深刻ソウナ顔
キーンコーンカーンコーン・・・
ようやく今日の授業が終わった。
あと一週間もないうちに、
中学校の一学期の終業式がある。
僕は、汗を拭きながら家へと歩き出した。
「よっ、祐一。元気ねぇな、どうした?」
友人の一樹が勢いよく飛び出してきた。
こんなに暑いのになんでそんなに元気なんだ?
ところで、祐一というのは僕の名前。
「暑いんだよ、毎日。
ただでさえ家に帰るのが面倒なのに」
僕の家は、学校から歩いて30分ほどの場所にある。
この学校は自転車通学禁止だから、
こんなに遠い僕の家でさえ自転車に乗って行けないのだ。
―――バタン。
ドアの音が勢いよく跳ねた。
僕の気分は跳ねていないけれど。
でも、僕の「暑い」というだけの悩みより、
もっと深刻な顔をしている人がいた。
僕の両親だ。
僕は自慢じゃないが、問題なんて起こした覚えはないし、
それもまた両親がうなだれるような事件なんて、
もっと起こした覚えがない。
「どうしたの?」
それしか聞く言葉はなかった。
僕の母親は、静かにこう言った。
「―――祐一。落ち着いて聞いて。
実はね、この夏の間・・・
そうね、ちょうど祐一が夏休みの頃よ。
お父さんが転勤することになったの。
私たちも引っ越しするのよ。
どこに引っ越すかというと・・・」
小一時間の長い話が終わった。
僕たち一家は、山奥の村に暮らすことになった。
父は教師をやっているのだが、
ある山奥の小学校の教師が、定年退職したらしく、
代わりの教師として、僕の父を選んだそうだ。
―――そんな。
せっかく地味な僕に、友達が出来たところなのに。
次の学校で、もう一度友達を作る自信なんてない。
でも、まだ13歳の僕が、一人暮らしなんて出来ない。
どうしようもない問題を抱えながら、僕は眠った。