追うことにした。




