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buddy ~絆の物語~ スピンオフ 市木編  作者: AYANO


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逃げる市木と、追いつめる市木⑤

それから10日後。本当に2人は入籍を済ませた。

市木と美乃梨の「交際0日婚」は、お互いの職場にも大きな影響を与えた。


市木が勤める病院では、看護師をはじめとする独身の女性職員の半数近くがショックを受け、数日間は仕事にならない人もいたそうだ。


そして、一番影響を与えたのは美乃梨の会社だった。

美乃梨と佐伯の交際は、みんな口にせずともほとんどの社員が知っていた。

しかし、約3か月前に破局してからは、佐伯と総務の女子社員の噂が流れ、美乃梨は腫れもの扱いされていた。

そこからの「交際0日婚」ときたので、その報告を聞いた美乃梨の上司や部下は、一同目を丸くしていた。


「そういうわけで部長。再来月に小さいながらも結婚式を執り行いますので、ぜひご出席いただければと思います」

まるで、いつもの業務報告と変わらないような口調で結婚報告をする美乃梨に、部長も唖然としている。

「えーーーっと。国分課長......。失礼ですが、そのお相手の方はきちんとお仕事とかされている方なんですよね?」

「........といいますと?」

美乃梨は部長がなんでそんなことを聞くのか、全くわからなかった。


「いや、実は......国分課長がホストの男に入れ込んでいる、という噂があるみたいで、もしかしてと思って......」

部長のその言葉を聞いて、美乃梨はブチっと切れた。

こんなことを言う奴は、あのクソ野郎しかいない。


「部長、それは完全にデマです。わたしの主人は外科医です。いま働いている病院ではありませんが、主人の実家は市木総合病院です。きちんとしている方なので、ご心配には及びません。それも、結婚式に来ていただければわかるはずです」

「え......?あ、ご主人はお医者様なの?」

「はい、そうです」

美乃梨は部長に対してきっぱり言い切った。


「そうしたら、なぜこんな噂が流れたのかしら......?」

「部長それは、統括部の佐伯主任が勝手に言いふらしているんだと思います。彼は、わたしと主人が一緒にいるところにやってきて、主人のことをチャラチャラしているだの、ホストだのと暴言を吐いていましたから」

「そんなことが......?」

「はい。それに、自分は総務の女性社員を孕ませておきながら、わたしには人の心がないだの、お前も二股をかけていたんだのと言った挙句、逆上してわたしに手を上げようとしました。それを主人が止めなかったら、わたしは殴られていたと思います」

「なんてこと‼」


部長は、まさか自社の社員がこんなことをしでかしていたとは思わず、すぐに上に報告し調査すると約束した。

ここは大手の化粧品会社だ。社員の割合は、男性よりも圧倒的に女性が多い。

この会社でやっていこうと思うなら、女性を敵に回してはやっていけない。


(フンッ。あのクソ野郎に10年も無駄にされた恨みよ。思い知ればいいわ)

美乃梨はこうやって、いつもの調子を取り戻していった。


それから上層部で話し合い、本人への聞き取りや周囲の証言などを集めた結果、それが事実だとわかるのにそう時間は掛からなかった。

なぜなら、あの騒ぎがあったのは会社のそばで、社員の目撃者も多かったのだ。


その後佐伯は、妊娠させた総務の女性に堕胎を迫っていたことも発覚し、即日の部署異動が下された。

それも、問題児ばかりを集めた別名「魔の巣窟」と言われる部署へ。

そのあと佐伯がどうなったか、美乃梨は知らなかったし、知ろうともしなかった。それどころではなかったからだ。


それから結婚式まではハードスケジュールが続いた。

休みの日はすべてその準備に費やした。結婚式自体は、そんなに大きくするつもりはなかったが、それでもやることは多かった。


しかし、意外にも市木の姉がもの凄く協力的で、衣装合わせなどで市木が行けないときは必ず付き添ってくれたし、招待客のリスト作りも、姉の協力がなければうまく進めることは出来なかっただろう。


そして、結婚式当日。

市木と美乃梨の結婚式はチャペルのあるホテルで執り行われる。

チャペルでの挙式を済ませ、披露宴が始まろうとしていたとき、披露宴会場に現れた有名人に、招待客が騒然とする。


そうbuddyの6人だ。竣亮以外の5人は、新郎側の席へ座った。

もちろん竣亮は葉月と共に、新婦の親族側の席に座る。

buddy以外にも、木南、美里、芽衣も来ていた。

ちなみに子供たちは、今回もおばあちゃん’sに見てもらっている。みんなで遊んでいるだろうから、寂しくはないだろう。


隼斗「まさか、あれから3か月で結婚式までするとは......」

僚 「あいつ、俺らの予定が埋まってたら、どうするつもりだったんだ?」

誠 「元木さん辺りに聞いたのかもな」

美里「市木くんならやるかもね」

深尋「明日香さ、市木くんにいま狙われなくてよかったね。絶対に前よりもパワーアップしてるもん」

明日香「う....うん」

芽衣「美乃梨さん、これから大変そう......」

木南「市木の完全勝利だね」

8人は1つの円卓に座り、これまた好き勝手なことを言っている。


そして、市木がどう思っているかは知らないが、美乃梨が懸念していた市木家の親族席には、父親以外の家族が揃っていた。

市木と父親の溝は深く、簡単に埋まりそうになかった。


一方、新郎新婦のいる高砂には、美乃梨と同じ部署の上司と部下が集まっていた。

「国分課長、市木さん、この度はご結婚おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「課長っ!buddyの国分竣亮って、もしかして......?」

