短編 俺の親父が美少女過ぎて困る
タイトルだけ募集って企画の作品です
「カーロカロカロカロ! 見られたからには仕方無い! このケルベロース将軍が貴様をドーナツ作りの奴隷にしてやるカロ!」
突然だが俺は親子で世界の平和を守っている。急に変な事言うな? おいおい、俺の目の前に居る変な奴の存在で信じてくれよ。この世界、結構不味いんだぜ。
「あ~、畜生。だからカレーにオムレツなんて必要無いって言ったんだよ。カレーはカレーの時点で完成されているんだよ。許されるのはチーズまでだっての」
俺の名は竜崎祈色、電撃戦隊サンダーファイブって戦隊ヒーローの一員で色は……まあ、今回の話には関係無いだろう。今はキングダスター率いるスクラップ軍団は無関係だからな。
母さんに頼まれてカレーに乗せるオムレツ(邪道)の為の卵を切らしているからって学校帰りにスーパーに寄ったんだが、近道の為に通った公園で落とし穴を掘ってる連中と出会した。それが俺の目の前に居る骨付き肉(漫画に出て来そうな奴)の身体と三つの頭を持つ二足歩行の犬と手足と顔の付いたコーラ瓶。
「……確かギガカロリー王国だったか?」
「そうだカロ! 俺様達はこの世界を支配し、全ての食事を高カロリー高脂質な物に変えてやるんだカロ!」
「くっだらねぇ。そんな事して何が楽しいんだっての」
え? お前の敵は別の連中じゃ無いのかって? そうだよ、別の連中だ。世界中の全てをスクラップにしようって連中で、目の前の変な連中は俺の相手じゃない。この連中を相手にしているのは……。
「ったく、こっちは部活帰りで腹が減ってるってのに面倒な真似をしやがって」
俺は髪をポリポリと掻きながら呟く。こんな連中、俺が戦えるなら戦ってるよ。変身に必要な腕時計は着けてるし、普段だったら”サンダーチャージ! 正義招雷!”って叫べば変身完了だ。
だがな、一度言ったが連中は戦隊ヒーローの相手じゃない。この連中の相手は……。
「待ちなさい、ケルベロース将軍! 貴方の悪事は見逃せないわ!」
「現れたな、プリティクリーン!」
……魔法少女の役目だ。
「出て来いメタボリックモンスター!」
突如現れたフリッフリの衣装を身に纏い、宝石で装飾がされた箒を手にしたポニーテールのピンク髪の女子児童の登場にケルベロースは忌々しそうにしながら巨大な皿を呼び出す。白い皿にドーム状の蓋。その蓋が激しく揺れ、中から変なのが現れた。
「俺の名前はエビフ・ライダー。プリティクリーンよ、今日が貴様の最後だ!」
「いいえ! 私は負けはしないわ!」
巨大なエビフライ型のバイクに乗る海老みたいな化け物と共に雑魚戦闘員が魔法少女に襲い掛かって戦いが始まる。
「まあ、頑張ってくれや。……あまり喋らずにな」
俺? 俺は少し離れたベンチに座って缶のコンポタを飲みながら観戦だ。何で戦わないのか、その理由は八十年位前まで遡る。
その日、世界中の人間が神の存在を目にした。
「やあ、人間諸君。早速だが私の実験に付き合ってくれ。拒否権は無いよ」
世界中の空に映し出されたその姿を目にした時、全人類は本能で神だって理解したらしい。今まで存在した宗教の信仰対象の存在全てを否定しながら其奴は世界がどんな風に変わるのかを説明した。
色々とあったけれど、要するに戦隊ヒーローや怪獣と戦う正義の巨人とかの特撮や悪のロボットと戦うロボットや魔法少女とかのアニメが現実に起きるようになったんだ。
そして面倒な事に戦隊ヒーローは戦隊ヒーローの敵として出現した相手じゃないと変身出来ないし、悪の組織とかは同じ場所で同時刻に暴れたり力を合わせたりはしない。番組が違うって事だ。
「えーい! マジカルレジェンドクリーナー!!」
だから俺は戦いを見ているだけだ。さっさと帰りたいんだが、ちょっと理由があってな。見ているのはキッツイけれどこうしているしか無いって訳だ。
「おのれ、プリティクリーン! 次こそは!」
巨大な掃除機から出たビームみたいなのでエビフ・ライダーがやられるとケルベロースは去っていく。やれやれ、終わりか。連中が帰ったのを確認したプリティクリーンは俺の方にニコニコしながら寄って来た。
「大丈夫かしら、祈色?」
