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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

赤い水

作者: HORA

小学校のクラスの中で僕は周りからよくからかわれていた。

「お前はばっちぃから掃除の時に俺の机を絶対触るなよ!」

「先生、そんな難しい問題がこいつに分かるわけないよ!」

「こっち来ないで。もっと遠くを歩いて。」

ほぼいじめであると言っても過言ではないが、

何かを強制されたり、叩かれたりという事は無い、という感じだ。

クラスにはAという子がおり、その子も同様にからかわれていた。

僕から見てもAは鈍くさく、チビで、頭が良くない。

忘れ物がとても多く先生によく注意されている。

クラスの皆もそれに乗っかりAは周りからよくからかわれていた。

僕はAをからかうような事はしなかったが、馴れ合うような事もしたくなかった。

お互いが距離をとり、片方がからかわれていても『無』であった。


給食の時間は僕とAだけ班から少し離れたところで食べている。

そんなある日の給食の時間、何気なくAの方の机を見るとAの牛乳瓶に赤い液体が入っていた。

(ん…?あれは牛乳瓶の中に赤い液体が入っているのか?それとも瓶の外に赤い何かが塗ってあるのか?)

しばらくボーっと見ているとAがその赤い液体を躊躇(ちゅうちょ)なく飲み始める。

(あ、口の端に赤い液体がついてるから、中の液体が赤かったのか。…えぇ。何で普通に飲めるの?)


その日から注意して見てみると、給食の時の牛乳瓶の中身や学校で出されるお茶、Aの持参した水筒の中からは赤い液体が出て来ており、Aはそれをゴクゴクと飲んでいる。

いじめにしてはあまりにも陰湿で酷いのではないだろうか?

しかし僕は、その悪質なイジメの標的がこちらに向くことを恐れて、クラスの誰かや担任に何も言えないまま2か月が経った。


Aはまだ赤い液体を飲まされ続けている。非常にしつこい。Aも意地になって飲み続けているのであろうか?ただ首謀者が分からない。Aの飲む牛乳を配る人や、水筒に近寄る人を注意して観察しているのだが、犯人らしき人物は見当もつかなかった。


夏休みに間もなく入ろうとするある日。4限目の授業が体育であった。皆が体操服に着替えて、外ズックに履き替えて校庭に出る。チャイムが鳴ってから先生が皆に宣言する。

「もう体育は授業が全部終わったから、今日は全員でドッジボールやるか!」

「やったー!!」

僕は運動神経があまりよくないのでドッジボールは好きではないが、クラスの中では男女ともに人気の遊びだ。皆のテンションがブチ上がっている。

開始して1投目で僕の脚に当たり、僕はそうそうに外野へ。

クラスの皆はくすくすと下卑た笑いを僕に向けていた。

それからしばらく経ったが、チビで逃げ回るAはまだ内野に残っていた。

それを見て示し合わせたクラスの男子が、Aの顔面に目掛けて全力でボールを投げ始めた。

ニヤニヤしながら男子達が2度、3度とAの顔をめがけて思い切り投げる。

それを何とか(かわ)していたAだったが体制を崩し転んでしまった。

そのAに向けて、まぁまぁの近距離からの全力投球が顔面に!


ぱぁぁぁぁん!!!!!


球が顔面に当たった瞬間、Aの頭部がぐにゃりと膨らみ

爆散した。


そしてそのAの体から信じられないような赤い液体の壁…津波が全員を襲った。高さ3m程、プール一杯分程の赤い液体がAの体から濁流となって一気にあふれ出したのだ。全員を20~30m程押し流し、校庭のほぼ全面を真っ赤に染めた。


救急車が5,6台駆けつけ、12人が重軽傷を負ったものの、幸い死者は出なかった。


Aはその日から行方不明となった。


間もなく夏休みに入り、クラスの皆はあの事故から学校に一度も行く事無くそのまま夏休みとなった。

ここ数か月、赤い液体を飲み続けていたAに何が起こったのだろうか…?


夏休みの間に校庭の赤い染みを消すべく工事が入ったそうだ。しかし上から土を撒いても、下から赤い液体が染み出す。土を大きく掘ってから別の土を入れたものの、やはり赤い液体が染み出してきたそうだ。

そこで上から人工芝を全面に敷くことで、9月の中旬からの校庭の使用ができるようになった。


これから何年か経ってから人工芝をめくるとその下はどのような事になっているのだろうか?


遅れて2学期が始まり、僕は全くからかわれていない。クラスの皆はあのドッジボールの日がトラウマになっているようで、会話そのものが全体的にほとんど無い状態だ。今日も給食の時間。班に加われずに少し離れたところで給食を食べる。Aの席には花が(そな)えられている。まだ行方不明という事になっているのだから花はどうなのだろう…と思うが、クラスの皆は目の前でAがどうなったかを見ているのだ。もう亡くなっているという事は分かっているのだろう。そういえば担任は全然僕やAを助けてくれなかったなとふと担任の方へ目をやる。

給食の牛乳瓶が赤い色になっていた。


僕はすぐに早退して、翌日から学校を休んだ。

クラスの皆には忠告はしなかった。

授業中に教室で大人が弾け飛ぶところを想像して

僕は口の端を上げた。

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