「ああ、黙っていてごめんね。弟なの。他の5人も子供の時から知ってるわ」

「ええええ!弟さん⁉しかも、他のメンバーも......」

「あれ?でも、他の方たちは新郎側にいますよね?」

そう言って美乃梨の部下の女の子2人が、市木をチラッと見る。


「あははっ、俺はあの6人とは10年以上の友達だからね。葉山に関しては中学1年からずっとだよ」

「葉山僚ですか⁉スゴッ......お2人で並んだら鼻血ものですね」

「ははっ、そうだね~」

僚がとんでもない潔癖男だということは黙っておくことにした。


それからも、市木の病院関係者や、それぞれの友人などが挨拶に来たり、写真を撮ったりしていると、スペシャルステージの時間になった。

それはもちろん、buddyの6人によるパフォーマンスだ。


6人は市木にそれをお願いされて、すぐにOKの返事をした。

断る理由はなかったからだ。

しかしその直後、6人はOKしたことを後悔することになる.......


披露宴会場が暗くなり、曲が流れると扉にスポットライトが当たる。

扉が開き6人が登場すると、今日イチの歓声が上がった。

今日の曲は、3曲全て市木からのリクエストだった。


1曲目は『Sapphire』だった。

確かにかっこいいし、盛り上がる曲だとは思うが、これには明日香と深尋から少しだけブーイングがあった。


「あのね市木くん。あの曲を結婚式のドレスで、しかもヒールでなんて無理だよ!足首がグキッてなっちゃうよ!」

「え~?ダメかな~?」

「踊れなくはないけど、怪我の元だよー」

「当日は、整形外科医の木南もいるよ?」

「それは怪我した後にお世話になるのっ!そもそも木南くんのお世話になったらダメなの!」

明日香がめずらしく市木に口を荒げる。よっぽどヒールで踊りたくないらしい。

「シューズとかなら全然いいんだけど、ドレスに合わないしねー」

深尋が何気なく言うと、それを聞いた市木はパァッと顔を明るくして、

「それなら俺がちゃんと用意するよ!ねっ!明日香ちゃん、お願い!」

と懇願された。


こうして明日香と深尋は、このスペシャルステージの時間だけは、黒地にラメとスパンコールで飾られたシューズで踊ることになった。


そしてこの選択は大正解で、床が沈み込みやすいふかふかのカーペットだったため、ヒールだったら確実に木南のお世話になっていただろう。


明日香はそんなことを思いながら『Sapphire』を踊っていた。


そして2曲目に選んだ曲が、これまた波紋を呼んだ。

なぜかというと、失恋ソングだったからだ。内容は、付き合っていた女性から別れを切り出されそうになっている男性の心情を歌ったもので、はっきり言って結婚式には不向きだった。

これには6人全員が市木にブーイングを出す。


「お前、おめでたい日にこの曲はないだろ⁉」

「え~なんで~?」

「市木、小5の深尋みたいな言い方するな」

「ちょっと!ひどいっ隼斗!」

「結婚式に失恋ソングなんて、不吉過ぎるだろ」

「でもさ、あの曲って君たちの歌のうまさが前面に出されてて、すっごくいいと思うんだよね。それに、間奏のところでさ、葉山と明日香ちゃんが2人で踊るだろ?あそこ好きなんだよね~」

「いやいやいやいや......」

「あと、俺と美乃梨さんは別れたりしないから、だいじょ~ぶ!」

「竣亮、一応お前の義兄だぞ!なんとか言ってやれ!」

「みんな、無理だよ。市木くんが言い出したら聞かないの、わかるでしょ」

「....................」


結局6人は、市木のリクエスト通り、結婚式なのに失恋ソングを歌うことになった。ただし、変な誤解はされたくないので、新郎の強い希望だということを周知してもらった。


この曲はしっかりとしたバラードで、6人がリリースした曲の中で唯一、ダンスの振り付けがない。あるのは、市木が好きだと言った、間奏で僚と明日香が2人で踊るところだけだった。

それだけではなく、1人1人のソロパートがあるのはもちろん、サビの部分では2人でハモって歌ったりするので、それはそれで難しい楽曲でもあり、6人の歌唱力が光る楽曲でもあった。


