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レポート12:騎士団長について

目が覚めると見知らぬ天井だった。

「…定型文として言うべきだろうか」

「おや。目が覚めたかい?」

聞き馴染みのある…と言うほど聞いてもない声。

体を起こし目をやれば剣の手入れをしていた騎士団長ことウィーネさんが剣を仕舞いこちらに体を向ける。

「どのくらい寝てました?」

「君が…姫様を救い出して眠ってしまってから大体半日くらい。現在は次の日の昼前だよ。」

「……そうですか。」

またモノリスが不機嫌になるだろうか。いや…流石に今回は情状酌量の余地ありとして欲しいが。

「さて…早速だが、君に言わなければならない事があるね。」

そう言うと胸に手を当て深々と頭を下げる。

「この度は、多大なる協力及び姫様の救出に深く感謝する。」

「そんな言われるような事でも無い気がしますが。」

「いや、とても重大な案件だったのだよ?

それで、国から褒賞が出ることになっている。可能な範囲で希望を叶えるそうだ。」

「…それはなんとも……間の悪い話ですね」

「というと?」

「…以前外での仕事を生業にしていると話しましたよね。その関係でここを出ることにしたんです。

ですのでなにか貰っても無用の長物と言いますか…」

「なるほど……とはいえ恩人に何もしないというのもこちらもメンツやらなんやらある訳で…」

「困りましたね。旅の道具も既に揃えてありますし…」

「なら…1度保留にするというのはどうだろう。

旅に出ると言っても今日明日の話ではないのだろう?」

「そうですね。思いついた時にでも伺いましょうか。」

「そうするといい、もしかしたら思いがけず必要なものがあるかもしれない。

さて…もう一つ本題があってだね。」

「はい?」

「姫様の無事を祝って…という名目でパーティをするそうでね。そちらに君とその後家族を招待したいのだが。」

「そう言う話なら…喜んで、お受け致します。」

「良かった。これまで断られてしまったらどうしようかと思ったよ。」

「連絡なしの朝帰りの機嫌取りも必要なので渡りに舟…ちょうど良かったですよ。」

「そうか。日程などについては後々伝えるとして……体の方は大丈夫かい?」

「はい。まさか火傷まで癒せるとは思いませんでしたけどね。」

「我が国は水都と言うだけあって優秀な水の使い手が多いからね。」

「確か水は回復や支援などが得意な属性でしたか。通りで。」

「…君は、どの属性が得意なんだい?」

聞づらそうに切り出すウィーネ団長。

「お恥ずかしながら、無適正なんです。」

「それは…すまないことを聞いた。」

「いえ。その分接近戦は得意ですからカバーできる人さえいれば何とかなります。」

「なるほど。」

「団長さんは何がお得意なんですか?」

「私は…水だよ。」

「流石は水都の騎士団長。と言った所ですか。もしかして治癒も貴方が?なんて…」

「その通りさ。恩人にもしもの事があっては困るからね。」

「冗談のつもりだったのに…まさかほんとにそうだとは。」

「それに、君とは約束があったからね。早く回復して欲しかったのさ。」

「なるほど。貴方はなかなかの戦闘狂とお見受けした。」

「幼い頃から騎士団と混ざって訓練していたからね。格上や強そうな相手とは手合わせしたくなってしまうのさ。」

「それは…ご期待に添えるかどうか」

「私はとても楽しめそうだと思っているよ。なにせ…あの魔術師を1人で倒してしまったのだから」

「…そういえば、奴はどうなりました?」

「現在協力者などについて聞き出している最中だ。それが終わり次第、処刑することになっている。」

「まあ、国家転覆とほぼ同意義の行為ですからね。妥当か。」

「ああ。というわけでぜひ手合わせを。」

「何がという訳でなのか分かりませんが…まあいいですよ。どうせもうモノリスは不機嫌だし」

「それは…私からも謝ろう。」

「そうして貰えるとありがたいです。」

そうしてウィーネ団長に連れられやってきたのは騎士団の演習場。

訓練用に刃が潰れた槍や片手剣。大剣などが壁に設置されたラックにかけられておりその近くのベンチでは休憩中の隊員が各々腰かけている。

「団長!お疲れ様です!」

立ち上がり敬礼しようとする団員を手で制すると柔らかい笑みを浮かべる団長さん。

「いい。訓練で疲れているだろう。しっかり体を休めろ。」

「団長、そちらの方は...」

「君たちも話には聞いただろう。姫様救出の第一の功労者だよ。」

「貴方が。」

羨望のまなざしを向けて来る団員二人。目的が目的なだけに若干胸が痛いが表には出さずに愛想笑いをしておき、訓練用の武器の中から手に合うものや重量などを吟味し選択する。布で武器を手に括りつけ、中央の円形の訓練のスペースに入ると団長さんも遅れて向き合う用にスペースに入る。

