エピソード36:人為的火山弾もどき
あるきはじめてどのくらいがたったか。依然として光明は見えず、たた悪戯に体力を消耗するのも如何なものかと思えてきた。
横にいるウィーネも当たりをキョロキョロと見回したり、近づいては離れたりと落ち着きがない。
「…少し休むか?」
「いや、そういう訳にはいかない。一刻も早く出口を見つける必要もあるわけだし……」
「…そうか。休憩が必要なら迷わず言えよ。別に時間に追われてるわけでもない。」
「君こそ。ちゃんと報告するんだよ?」
「善処するよ。」
まだ問題はないが、だんだんと覚える違和感。
…地面が、揺れている。石が振動している。
「なあ。」
「いい、言わなくていい…」
この時ばかりは2人の心が揃っていたのだろうと確信できる。少し困ったような顔をして互いに見合い、
せーのと声を合わせて言う。
『またか。』
そして、ドラゴンの咆哮が聞こえた。
「ちょっと楽しくなってきたかも!!」
「そんなこと言ってる場合かい!?走る走る!!」
崩落ごときで死なないとは思っていたが存外早いお帰りに苛立つ今日この頃。モノリスはいかがお過ごしでしょうか。
「でもそろそろ…苛立ってきたな。」
「…君?変な気を起こすなよ??素直に逃げろよ??」
「だってさあ…ムカつくじゃん?ずっと…追われっぱなしってのはさあ?」
跳躍、反転して着地。そのまま追いかけてくるドラゴンの口の中に放り込むは、火薬。
吐き出しかけた火炎により着火されたそれは、口内で炸裂。大した有効打にはならないが…
「ヘイトは稼げたみたいだなぁ?」
「あーもう君はまた…そういう事をする!」
「大丈夫。前ほど苦戦は…しない!」
何度も攻撃を受け、触れた相手。100%ではないが60~70%程度の解析はできている。
息を吸い、上を向き、息を止める動作。
「火球!」
「…っ!」
顔を振り下ろしながら吐かれた火球を過求は右に。ウィーネは左に跳躍し、回避。
ドラゴンが向いたのは…過求の方向。
「ちっ。俺しか狙う気はねえってか!?でも…っ」
再び息を吸う動作。今度は地面を爪で掴み、踏ん張っている。対抗行動は、亀の盾でのシールドバッシュ。
読み通りに放たれた火炎放射を割りながら進む。
火炎放射が止み、視認。右への重心移動。左手が浮く。左腕の振り下ろしの軌道をすり抜ける。
左、左。尻尾を跳躍で回避。右の振り下ろし。しゃがんで回避。連続で回避を決めてる時に轟音の中で声がする。よく通る声だ。さすがは団長。
「カキュウくん!」
「何!」
「上!!」
声に従うままに上、即ち天井を見る。特に一見すれば変化の無い天井。なにがあるのか。…いや、違う。
炎が揺らいでいる。吸い込まれているように燃えている。
「なるほど…ね!」
引っ掻き攻撃の間合いの外へ。散々避けられて引っ掻きの意味がないと悟ったのか火竜はそれを見て上を向き、息を吸う。地面へのふんばり。火炎放射の予備動作。
「ウィーネ!3秒だけ任せる!」
「…分かった!」
正直。リスクの塊。あまり取りたくない手段。だが…こいつの火力は利用して余りある。
修理中のパイルバンカー付きの義手。未完成の対ドラゴン兵装を取り出す。放たれる火炎放射を確認するより早く走り出し、スライディング。
「【水辺の女王】」
掠める火炎放射の熱を水の膜がカットして、地面との摩擦を減らして顎の下まで滑り込む。
「方向は斜めに。」
顎に義手を添えて、暴発させる。
壊れることを考慮しなければドラゴンの、鱗を貫かないにせよ体を逸らすくらいはできる。
ドラゴンの関節の稼働限界は、真上向き。火炎放射は天井に向けて放たれ岩を穿ち、溶かす。
だが、それでは足りない。下を向かれるよりも早く二の矢を放つ。腹部に対ドラゴン兵装を突きつける。
不完成とはいえ、威力は本物。
「今度、名前付けてやらねえとな。」
魔力の単純な放出。鱗を貫くには至らないが腹部を圧迫はできる。否応なしに一気に放たれた火炎は天井を溶かし、その炎を押し返すようにして、陽光が差し込む。
「やはり。空間があったか。」
「よく気がついたな。」
「以前洞窟で日を使った時に、空間のある方に向かっていたことを思い出してな。」
「さすが、経験豊富ですこと。」
火炎を吐き切ったのか高温の爪による引っ掻き攻撃やしっぽの薙ぎ払いばかりしてくるドラゴン。それは既に見切っている。
「じゃあな。ドラゴン。てめぇの息子にはよろしく言っといてやるよ。」
「…気が重いがね。」
【倉庫:解放:神代ゴーレムの火炎腕】
取り出したるは、先程焚き火代わりにしていた腕。
「魔術は使えんくても…魔力は沢山あるんでね。とんと喰らえやゴーレムハンド」
火の出るほうを下向きにしてその上に乗る。
「ウィーネ。こっち。」
手を取り、抱き寄せるとウィーネの抱きしめる力が少し強くなる。まあ、落ちそうで怖いのはわかる。
「行くよ?」
「あ、ああ。」
一気に魔力を流すと大量の火炎が溢れ出し、推進。上へ上へと進んでいく。
「下にいるドラゴンこれで焦げてくれねえかな。」
「さすがに無理じゃないかな。」
「まあ、だろうな。少しでも焼かれる側の気持ち知ってくれりゃあいいのになぁ。」
ぐんぐんと上がる高度。冷えた体が気温で温まって行くのを感じる。
「…ところでカキュウくん?」
「なんだい?ウィーネさんや?」
「これどうやって止まるんだい?」
「……神に祈ろうか。」
後に、これは噴火脱出などと呼ばれと仲間内の笑い話になるのは少し先のお話。