しかし6人の予想に反して、失恋ソングにも関わらず、なぜか披露宴会場は盛り上がった。

これには6人も「なぜに?」と不思議でならなかった。


そして3曲目は、もはや結婚式で定番となった『Summer Story』だ。

この選曲には全員異論はなかった。が、また市木の一言のせいで、6人は振り回されるハメになった。


イントロが流れ出すと、それまで高砂にいた市木が6人の元へとやってきて、一緒に踊り始めたのだ。


そう市木は、この6人に振り付けを教えてくれと言ってきたのだ。

それも、結婚式の1週間前に。


「お前さ......計画性というものは持ち合わせてないのか?」

「あるよ~。綿密な明るい家族計画はきちんと......」

「そんな下ネタぶっこんでる場合か⁉結婚式は来週だぞ⁉」

「だってさ~あのダンス、可愛くて楽しそうだから、一緒に踊りたいなって」

「そんな簡単に言わないでよ......」

「誠、どうにか出来るか?」

「やっぱり俺か......」

「もう、ここは誠に賭けるしかないよ」

「みんなもさ、美乃梨さんを驚かせたいだろ?」

「市木、お前が言うな」

「わかった。ただし、出来ないとか言うなよ」

「よろしくお願いします!誠先生!」


そして市木は、本当に1週間でダンスをマスターした。

もともと運動神経も良く、記憶力もいいので、スムーズに覚えていった。

大変なのは6人の方だった。

そもそも6人でのフォーメーションだったのを、7人用に変えるということで、その作業が大変だった。それに全員が振り回されたのだ。


それでも結婚式では人気の曲なので、イントロが流れるだけで盛り上がったが、そこに市木が加わったことで、さらに盛り上がった。

そしてこのことは完全にサプライズだったので、6人以外の全員がこの場で初めて知ったのだった。


曲が終わり大きな拍手に包まれていると、それに気を良くした市木が、

「みなさんありがと~!今日から僕が、7人目のbuddyで~す!」

と言って、両手をブンブン大きく振っている。

これにはbuddyの6人だけでなく、木南、美里、芽衣も呆れ顔だった。

唯一、葉月だけが「市木くん、認めるわ!」と1人興奮していた。


なんだかんだ市木に振り回されたスペシャルステージだったが、招待客からの評判はよかったみたいなので、大成功と言えるだろう。


結婚式後。

この日市木と美乃梨は、そのままホテルで宿泊することになっていた。

「疲れたぁ.......」

「ふふっ、市木くんはダンスもしたしね」

市木はボフッとベッドに倒れ込む。そのそばに美乃梨が腰かけた。

「むぅっ......美乃梨さん、市木くんじゃなくて颯太でしょ⁉」

いまだに「颯太」呼びに慣れない美乃梨は、ついつい市木くんと呼んでしまう。

「はいはい、颯太くん」

その呼び方が、まるで子供に言い聞かせるような呼び方だったので、ちょっと意地悪したくなり、後ろから美乃梨を抱きかかえベッドに押し倒す。


「ちょっと⁉颯太くっ........」

市木はそのまま美乃梨に覆いかぶさり、その唇を塞ぐ。

「......んっ......」

角度を変えながら、市木は深く口づける。そして少し唇を離し、唇をつけたまま美乃梨に囁く。

「美乃梨さん......逃げないでね」

「なんでそんなこと言うの?」

「だって......結構強引に結婚したから......」

「あら、その自覚はあったのね......んっ......」

話しながらも、口づけを止めることはない。


「......はぁ......俺、絶対に大切にするから......」

「......期待してるわ」

「うん......だから、もっと俺のこと好きになって」

「んんっ......そう......たくっ......」

市木の手は美乃梨の服の中へ入っており、美乃梨の下着に手を掛けていた。

美乃梨は、結婚してもなお不安そうにつぶやく市木の耳元で、市木が欲しがっている言葉を囁いた。


「颯太くん......わたし、あなたが思っている以上に、あなたのことが好きよ。だから、安心して」

美乃梨にそう言われると、市木はハッと美乃梨の顔を見る。

「.......ホント?」

「本当よ。好きじゃなければ、結婚なんかしないわ。それに......」

「それに?」

美乃梨は少し顔を赤くして、小さな声で言った。


「......わたしも、あなたとの子供なら欲しいと思ったから......」

「!!!!!」


そのあと市木は、美乃梨との明るい家族計画のために一晩中頑張ったことは、言うまでもない。

buddyの大親友・市木にも、ようやく本物の幸せが訪れた。




~完~


※※あとがき※※

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は市木くんが主人公のお話でした。


わたしの一番好きなキャラだったので、どうしても市木くんには幸せになって欲しかったのです。

明日香への想いは報われませんでしたが、新しい伴侶を得ることが出来て良かったです。


実は当初、明日香とくっつけようと思っていたのですが、そのあとの展開が上手くいかなくて、結局そのまま僚と恋人にしたんですが、いまでも「市木の方が良かったかな」と思ったりもします。

市木のことなので、明日香と結ばれた日には、僚と同じくらい大事にすると思います。


とりあえず、市木くんをハッピーエンドにすることが出来て満足です。


ありがとうございました。


   AYANO


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