表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/69

恋愛から始めませんか(1)

 私の必死さが伝わったのか、残念なイケメン(確定)は手を止めてくれた。


「何か?」


 ――伝わってなかったようだが、取り敢えず止めてくれた。

 止めてはくれたが、安心はできない。その手はまだ私のスカートにある。何よりこの男、首を傾げて私を見ている……!


「何か? じゃないから。普通、外でこういうことはしないし、いきなりもしないからっ」


 また無表情になった男性の圧力(顔面偏差値による)にもめげずに、早口で抗議する。さっきもうめっちゃ地で叫んだし、言葉遣いを取り繕う気は最早ありません。


「――私の読んだ本には、ありましたが?」

「!?」


 誰よそんな本を書いたのは! けしからん! 読ませて!


「それは特殊、特殊なの! 恋のステップを踏ませて! 他愛ない会話から始まって、段々と仲良くなって、手を繋いで、デートを重ねて!」

「? そのような内容の本は、見たことがありませんが」

「私の家にはあるのよ!」


 さらに首を傾げないで!

 何でそんな本を鵜呑みに。それとなく教えてくれる親兄弟は――って、竜だったわこの人! そりゃあ、いないね!


「私が読んだことの無い本を、貴女が持っていると?」


 おや。スカートから手が離れましたよ? 本と聞いて目の色を変えるとは、さてはこの人、本の虫とかいうタイプでは。


「それは取りに行きましょう。今すぐに」


 男性がスッと立ち上がる。

 私も手を引いて立ち上がらせてくれる。

 今までの攻防は何だったのかと問いたいほどに、あっさりと。はい、この人、本の虫確定。それも重症とみた。


「さあ、案内して下さい」

「ふふっ、……わかったわ」


 まるで子供のように、そわそわしながら急かす彼に、つい笑みが零れる。

 私は、今朝、重い気持ちで連行される罪人のように出た家に、不思議なほど軽い足取りで向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