レポート18:野営について
幸いテントを設置し焚き火をするだけの場所はあったのは救いだろうか。安全区域で焚き火を囲い、僕たちの目的を話す。
「…世界の再構築……これまたとんでもないスケールの話が出てきたものだね。」
木製のコップに入れたお茶を啜りため息をつく。
「だからあのような事を…」
「それを知った君はどうする?今後、似たようなことをする可能性もあるわけだが」
「…どの道、あの国に帰る選択肢はない。
ならば、多少外交などに心得のあるものがいた方が都合がいいだろう?」
「貴方なら帰れるだろう。騎士団長なのだから。」
「襲撃があり。その日から行方を眩ませている騎士団長。戻れると思うかい?」
「まだ一日しかたっていない。外に追跡しに行き、見失って帰ってきたとでもいえば特にお咎めもないと思うが。」
「…事態はそう単純じゃないのさ。」
「そういうものなのかねぇ…?」
茶をすすり、ほっとため息を着く。
「そういう君はどうなんだい?」
「何が?」
「この旅は、君の本意によるものなのかな?」
「何を言うかと思えば。当然の事を聞かないでおくれよ。」
火の爆ぜる音の中。焚き火に放り込んで置いた鉄の箱を木でつついて取り出すと蓋を開ける。
ホクホクと湯気を立てる芋。煙が空に登り、夜の霞と同化する。輝く星々。一際強く輝くものや決して強くは無いが集団で輝くものなど様々。
芋にバターを乗せると皮で包んで箱をウィーネに渡し、残った木の枝を焚き火に放り込む。
「本意でなければあんな命の危険があるようなことをしないさ。」
「…そうか。なら、いいんだ。」
「気になる言い方しやがりましてねえ。どうしてそう思った。」
「…いや、話を聞いてね。モノリスくんは分かる。彼女はそういう目的で作られたのだからその目的で動いてしかるべきなのだろう。」
「…そういえばモノリスどこいった?」
「既にテントで寝ているよ。」
「子供か何かか…」
「…そういう君は。どうにも理由が分からない。
考古学、と言われればそれまでなのだろう。
過去を求めるのが仕事なのだから、ついでに過去を知れるのならそれはそれで魅力的。…だが、それだけの事であれほどの大事にするかな?」
「…国王の死は予想外だった。少しの爆発と多少火事になればその対応に追われて気をそらせるとは思ったがね。まさか…その騒ぎに乗じて殺しまでする輩がいるとは想像もしなかった。」
「…やはり君はやってないんだね?」
「理由がない。国王を殺さずともギアは得られた。」
「…確かにね。その通りだ。」
立ち上がり大きく伸びをするとテントに向かう。
「見張りの交代までに眠たくなったりしたら気にせず読んでくれていいからね?」
「なればその分早く寝たまへよ。」
「ああ。おやすみ」
テントに入って行ったウィーネを横目にまた火にくべた鉄の箱を突っつく。
こんなことなら人数分のテントを買っておくんだったという気持ちと、そんなにテント広げる場所ねえよという自虐もそこそこに陶器の瓶に沸かしたお湯と茶葉を放り込み、お茶をすする。
なんでも眠気覚ましの成分が多く含まれているとか。便利なものもあるものだ。
「…茶が美味い。」
我ながらジジくさいことを言っているなと失笑がわき出る。しかし許しておくれ。考古学とはすなわち過去を知る学。過去の話し方に引かれるのも仕方の無いことなのである。
「…いやはやしかし……僕の本意…か。」
過去を知りたいというのは嘘ではない。しかし…真意でもない。それを見透かされるとは思わなかった。
「……神の時代。何があったのか…それを知れば…。」
突如なる破裂音。水蒸気で押し上げられ飛ぶ蓋。崩れる焚き火と押し寄せる大量の煤と煙。
「けほっ…ああ、やらかした。芋の水分でも溜まったのか…?」
焚き火と芋の始末、焚き火の起こし直しと…考える時が遠くなるなか、夜は変わらず深けていくのである。




