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「水面に浮かぶ大輪の花の絵」 6 少女の思いつき


会話を楽しみながらも、お皿の上のスイカはどんどん消えていく。また一つ食べ終わった千慧は、切り分けられたスイカを大皿から取ろうと手を伸ばした。

スイカの水分と重みを感じながら自分のお皿に移し替えたところで、ふと思ったことを呟いた。



「そういえば、なっちゃんと花火大会行ったことないよね」



千慧の唐突な呟きにも、水穂は驚くことなく返答した。



「そうね」


「この神社で毎年開催されるお祭りも行ったことない」



千慧の言葉に水穂は一瞬考える素振りを見せたが、すぐに口を開いた。



「……花火大会に関しては、私も見てみたいと思っているわ。でも、この時期私はこの地域に止まらなければならないから。逆に、神社の祭礼が執り行われる長月には、別の場所へと旅立たねばならないの。ごめんなさいね」



水穂の申し訳なさそうな声音に、千慧は慌てて両手と首を振った。



「全然大丈夫だよ!というか謝ることじゃないから!!もちろん、なっちゃんと一緒に花火を見たり、お祭りに行ったりできないのは残念だけど、毎年夏にこうして遊べるだけで凄く幸せだよ」


「ありがとう、千慧。私も毎年幸せだわ。____でも、そうね。私も千慧と打ち上げ花火を見てみたくなったわ」



言いながら、水穂は座布団から立ち上がる。



「なっちゃん?どこに行くの?」



千慧の声に水穂が浴衣の袖を踊らせながら振り向いた。



「思いついたことがあるの。少し待っていてちょうだいな。すぐに戻るわ」



少しいたずらっぽい表情を浮かべてそう言った彼女は、そのまま社務所の出入り口向こうへと姿を消した。





スイカを見守りながら千慧が待っていると、ものの数分で水穂は戻ってきた。



「お待たせ」



言いながら、先ほどと同じ位置に彼女が腰を下ろす。



「ううん、全然待ってないよ。用事は済ませられた?」


「ええ。あとで貴方にも見せるわね」


「ありがとう!」



千慧の返事に、水穂は満足そうに口角を上げた。



「__それにしても、随分と食べたわね」



水穂の視線の先には、スイカが載せられた大皿があった。

先ほどまでは底面が見えないほどあったスイカも、今は三切れしか残っていない。



「だね。流石にお腹いっぱいになっちゃったんだけど、なっちゃんは食べられそう?」



千慧の問いかけに、水穂はゆるゆると首を横に動かした。



「私ももうお腹いっぱい。流石に、二人で食べ切るには少し大きかったかしらね」


「言われてみれば、一玉を二人で食べたことってないかもしれない」


「そうなの?」


「うん。大体おばあちゃんの家に行く時にスイカが出てくるんだけど、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、妹、私……あ、あとおばあちゃんの家で飼ってる犬の、合計で六人プラス犬でいつも食べてるんだー」


「大勢で食べるものなのね」


「その認識が強いかなあ。もちろん、お店に行くと半分とか、四分の一とか、切り分けられて売られているのもあるから、一概には言えないと思うけど」



そこまで言ったところで、千慧はパンッと両手を合わせた。



「そうだ!今日は境内を使わせてもらってるわけだし、この神社の神様か、もしくは神社の人にお礼として渡せば良いんじゃない!?」



唐突な提案に目を丸くしていた水穂だったが、すぐに気を取り直して口を開く。



「確かに妙案ね。それじゃあ、私がお台所で別のお皿に移し替えてから渡しにいくから、千慧は机の上を軽く片付けて、布巾で拭いておいてもらえるかしら?」


「もちろん!」


「それじゃあ、動き始めましょうか」



水穂の言葉を合図に、二人の少女はそれぞれの行動を開始した。

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