レポート39::火竜攻略会議
武装準備よし。能力の交流、よし。着々と、ドラゴンに対する備えを進める一同。
しかし、一つ心懸かりなことがあった。
「結局、ローブの男についての手がかりはなし...か。」
今回の推定犯人。いや、推定ではなくほぼ確定といってもいいだろう。その犯人であるローブの男についての情報が一切存在しなかったのである。
「どれだけ情報を隠蔽しようといくばくかの痕跡は残るはずなのだが。」
「後から全部なかったことにしたってよりか。まるで、もともと存在してなかったみたいな...」
「...学習した現代の常識では、こういった国の中心施設に関しては警備が厳しく、採用に関して身辺調査などが行われるはずなのですが。」
全員の視線がフレードに向くが、本人は肩をすくめるばかり。
「そんなこと言われても俺様は人事に関しては知らんぞ?」
「知っとけよ王族。」
「それは人事の担当だ。」
「縦割りがしっかりしてていいことです事。」
呆れたようにため息をつくと眉間に皺を寄せつつ、ウィーネが口を開く。
「だが、あの男...サラマンダー族にはどう見繕っても見えなかった。唯一...とは言わないにしろ...内部でも母数は少ないはずだ。素顔などは見ていないのか?」
「それがなぁ...どうにも思い出そうとするとぼやけるというか。そもそもそのような男がいたのかすらおぼろげになってくるのだ。」
「…記憶にすら?」
流石におかしい。いくらローブで身を隠していたとしても一切の記録を残さず、存在自体が希薄になるほどの認知阻害などあり得ない。
「...認識疎外の魔道具?」
「あり得ません。確かに魔道具は物に付与できる性質上そういった疎外はやりやすい部類です。しかしその反面、魔道具は自信の肉体ではないため、ロスが生まれやすく、魔力の消費量が多いです。記憶すら怪しくなるほどの認識阻害魔道具を常用していてはマスターのようなバカ魔力タンクでも1時間と持ちませんよ。」
「マスターに向かってバカ魔力タンクとはなんだ。」
「それで魔法の適性の一つでもあれば大魔術師ですよ。」
「そういうモノリスだって無適正だろうが。」
「私はいわば生きた魔道具です。適性などなくともわたしは生身で行使する魔術と同じように術式を発動可能です。」
魔道具の線は無い。少なくとも、現代の技術では不可能。なら他の線は、魔道具に近い別の技術。
「ならば、魔道具ではなく。魔術なのでは?」
「俺様のその線は考えたが、不可能ではないか?」
「ほう?何故そう思う。」
「顔を隠す手鵜戸ならとも買う、痕跡を残さない...いたことすらあやぶまれるような魔術は効いたこともない。もし存在してもかなり高度で魔力も相応に食うだろう。そんなもの、6種族のなかで最も魔術の適性の高いエルフ族でも講師不可能だ。」
あったことはないが、おそらく国交などで見分が深いあろうフレードの意見にウィーネすら黙りこくりモノリスも同感と言わんばかりに頷いている。
「まあ、いい。敵の正体がよくわかっていないのは確かに問題だが、まずは目下の課題からだ。作戦を立てよう。」
「まあ、そうだね。カキュウ君の武器はとりあえず完成したのかい?」
「ああ。抜かりない。」
…ただ一点を除いては。
「だが、一発撃つごとに5分くらいはチャージしなくちゃいけない。」
「長いですね。もっと短くならないんですか?」
「無茶言うなよ。そりゃ、魔力を熱源に変えて、ためる部分に直接触れて魔力流せばすぐだがストッパーがないから根こそぎ魔力持ってかれて死ぬ上に、その動力部も暴走して自爆するのがおちだっての。」
「安全に運用できるギリギリラインが5分ということですか...それなら仕方ありませんね。最初に一発...最初に行ったように不意打ちで当てるとしましょう。」
最初のときを思い出す。不意打ち+目と言う弱点。とは言えまあダメージにはなっていた。
「そのあとはどうする。」
「正直その場判断としか言いようがない。もちろん、俺が解析した技の予備動作は共有する。戦闘の中で解析が進めばより盤石になるだろう。」
「無茶な事を言う貴様!?」
「仕方ないだろ。細かい順番を決めてもイレギュラーが起きた時の対応が遅れるだけ。」
「とはいえ…いや…それもそうなのだがな??」
「だから、ポジションだけ決めておく。」
紙を広げ、ある程度のことだけをまとめて書いておく。
「大雑把だな?」
「直接触れられればもっと早く解析も進むのにな。火炎弾やら火炎放射が触れた一瞬だけじゃ限界がある…」
「あれに?直接?叡智の者は大バカ者であったか!!」
「うるせえよ。お前も大抵バカだろ赤トカゲ。」
悪口の応酬。バカにしたような一言に吐き捨てるような一言を返し、少し悪くなる空気。
「ケンカはそこまで!!これ以上やるなら二人ともお仕置きだよ!!」
「わかってないな~ウィーネは。」
「この程度じゃれあいというものだ!覚えておくがいい!」
「...なんなんですかこの。」
「気にしないでおこう。カキュウ君も同年代の、同性のお友達ができてうれしいんだよきっと。」
「...なあ。なんだか女二人からの視線が温かいんだが。」
なんだか姉と妹がいたらこんな感じなのだろうか。と、思いつつあると肩にぽんと手が置かれる。
「あきらめろ!...まあそれはそれとして奴の火力にはどのように対処するのだ?あのままでは接近することすらかなわんぞ。」
「それについてはうちのモノリスが無限に水を出せるからそれをウィーネが操っることで早大する。一応炎に体制がある盾なんかもあるが...数がない。今作れているのは4つだけだ。それ以上となると火山に行ってまたカメの甲羅を取ってこないとな。」
【倉庫】から取り出した盾。亀の甲羅を加熱しながら絶妙な力加減で折ることで5~6角形の甲羅のパーツに分離。それを盾の形に効率よく再配置することで1つの甲羅を2つの盾にする事に成功。したが、時間もかかる上にあの日の落下を考えると二度と火山には行きたくない。
「...いっそ少数精鋭にした方がいいかもしれません。私やウィーネも大人数にカバーができるわけではありませんし。」
ナイス、モノリス。これで火山に行かなくていい。
「モノリス君のいうとおりだ。あの火力を防ぎつつ十分なダメージを与えることができる人員となると限られる。さらに言えば、まだドラゴンに隠し手があるかもしれないしな。」
「...なら俺と、フレイドでためて大技連打。ウィーネとモノリスでサポート。これでいいな?」
「異論ないよ。」
「俺様の拳が輝くときだ!」
「合理的選択ですね。」
「...じゃあ。これをもって作戦が意義は一旦終わりとする。火竜の行動パターンを共有するから各々頭に叩き込んでおくように。」
さて、話しながらまとめた情報は結果的に7:10くらいの大きさの紙に裏表びっしりと書き込む羽目に。
…さて、見やすいように書き直して、3人分作っておくとしよう。




