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二人で未来を描いて(3)

 翌朝。

 そう、翌朝である。何だこの時間のスキップ。『解せぬ』という表現はきっとこんなときに使うのだと、私はベッドの中で思った。


(眠い……)


 昨夜は、いつ寝たのかわからないような眠りの落ち方だった。「彼が寝かせてくれなくて」という台詞は惚気ではなく、実際に起こりうる事態だった。

 けれどそれのせいもあるにはあるが、一番私の眠気を誘っているのは、私の頭を撫でるレフィーの手の動きだ。彼はこの頭なでなでを事あるごとにやってくる。そのため慣れた感触の安心感が、余計に私を夢の世界に連れ戻そうとしていた。

 ちなみにレフィーのもう片手は、私を腕枕している。完璧か。


「……ん、レフィー。おはよう……」


 全然、「おはよう」な感じのしない声で言いながら、それでも私は何とか目を開けて隣の彼を見た。

 私とは違い、しっかり起きた感じのする彼が微笑む。


「おはようございます。今日も可愛いですね、貴女は」


 その第一声、さらに完璧か。


(そんなレフィーに比べ、私って残念な性格……)


 常々思ってきたことながら、改めて痛感する。

 『素敵な男性と素敵なデート』を思い描いて、恋愛マニュアルもどきを漫画にして。それを実践してくれたレフィーは、まさにそのものだった。だから尚更に、相手役の女性と自分との懸け離れ具合に失望した。

 素敵な男性の横には、素敵な女性がいて欲しい。当たり前のように、ワンセットのように考えていたその構図に、私の方は条件を満たせていなくて。それをわかっているのに、レフィーを手放したくない。絶対に。

 今日から頑張ってもっと可愛げのある性格にチェンジ――いやここはいっそ、レフィー本人にリクエストを聞いた方が早いし確実か。


「今更だけど、レフィーはどんな性格がタイプなの?」


 悶々したことで嫌でもしっかりと覚めた目で、彼に尋ねる。


「性格? そもそも気にしていなかったですね」

「えっ、普通そこって重要視されない? って、そうか。竜の番は欲情するしない判定だったっけ。あ、でも友人とか近しい相手として好ましい性格っていうのは、あるのよね?」

「特にないですね」

「ええー……?」


 私から見たレフィーの性格を考えると、彼がどんな相手でも合わせられるという理由ではないと思う。絶対に。

 ということは、来る者拒まず去る者追わずだからだろうか。あー、うん。そっちの理由の方がしっくり来るね。


「私に限らず、竜族では珍しくないかと思います。寿命の長さによる違いかも知れません」

「寿命の長さ?」


 どうやら私が思った理由とは違うらしい。

 しかし、性格へのこだわりのなさと寿命とが関係すると言われても、私にはピンと来なかった。


「例えば、ミアが漫画で描いていた『可愛げのある性格』ですが、あの手の人間はそうすることで利益を得られるという学習をした末にそうなったに過ぎません。類似例としては、すぐに暴力に出る人間は、それで我が侭が通った経験があったのでしょう」

「うんまあ、言いたいことはわかるけれど?」

「そして、貴女のように自分を卑下するのは、甘えることも(かん)(しやく)を起こすことも抑制されたタイプと窺えます。愛されている自信がないため、誰かが貴女に頼られたいと思っていることを想像できない。よって、誰かを頼るのが苦手な人です。割と何でも出来るのは、何でも自分で抱えるせいです」

「ぐ……」


 相手の性格に対するこだわりはなくとも、分析はしているらしい。身に覚えがあることを指摘され、私は呻いた。

 そんな私の頭をレフィーがまたなでなでしてくる。フォローを忘れないその性格、どこまでも完璧か。


「――とまあ、そんなわけで。性格とは、ようはこれまでどう生きてきたかの過去でしかありません。これから先、貴女はこれまで過ごした長さと比べものにならないほどの時間を私と過ごします。貴女の性格は幾らでも変わる可能性があります」

「あ……そういう……」


 ここに来て寿命の長さに話が繋がり、私はようやく合点がいった。


「そのどれもが私は愛しいでしょう。何故なら、その性格は私と過ごした時間が作り出したもの――より私のミアになった貴女なのですから」


 そしてそう締め括ったレフィーに、私は言葉を失った。

 私を見る彼の優しい眼差しに愛情の深さを感じたこと、私が自分で抱えていたことすら知らなかった闇を思いがけず知ってしまったこと、その両方によって。


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