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思い出を消さないで(1)

 私とレフィーは先回りをして、邸の前庭に潜んでいた。道を行かず畑を突っ切れば、実は半分程の距離でここまで来られる。私たちのようにぬかるみに足を取られる心配がなければという、前提はいるが。

 レフィーは背の高い木の裏に、私のその横にある植木の陰にしゃがんで待つ。しばらくして、泥棒はようやく姿を現した。

 欲張って荷物が重かったのか、泥棒は目に見えて疲れていた。先程から、数メートルおきに立ち止まっては、よろよろと進んでいる。これ以上盗みを働いても持ち運べないのではと思うほどだ。


(もしかして、ここを根城にしているの?)


 泥棒の様子から行って、彼は一仕事終えて帰ってきたのかもしれない。

 そう推測して見ていれば、泥棒は玄関扉の前で麻袋を下ろした。そして案の定、何の警戒も無しに扉を開けた。

 鍵が回った音がしたので、こじ開けたのではなく、どこかから入手した鍵を使ったらしい。鍵を盗まれるなんて、ケチな叔父さんにしては珍しい失敗をしたものだ。


『どうやらここに住み着いているようですね』

「!?」


 いきなり念話(テレパシー)で話しかけてきたレフィーに、私は驚いて危うく声を上げかけた。

 以前、竜なレフィーがしてきたので、念話自体は初めてじゃない。しかもそのときは、姿が変わっても会話できるのは便利だ、としか思わなかった。

 今回は先入観というか、人の姿のまましてきたので動揺した。その姿でもできたのね、念話。


『やはり向かっていたのはこの家でしたか。ここは覚えています。ミアの漫画を取りに来ました。ミアが暮らしていた家ですね?』


 こちらへちらりと目だけを向けてきたレフィーに、私は頷いてみせた。私は念話は聞けても送れないので、ジェスチャーで返すしかない。


「例えもうミアが住んでいなくとも、ミアがいた場所に盗人が住むというのは面白くありません」


 って貴方、もう普通に話しているし! しかも泥棒の前に飛び出しているし!

 まあレフィーなら、相手が刃物を持っていようが銃器を持っていようが、関係無いのかもしれないが。

 私は素手でも負けること必至なので、このまま隠れさせてもらう。


「誰だ!?」


 泥棒が、いきなり現れたレフィーに比喩ではなく跳び上がる。

 大声まで上げて――そのことで、私は彼の正体に気付いた。


(叔父さん?)


 泥棒の顔を注視して、そこでやっと聞き間違いでないことがわかる。

 私の知る叔父さんは、いつも王都で売っているような上等な服を着ていた。だから、村の一般的な男性と変わらない格好だったことで、今まで気付くことができなかった。

 飾り気の無い、麻を織った農作業向けの服。このような服を、初めから叔父さんが持っていたとは考えにくい。先程のようにどこかの家から拝借したものと思われる。

 上等な服というのは、手入れが難しい。管理してくれる人がいなくなったことで、駄目にしてしまったのだろう。


「待て、見覚えがあるぞ。そうだ、アルテミシアと邸の側を歩いているのを見た。あの竜の飼い主なのか!?」


 言うなり、叔父さんがキョロキョロと辺りを見回す。儀式の日に現れた竜を連れてきていないか、確認する素振りに見えた。

 しばらくそうしてから、叔父さんが安堵の表情になる。竜の姿が見えないことにほっとした、といったところだろうが……それが目の前にいるのよね。本人に向かって飼い主とか言っちゃったよ、叔父さん。


「ここへ来た私たちを見たというなら、この人間がミアを蔑ろにしていた叔父なわけですか」

「あいつがそう言ったのか!? 何て言い様だ!」


 竜がいなければレフィーなんて、ただの若造と思っているのだろう。格好と違って横柄な態度は、私のよく知る叔父さんのままだった。


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