「別に怪我は無いよ……親父。そんな事よりも母さんからビールも追加で頼まれたんだけれど年齢証明書は持ってるのか?」
「持っているけれど……その口調は止めなさい。父さんみたいに話し方が強制変換されている訳じゃないじゃない! 貴女は女の子なんだから!」
……あー、うん。この魔法少女って、俺(女子高生)の父親なんだわ。言っただろ? 親子で世界の平和を守っているって。
「この度は本当に申し訳御座いませんでした!」
元々親父は魔法少女なんかじゃない普通の父親だったんだが、ある日起きたら魔法少女になって動作や口調もそれっぽい物になっちまった。理由? 俺達家族の前で土下座している連中のポカだよ。
本来魔法少女ってのは相棒の妖精が素質ある子から選ぶらしいんだが、三徹で麻雀大会していたアホが酒も相当入っていたせいで力を込めた流れ星を落とす家を間違えたんだとさ。
「……なってしまった物は仕方無いわ。私しか居ないんだし、その間の補償とかは大丈夫なのかしら?」
「はい! 国と連携して不足の無い内容をお約束します!」
こうやって本当の年齢の証明書とか色々とか手当てとかしっかりしているし、こんな世界だから交通事故にあった程度しか周りも感じちゃ居ないよ。腕の骨が折れて大変だなって程度だ。実際、偶に選出ミスは起きている。
「人間って逞しいよな……」
こんな世界に適応してるんだからマジで凄いよ……。
「此方アルコール飲料ですが実年齢を証明する物は御座いますか?」
「あっ、はい。有ります有ります」
「ついでに肉まんくれよ。母さん、食事前の間食に厳しいから酒とは別会計でな。じゃないとレシートでバレる」
「じゃあ、私もフライドチキン一つ」
例えば国の制度。ヒーローとかになった影響で見た目が変わったり成長が止まったりした人の為に証明するカードを発行したりだ。だから今もコンビニで限定特典付きの酒が買えたんだけれど、さっきから怪獣が遠くで暴れているのか振動が此処まで来てるな。
「何時もならそろそろ……おっ、到着したみたいだな」
ガラス越しに眺めれば正義の巨人のお出ましだ。ったく、こんな時間帯に出現しやがって。鍋でも焦がしたらどうするんだよ、怪獣。
「ねぇ、祈色。ちょっと聞いて良い? こんなお父さんで恥ずかしくないかしら?」
イートインコーナーに座り、ちょっと外に気を取られていた時、不意に親父がそんな事を聞いてきた。別に親父の責任じゃなくって、あんな適当な妖精を派遣した派遣会社が悪いんだろうがっての。ギガカロリー王国の件が終われば雇用契約打ち切りとか損害賠償の裁判が待ってるんだからざまあみろだ。
「親父はちゃんと世界の為に戦ってるじゃん。何が恥ずかしいんだよ。まあ、髪の色以外は俺の小さい頃そっくりだからフリルだらけの服を着て女の子っぽい話し方なのはキッツイかな? 親父が美少女過ぎて辛いよ」
「私からすれば娘にはもう少し女の子らしい言動を望んでるのよ? レッド君もそっちが似合うと思うでしょ?」
「……すいません。チームワークに関わるのでノーコメントで。あと、バイト中は本名でお願いします」
あっ、この店員はサンダーレッド、本名は田中赤彦。俺の所のリーダーな。てか、その言い方だと親父に賛成しているみたいじゃんか。おい、目を逸らすなよ。
「もう敵対的なのも友好的なのも宇宙人やら妖精やら色々居る世の中で古い考えだぜ? 俺は俺らしくしてれば良いんだって。……おっ、母さん、今日は光線じゃないんだ」
話している最中に正義の巨人こと俺の母さんが怪獣を倒す。言っただろ? 親子で世界を守ってるって。母さん、実は地球を守る為にやって来た宇宙人なんだよ。親父、宇宙人と結婚しておいて女の子らしいとかに拘るんだから変わってるよな。
これが少し変わった世界を守る俺達親子の日常だ。……俺の戦隊での色? おいおい、どーでも良いだろう、そんなのよ。
「あっ、母さんこっち見てる。てか、テレパシー送って来た」
「間食がバレてるわ。……戻ったらお説教ね」
因みに家での最強は色々な意味で母さんだ。多分ロボ(合体時右足)を使っても負ける。仲間と合体ロボになっても敵う気がしない。
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