01 豊臣秀吉
マイクロソニンの研究施設では、
ビール・ゲッツの娘、ブレンダが
軌道衛星上の人工衛星から電磁波照射による
人心の操作の研究を行っていた。
ブレンダは、監視カメラの映像で
誰かを探していた。
「見つけた! グラフェンマン、
いや、リュウホウ! 電磁波照射で
精神を操ってあ・げ・る!
ボチッとな」
ブレンダはどこかの悪役女ボスのような
掛け声でボタンを押す。
グラフェンマンに変身していた緑川龍鳳に
人工衛星から電磁波が照射された。
すると、グラフェンマンの羽織っている
酸化グラフェンスーツと反応して
電磁波が打ち消され、フィラデルフィア計画で
軍艦が消えたようにグラフェンマンも消えてしまった。
「あっ、リュウホウ消えちゃった?!」
--- 時は、戦国時代 ---
「いてててて、ここはどこだ?」
グラフェンマンは、わけもわからず、
タイムスリップで戦国時代の山の中へと
現れていた。
「とりあえず、人を探して、ここがどこか
聞いてみよう」
民家があったので中へと入る。
中では少年が病を患って寝ているようだ。
医者らしき男が言う。
「もう助からないだろう。 川魚を
生で食べて寄生虫にやられたんだろう」
「そんな、なんとか助けてやってください!」
母親らしき女が頼む。
それを見ていたグラフェンマンは、
ポケットの中を探ってみた。
なんと、抗寄生虫薬のイベルメクチンが
一粒残っていた。
「これを少年に飲ませてみてください!」
グラフェンマンは、イベルメクチンを一粒渡した。
「君は誰だね? 見かけない顔だが」
「それがよくわからなくて、気づいたらここにいて、
その薬は寄生虫を殺す薬です。副作用があるかも
しれませんが命には代えられないはずなので、どうぞ」
「そうか、どうせこのままだと助からないだろうから、
その薬にかけてみるか」
医者はイベルメクチンを水と一緒に少年に飲ませた。
すると少年は、すぐに良くなった。
「ありがとうございます。この御恩は一生忘れません」
母親が丁寧にお礼を言った。
「たまたま薬を持っていて良かったよ」
「ほれ、藤吉郎からもお礼を言い!」
「あ、ありがとう…」
少年が礼を言う。
「藤吉郎?」
「はい」
「ちなみに、今は西暦何年?」
「西暦という南蛮の暦どころか、
うちらは山の民という世俗と関係なく
暮らしている者ですけえ、そういう
事には疎くて、存じ上げません」
「えー、そうなの、藤吉郎って
名は、その後、豊臣秀吉という
日本一の天下人になるけど、
本人って事はないよね?」
「ははは、まさか、この猿めが
天下一とか冗談が上手いお方だ! ははは」
医者と母親が笑う。
そんな事を言っている間にグラフェンマンは、消えてしまった。
「あれ、今のお方はどこに行った?」
「天狗にでも化かされたんかのう」
後に、藤吉郎は、豊臣秀吉となり、
日本の天下一の者へとなるが、
生涯、その子供は健康に育たなかったという。
それがイベルメクチンの副作用なのかはわからない……。