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レポート21:火都に着いて

「マスター…!」

「…モノリス。」

しばらくして物音で目を覚ますと、向かいの扉から出てきたのはモノリス。追ってバツの悪そうなウィーネも出てきた。

「…単刀直入に聞いていいか?」

「…ああ。どんな事でも答えよう。」

「僕の左腕は無くなったのか」

たった一言だった。しかしその瞬間、この部屋の中でのみ少し気圧が上がったような気すらした。とても言いずらそうな2人。だがそれも当然と言えば、当然だろう。

「まあ、そんな気はしていた。肉塊に侵食され、ドラゴンブレスでウェルダンされた挙句焼けた鉄でコーティングまでされれば使い物になるわけが無い。」

「…全力は尽くしたのですが……」

「表面は鉄が、浅い層は完全に炭化…深いところも肉塊に変わっていて…熱によるものかそれともたまたまなのか骨しか残っていなかった。」

「そうか。骨は残ったか。」

「…その…なんと言ったらいいやら。」

「いい。気にするな。」

まだ落ち込んでなどいられない。それに収穫と課題は目白押しなのだから。右腕だけで何とか姿勢を整え、気持ちだけ腕を組む。

「まず、ここに至るまでの経緯を整理しよう。」

「…はい。ドラゴン撃退後、マスターは気絶。

乱入したサラマンダーの提案によりマスターを連れ、火都サラマンディアへ。現在大使館の一室を間借りしている形になります。」

「そうか。ウィーネからはなにか?」

「そうだな…その人から君が目覚めたら会いに来るよう言われている。だが…名前も場所も伝えずに行ってしまった。きっとバ…単純なのだろう。」

「なるほど、脳筋バカサラマンダーに助けられた…と。とりあえず経緯はわかった。

さて、話は変わるが2人とも気がついたかね?」

「…いいえ。なんのことか」

「もっと主語を具体的にだね。」

「あのドラゴンが、火のモノリスギアを持ち合わせている。」

「あーなるほど。だからあんな火力が出ていたのか…」

「そう言われれば納得ですね…」

「「はい?」」

2人して同じ反応。ずいぶんと仲の良いようでお兄さんとしてはニコニコだが、観察眼はまだまだのようで少し心配にもなる。

「あのドラゴンが飛び去る瞬間。胸部にモノリスギアらしき代物を確認した。詳細なところは分からないがほぼ確実と言っていいだろう。」

「あれが…ギアを?」

「…取り出すには勝つ他にない……んだよね?」

「胸開いたらポーンって出てきてくれれば良いけども…その胸開くために倒さなくちゃいけないのは事実。」

「勝てるんですか…?あのドラゴン…に。」

少し震える声のモノリス。

圧倒的暴の化身に下手をすれば全員丸焦げになっていたのかもしれないのだから無理もないが、やらなくてはならないのは事実。

「勝つんだよ。そのためにもまずは…助太刀サラマンダーに挨拶に行かないとな。」


「よく来たな!!異国の民よ!!」

「うるっさ…」

「こら、カキュウくん!」

「体感室温2度上昇…」

まさかのドアの前で出待ちしていた助太刀サラマンダーに連れてこられたのは火都の中央にある建物。そこで胸を張り言われた第一声。ただひたすらに声がでかい。うるさかった。

「コホン…貴方が我々を助けてくれたと、妹から伺いました。お名前をお伺いしても。」

「我が名はフレード!この国の王…代理だ!助けたことは気にするな!!我々としても君らに助けられたのだからお互い様だ!!借りは返した!!」

「なら互いにそうしましょうか…」

目の前にいるのになぜ大声で話すのか。これが分からない。しかし快活で話がわかりやすいため案外気にならないものである。

「…だが、君の左腕についてはその…残念であったな。」

「お心遣い感謝します。むしろあれに相対してこの程度で済んだ方がまだ、良かったと言えましょう。ですが、あの様な生き物は今まで見た事がありません。一体あれは、なんなのでしょうか。」

「うむ!我々にもわからん!!」

「…はい??」

「突如この国に出現したのだ!どこから来たのかもどのように来たのかも全くの不明!ただ、この国を焼き払おうとしていた事だけは確実でな…突然のこと故に我々もその場しのぎでしかない防戦一方であったが君たちが陽動してくれたおかげで反撃の隙をつくれた。感謝するぞ。」

「…なるほど。」

あれの正体についてはなんの手がかりもなし…文献においてもあそこまでの火力を持つものは記されていなかった。つまり…外の肉塊の世界、あるいは火のモノリスギアがなにか作用した結果の産物なのだろう。

「君は…先程カキュウと呼ばれていたな!

そしてその横のは…確かヒュマリアの」

「お久しぶりです。」

「…面識が?」

「ヒュマリアとサラマンディアは近いから結構交流が多いのだよ!」

「…ちなみに他にはどの国と」

「今、交流があるのはヒュマリアとノームの国である土都ノムニス程度だ。」

「…あと2つ。たしか…風とシルフの国、シルフィード、木とエルフの国エルイドについては。」

「肉災以降一切の消息が掴めていないらしい。

父上が言うには独自のコミュニティを築いたのではないかと言っている。」

「…なるほど。」

「まあ細かいことは置いておいて、ここにしばらく滞在するのだろう?ならば、大使館は自由に使うと良い!」

「…いいのですか?」

「ああ!何せ大使館言えどこんな世界では人もこないからな!使う人が使えばいいのだ!」

「…ではありがたく使わせて頂きます。」

未だに直近の課題も、未来の課題も目白押しだがとりあえず拠点は手に入ったことは喜ぶべきだろう。

大使館に戻り、幸い風呂やキッチンなどを除いても相当な部屋数があったため各々自室を割り振り、自分の部屋のベッドの上で道具を確認する。

水都出発前に溜め込んだ素材、まず薬の類はかなりある。しばらくは大丈夫だろう。

次に金属資源。これは、はっきり言ってほぼ無くなった。あれだけ景気よくとかされては当然だが、残ったのは虎の子の神代の素材のみ。

だがこれも加工方法が分からないため直近では役に立たない。

次に鉱物資源。鉄以外の石やらなんやら。

これは元々そこまで用意していなかったのもあり枯渇。

その他サバイバル系アイテムに関しては、まるまる残っているためのよしとしよう。

しかしながら事前に作っていた武器に関しては…

・劣化狙撃銃 完全破壊

・シールドバンカー 融解し腕とともに消失

・大盾 同じく消滅

「また…作り直さないとな。せっかくだし腕の代わりになるものを。」

机に手帳を広げとりあえず必要なものや現在の状況など、様々メモをしストレージに仕舞い直す。

「はぁ…」

そのままベッドに横になると気絶していたにも関わらずすぐに瞼が重くなってきた。

明日は…何をしようか。いや、それもまた明日考えればいいだろう。

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