さながら昔の文献にかかれていた剣道のようなものだろうか。

「君は褒められるのが苦手なようだね。」

「褒められるような相手がいませんでしたから。」

「師匠などもいないのかい?」

「ええ。完全に我流です。」

「我流か...それは、あまり褒められないね。」

「というと?」

「我流は本人のライフスタイルに適応しやすい反面、本人も気が付かないような大きな隙や欠陥がある可能性がある。誰か実力者にフィードバックしてもらわないと命を落とす原因にもなりかねない。」

「なら、そのフィードバックお願いしますよ。」

「ああ。君は何を使うんだい?」

「小さめの丸盾と、短剣ですかね。」

「軽量で取り回しのいい武装だね。」

「団長さんは...ごく普通のショートソードですか。」

「やはりバランスのいい武装の方が対応できる範囲が大きいからね。」

「では...行きます。」

軽くその場でジャンプ、着地した瞬間に加速し距離を詰める。

「はやっ!?」

「とか言いながらちゃんと見えてるじゃないですか。」

左から右から、下から、斜めから。突きや体術なども交えて連撃を仕掛けるがそのすべてがしっかりと受け止められる。

「速さだけならうちの団員の中でもトップクラス...いや誰よりも速いが、手数重視で軽い。」

剣の腹で行けとめると蹴りで隙を作り攻守交替。

ほれぼれするほどにきれいな太刀筋。正統派な剣術だが極まったそれはシンプル故に強い。

だが

「それ故に剣筋が読みやすい。」

丸盾は正面から受け止めるのには適さない。しかし、その真価はまた別。

攻撃を()()()

「なんだこの...やりずらい!!」

振るわれる剣に盾は添えるだけ。右に左に受け流す。そんな状態でも剣筋が乱れないのはさすがの一言。いら立ちの籠った大ぶりの上段に構えての振り下ろしもたやすく流され落ちた剣が、ガランガランと大きな音を立てる。

「捕まえた」

それはつまり、剣を手放したということに他ならなくて。小盾をがっしりとウィーネさんがつかみ取っている。

「んな馬鹿な!?」

咄嗟の首狙いの短剣による突き。その動作の動作に下から割り込む腕。

そのまま手首を掴み押し倒すと、拾った剣を首に添える。

「…私の勝ちで、いいのかな?」

「ええ。負けました。まさか剣を手放して徒手空拳で来るとは」

「盾の扱いが上手な人には案外刺さるんだよこれ」

「副団長さんとかですか?」

「彼女のような大盾はまた別だよ。出来て姿勢を崩させるくらいだね。」

「なるほど。…とりあえずどいて貰えませんか?」

「あっ。すまない!」

鎧やら剣やら人やらの重さから解放され一息つくと互いに立ち上がり握手を交わす。

「いい試合だった。」

「こちらこそ。いい経験になりました。」

「できるならもうひと試合したいところだが……ご家族を家で待たせているんだったかな?」

「ええ。妹が1人」

「それは…早く帰ってあげなさい?何歳かは知らないが妹さんを1人というのは可哀想だ。」

「可哀想と言うよりかは口うるさいという方が正しいですがね。私はこのくらいでお暇します。」

「ああ。パーティに関しては後々知らせをする…まあ遅くても明日には連絡が行くと思う。」

「かしこまりました。団長殿。」

「次からはウィーネでいいよ。役職で呼ばれるのはどうにも苦手でね。」

「分かりました。ウィーネさん。」

「それでは、また後日」

こうして何とか誘拐騒動は幕を閉じた訳だが…

もうひとつの問題のために、商業区画へと足を運ぶのであった。

「何か、ご機嫌を取れるものがあるといいが」

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