レポート15:壁の越え方について
振り下ろされた剣を右に転がりながら回避しギアを回収。とりあえず破けていない部分のポケットにしまい込む。
「なぜ君が…国王を!」
「僕じゃないんだがね。」
「よしんばそうであったとして国宝の破壊及び窃盗は重罪だ!」
「それはその通りだからぐぅのねも出ないんだよな。」
勢いをつけての袈裟斬りを盾で弾きその勢いのまま蹴りを入れる。
しかし鎧に蹴りの効果は薄く逆に足を捕まれ押し倒される。
「あの爆発も君の仕業か。」
「それは…まあ、うん。」
「妹までも巻き込んで…!いや、2人とも共犯なのかな。」
「どちらにせよ、僕を捕まえる気なのでしょう?」
「当然だ。国王暗殺の犯人を逃す訳には行かない!!」
「…そればっかりは否定させて貰いますよ!
【倉庫】解放!!」
ストレージの仕様のひとつ。
ストレージからものを出した時、それに重なる物体は押しのけられる。
出したのはただの水袋。しかしそれでも押しのけるのには十分。突然の反発力で体がういたウィーネさんの胸当てをつかみ両脚で腹部のアーマーを蹴りあげる。
変則的な巴投げ。
「がはっ、」
突然のことに受身を取れず鎧が床にぶつかる轟音と背中をうちつけ、咳き込むウィーネさん首元に盾の端を押し付け押し倒す。
「良いか。確かに国宝の中身を盗んだのは僕だ。
今回の爆破テロも僕が原因だ。だが…国王暗殺だけは違う。あれの犯人は、大臣と呼ばれていた。」
「大臣…?嘘だ、いやしかし…信じられるわけが無い。本当ならなんの大臣かはわかるか。」
「…知らん。戦争がどうの言ってたが……」
「戦争…」
「団長!!」
突然降り注ぐ火の矢。
「っ…くそったれが!!!」
コートを広げ盾で咄嗟に弾くが魔術師の時と同じように回り込む火や伝わる熱までは防げない。
「巻き込むのも上等なわけか。巻き込むのも上等なわけだ。」
「え」
「っ…」
四方に広がる出入口からもなだれ込む兵士。
さすがに、分が悪い。
360゜包囲されたとあれば後行ける場所など少ししかない、
そう。
「宙だ。」
モノリスギアの仕組みについて、ずっと考えていた。
いくら神の作りしものとはいえ、無からリソースを生み出せるのだろうか?
答えはNO。絶対的に何かしらのリソースは必要。ならそれはなにか。考えた末にたどり着いた答えは大気中の魔力。
ならば、ならば。大気中程度の微細な力で国を巡る間に蒸発するであろう水の量を賄えていたのなら。
「適性ないけど魔力量だけはいっちょ前の僕の魔力。持ってけ神の歯車!!」
ギアを取りだし地面に向けて魔力を流し込む。
手から僅かに浮遊した水のモノリスギアは。高速回転し濁流がごとき勢いで水を噴射した。
人ではおよそ耐えきれぬ水の勢い。周りを取り囲んでいた騎士達は団長を除いて押し流され、かく言う僕も押し出される水圧で骨がミシミシと軋む音がする。さながら気分は花火玉。
いや、噴射で飛んでいるのだから文献あったミサイルなるものだろうか。傍から見れば月光を浴びて煌めく流星のようにも見えるのだろうが、本人としては空気の重みと腹部への噴射でくの字に折りたたまれる拷問。はるか彼方の夜空まで吹っ飛んだ末は城外ホームラン。堀すら超えて水都外壁付近に不時着した。
「マスター!」
大急ぎでかけや寄ってきたのはモノリス。
そりゃあれだけ目立ったらすぐに駆けつけられるか。
「マスター!容態は!」
「少し…まずいかもしれない」
想定外の圧力と協力な空気抵抗か何か。
単純に、最低でも筋肉に。場合によっては骨までダメージを食らっている恐れがある。
「モノリス…受け取れ」
「モノリスギア…確かに受け取りました。【兵装展開】」
モノリスが肩まで覆うガントレットのような武装を展開すると手の甲に縦に設置…内蔵された歯車がネオンブルーに発光し回転する。
「…水のギアの力が内包されました。やりましたね。マスター」
「ああ……その前に…早くここから離脱するぞ。
恐らくそろそろ」
「…私が来る頃かい?」
「その通り…」
想定よりも早い。他の騎士の気配がないことから察するに恐らく一人で馬を飛ばして来たのだろう。
「マスター、戦闘許可を。」
「…モノリス。お前じゃ、勝てない。先に外へ」
「勝手に行かせると思うのかい?」
「無理やりにでも、押し通る。」
痛む体にムチを打ち左手をほぼ地面につけるような形での前傾姿勢で騎士団長を見すえる。
チャンスは一瞬。それを物にできなくては勝てる見込みはない。
体の右側に剣を回し、体の影に剣を隠すようにした構え。前方への体重移動。右足が浮いた。
予測。向かって左側からの水平斬り。次点で袈裟斬り。盾を左に持ち替えての迎撃体制をとる。
予測通りに左側から袈裟斬りの形で振り下ろされる剣。タイミング、完璧。
剣の側面を弾くように振るった盾は空を切る。
「な、タイミングずれ……」
「残念だったな。」
予想の外の奇策。袈裟斬りの形、そこから剣から手を離しそして、抱きしめるようにして押し倒される。
「くっ…」
生け捕り狙いの可能性を排除していたが故の想定外。本来ならばすぐにでも反撃するところだが、既に体は限界を迎えており上手く力が入らない。騎士団長が腹部に手を添える。
そのまま気絶させるのかとも思われたが、次にやってきた感覚は予想外のもの。癒し。安らぎ。
「なにをして……」
「…私は。君をかなり君のことを好意的に見ている。そんな君が、意味もなく王を暗殺するとは思えないんだ。」
患部に手をふれ治癒の術式を施していくウィーネさん。
「…うちの騎士団いえど。味方を巻き込むような真似は、本来しない。まるで…2人ともまとめて抹消しようとしているように感じた。」
「抹消…王の死体の目撃者だから?」
「それだけではないかもしれない。
だが、君が王を殺した疑いがあるのも事実。だから……私が君たちの旅の顧問となろう。」
「はい?」
何を言ってるんだこの人は。
「妥当な判断だろう。君たちは少なくとも罪人ではあるわけだし、王暗殺の容疑もある。
それに…知らなかったようだが水都の民が国外へ出るには同伴が必要なのだよ?」
「いやそれは長期間かつ、また戻ってくる場合の話であって完全に国外へとでるのなら不要なはずでは。」
「あーもうつべこべうるさいな君は!!
いいから私を同行させろ!!さもなくば今ここで捕縛する!」
「…はぁ…モノリス、いいか?」
「マスターの意向に従います。」
「しかたがないか……よろしくお願いしますよ。」
ウィーネさんの手を取り起き上がる。
なんだか奇妙なことになったが、まあこれもひとつの形として受けいれるとしよう。




