レポート42:決着
エネルギーの槍がドラゴンの逆鱗を貫き、その頑丈な鱗が仇となり、内部でエネルギー弾が跳ね返る。
吐血し、暴れる巨躯のエネルギーは乗っていた僕に否応なく降りかかるわけで。気が付けば体は宙に浮いていた。キリモミに吹っ飛ばされる中感じたものは怒りと殺意。そして、熱。
「ブレード!追い討ち!」
見えないままに叫ぶ。もはや声にすらなっているか分からない。しかし、うねる視界の端で、飛び出した赤い影。ドラゴンの砕けた頬に目掛けてフレードの拳が突き刺さる。
「よっと…君、やっぱり軽いね。もっと食べた方がいいんじゃないかい?」
「余計なお世話だ。」
受け止めてくれたウィーネを手で追いやりつつ、ドラゴンを見据える。
体内で暴れたエネルギーにより割れた鱗からは焔が吹き出し、殴られた頬は骨が露出しながら溶岩のような血が絶えず溢れ出ている。
突如咆哮をあげるとドラゴンの胸部が純粋な熱と光を発生させ、辺りに矢鱈滅多らに火炎を撒き散らす。
「マスター。ギアが、活性化しています。」
「自衛本能かなんかか…?」
「話が掴めんな!あれはなんだ!」
もはや狙いなどない。世界全てを焼き付くさんとする火に包まれたドラゴン…いやもはや、火の化身と化した存在。
「暴走状態だ。ここで止めないと…さすがにやばいか。」
「解析結果になかったのかい?」
「解析できたのはドラゴン本体だけだ。ギアに関してはモノリスと同じように解析不能物質。
こうなるのは予想外…だが。対処法だけはわかる。」
「…あの歯車か?」
火に包まれたドラゴンの胸部で一際強い光を放つそれ。火のエレメントを内包する歯車:フレア・ギア
「あれを…何とか外せれば。」
「だがどうする。俺様もカキュウも既にタメ技を使った。また5分持たせられる保証はないぞ!」
「モノリス。」
「…可能です。」
「話が早くて助かる。」
「君たちだけで伝わっても意味がないんだけどね?
どういう事か共有してくれないか。」
「モノリスはギアボックスみたいなもんだ。無理やりくっついたドラゴンよりも、モノリスの方が優先度は高い…はず。」
「なので、私があのギアに触れられさえすれば…」
「…それをすれば、あれは…父上は。止まるのだな?」
「……ああ。」
多くはいわない。肯定のみ。今あの様子を見て、何がどこまで止まるかなど態々言う必要も無い。
「…わかった。俺様の家族のしり拭い…手伝ってくれ!」
「ま、利害の一致だからな。
ウィーネ。変わらず援護を。モノリスの援護は俺がする。フレードはウィーネを。モノリスは絶えず水を出して。」
返事を待たず走り出すとモノリスも追従してくる。
火炎弾。盾で弾く。余熱で溶けた地面はモノリスが水を出し、ウィーネが操って冷ます。
もはやドラゴン足元の地面は溶解し、マグマと成り果てている。しかし、それに足を取られてドラゴンはもはやその飛行能力を発揮できない。
「マスター。流石にあれに接近するのは…」
「…僕の魔力を好きなだけ使っていい。一瞬だけなら…暴走の火力に匹敵する水量をだせないか?」
「魔力切れになりますよ…?」
「出し惜しみは無しだ。行くぞ。」
「…かしこまりました。失礼します。」
突如モノリスに、俗に言うお姫様抱っこの形で抱き上げられる。
「安定した魔力供給効率上昇のためです。ご理解を。」
「この方が楽まであるからいいよ…」
全身の脱力感。骨の髄から腹の底まで活力が全て抜け出して行くような感覚。それに比例してモノリスの腕のギアが回転し正面の空間に術式を刻み込む。
刹那、ゴッソリとなにかが抜け落ちる感覚とともに、伝説上の、水龍の様な勢いと量の水が一直線にドラゴンに放たれ、熱とぶつかり水蒸気を上げながらもドラゴンの熱を相殺するに至る。
それと同時。もうひとつの仕込。やった事は単純明快。鎖をモノリスに繋げ、反対側に盾を付けそれを水流に放り込んだ。それだけの事。
しかし、現実では到底ありえない勢いの水流を受ければその推進力はもはや重力をものともしない。
「モノリス…とれ…」
「…ッ…」
フレア・ギアに触れた刹那ギアが消滅。そしてモノリスにフレア・ギアが追加され。ドラゴンは活動を停止。地に伏せると同時に、魔力切れにより視界が暗転した。




