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レポート17:国外の危険性について

水都を立って一日。すさまじい湿気と暑さの中をひた進む。

「まだ一日だが...思ったよりかは楽な道のりだね。」

「...ここは未だ高低差も少ない。それに本当のところはもっと別だ。」

安全地帯の外。湿気、気温、食料不足、水分不足。触れるだけで死に至る肉塊。

それだけでは終えられない。肉塊の世界の真の危険性。

「マスター。前方から敵正反応!」

前方から走ってきたのは三匹の赤い狼。と形容するのは果たしてただしいのか。

「今回はオオカミか。」

前に1匹後続に2匹。

「後ろは任せた!」

「かしこまりました。」

「こら!一人で勝手に!!」

ウィーネさんの制止は無視して先頭の狼に突撃する。それを見てかは分からないが先頭の一匹が大きく跳躍し前足を振り下ろす。

直前にバックステップによるフェイントを加え前足を回避。

振り下ろされた前足は地面を抉り、土や石や、肉塊を巻き上げる。

「っと」

外套の陰に隠れ全てを防ぎ切る。しかしそれは視界が塞がることを意味するわけで。

知能が高いのかはたまた本能か。どちらでもいいが…

狼はそのまま食らいつこうと大口をあけ飛びついてくる。想定通りに。

「はい、おつかれ。」

外套を退けた先、向けられているシールド変形、パイルバンカー。口内から体内を貫通されたオオカミはそのまま地面に伏せ、ピクリとも動かない。

「…さてさて。2人の方はどうかな?」

ウィーネは考えなしと言ったがちゃんと僕だって考えている。つまるところ、モノリスとウィーネさんの連携を見たかった。

見てみれば案外悪くない。

前衛をウィーネさんが。後衛をモノリスが担当。

騎士団長ということもあってか後衛を守る戦い方は心得があるのか、上手くモノリスの方にいこうとする狼のヘイトも自分に向けながら敵に着実なダメージを与え、生まれた隙はモノリスがギアで発生させた水を用いてレーザーやら槍を生み出して援護。

その攻撃の残骸を…あれはウィーネさんが操作しているのか。再利用して再び攻撃や隙を作る一手として使っている。なるほど、水都の騎士団長ならば水の適性があってもおかしくないか。

一体の頭を水の槍が貫き、もう1体を剣で切り伏せ初めての3人での戦闘は幕を閉じた。

「お疲れ様。よく頑張ったね。」

「…君も、見てるだけでなく手伝ってくれればもう少し早く終わったと思うんだけどな?」

「すまないね。モノリスギアの力とウィーネさんの力を見ておきたかったんだ。」

「以前も言ったが…ウィーネでいい。」

「…まあ、今の間柄なら遠慮することも無いか。

次からそう呼ぶ。」

「そうしてくれると嬉しいかな。さん付けだと距離を感じる。」

「マスター。ウィーネさ…ウィーネ。安全地帯を見つけました。1度、休息をとりませんか?」

モノリスの示す先を双眼鏡で見てみると、たしかに虫にでも食われたかのように正常な景色の場所がある。

少し移動しその中に入ると肩の荷がおりた様な感覚と不思議な開放感を感じる。

本当に肩の荷をおろし大きく背伸びをすると、不思議と背筋が伸びたような気がしてしまう。

「…何をしてるんだい?」

ロープで括って持ってきたオオカミの死体にしゃがみこんで作業をしているとウィーネが話しかけてくる。

「オオカミを解体しています」

「なんでそんなことを…?」

「なにかに使えるかもしれないでしょう?少なくとも武器の素材には。あと…こいつらの特性も利用できる。」

「特性…?」

「当たり前すぎて見落としがちですが…こいつら肉塊に生身で触れても平気なんですよ。」

爪や牙を抜く時に、歯や爪の間の肉塊に気をつけて取り除く。

「その理由が分かれば、もしかしたら肉塊を克服できるかも……なーんて思ったり。普通の物品もある程度触れて平気とはいえそんなに長くも持ちませんからね。こいつらの皮などで保護すれば長持ちするんですよ。」

モノリスに死体を洗ってもらい、肉塊の落ちた毛皮をナイフで剥いでいく。

本来ならなめして加工までしたいところだが、そんなに悠長にはしていられないので、靴のそこに皮をぬいつけ、一旦倉庫(ストレージ)に使わないぶんはほうり込んでおく。

「生物の解体までできるのか。」

「まあ。最低限程度だけどね。」

「最低限だとしても十分な腕前さ。」

「こいつらの肉が食えればもっと活躍できたかもしれない技能なんですがね。」

「食べられないのかい?」

「ええ。かつて試したバカがいましたが、晴れて化け物の仲間入り。ミイラ取りがミイラになる結末に終わりましたよ。」

「そうか。残念な話だ。」

「外の肉塊が食べられるようになれば食糧問題なんて気にしなくてよくなるのに。」

「残念ながらこれらの肉塊はこの世界のシステムに存在しない物質です。いかなる手段を用いても難しいかと。」

「...なぜ君たちは。そんなことを知っているんだい?」

忘れていた。と言えばその通りだろう。僕とモノリスからしてみればごく当たり前の情報で。

だからこそ。気が緩んだ。

「教えてくれ君たちのことを。」

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