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幽かな旋律

作者: ベル

僕は小さなアパートに住んでいる。


隣には古いけどおしゃれな一軒家がある。


一軒家には誰も住んでいない。


きっと昔はお金持ちの人が住んでいたんだろう。


そんなふうに見える。


誰も住んでいないのに僕が家の前を通るたびに必ず音がする。


ピアノの音だ。


他の人に聞いてみたが誰も聞こえないと言う。


どうやら僕にだけ聞こえているらしい。


不思議だ。


最初は怖さもあったが最近は楽しみになっている。


ピアノの綺麗な音を聞くと仕事の疲れが飛ぶ気がするから。


それにピアノの音が聞こえる以外は特に変わった事はないし。


数日後、大家さんに一軒家の雑草取りを手伝ってほしいと言われた。


一軒家が建っている土地は僕の住むアパートの大家さんが持ち主なのだ。


その土地を友人に貸してあの一軒家が建ったらしい。


バイト代も出すと言われたので僕は引き受けた。


雑草取りの日大家さんが熱が出て来れないというので僕1人でやる事になった。


「やるか」


気合いを入れて雑草取りを進める。


「〜♪」


しばらく雑草取りをしているとピアノの音が聞こえる。


「まただ」


音は部屋の中から聞こえる。


窓から部屋を見ると部屋の真ん中にグランドピアノが置いてある。


誰かが弾いている様子は無い。


「あれか...」


なぜピアノの音が聞こえるのかいつも不思議に思っていたので今日はチャンスとばかりに家の中に入る方法を探す。


「まさか玄関のドアは開いてないよな...?」


そう思いながらもドアを開けてみる。


すると開いた。


「ラッキー」


家の中に入りピアノのある部屋に行く。


やはり誰もいない。


それでもピアノの音はする。


周りをよく見てみるとピアノの近くに1冊のノートが落ちている事に気づいた。


ノートの表紙には日記という字と麻衣という字が書かれていた。


おそらく子どもの字だろう。


ノートを拾い中身を見てみる。


4月10日(水)


今日は私の誕生日


お父さんが誕生日プレゼントに前から欲しかったピアノを買ってくれた


来週からピアノ教室に通える事にもなった


とても楽しみ


そう書かれていた。


他のページにもいろいろ書いてある。


日記を読んでわかったのは日記を書いているのがピアノを弾くのが好きな麻衣ちゃんという女の子だという事。


「もしかして麻衣ちゃんが弾いてる...?」


そう思ったが今は確かめようがなかったので雑草取りを終わらせて部屋に戻った。


次の日、大家さんに雑草取りが終わった報告ついでに一軒家の事を聞いてみた。


大家さんの話だと大家さんの友人家族が住んでいたみたいだ。


その家族は3人家族で小学生の娘さんが1人いたらしい。


娘さんはピアノを弾くのが好きな可愛い女の子で家族3人とても仲が良かったそうだ。


でもある日、家に強盗が入った。


その日は麻衣ちゃんのピアノの発表会だった。


帰ってきたときに強盗にみつかり3人とも殺されてしまったらしい。


それから一軒家の土地の持ち主だった大家さんは誰も住まなくなった一軒家を取り壊そうとしたがピアノを運び出すと見えない何かに邪魔をされ家を壊そうとすると作業員が事故にあったりして邪魔をされたらしい。


大家さんは怖くなって今も一軒家を壊せず定期的に手入れをしながら残しているという。


その話を聞いて僕は一軒家の前に行ってみた。


するとまたピアノの音がした。


「きっと麻衣ちゃんだ」


ピアノの音がいつもより悲しく聞こえる。


ピアノを弾くのが好きな女の子が幽霊になって今でも弾いているのかもしれない。


大家さんに一軒家の話を聞いてから数日が経った。


僕は仕事帰りに一軒家の前でピアノの音を最後まで聞くのが日常になった。


今日もピアノを弾く麻衣ちゃんを想像しながら聞く。


麻衣ちゃんのピアノ聞こえてるよ、1人じゃないよって伝えたくて。


終わり



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