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恋情と愛情(5)

「人間の男は新しい女を前にしたとき同時進行で好意を向けるそうですが、女は比較するそうです。既に貴女の夫という有利な立場にいながら、比較で落とされるというなら、それは事実私に何か足りない部分があるのでしょう。――まあ、どれだけ比較されても私は落とされる気はしていませんが」

「自信があるのね」


 うんちくを述べるレフィーにそう返しながらも、それはそうかと思う。

 実際、レフィーは素敵だ。今この瞬間も、「好き」って叫びたいくらいだ。

 昨日より今日、さっきより今。ずっと好きなのに、まだ好きになっていく。


「ありますよ。今もまた、自信が付きました。言ったでしょう、ミアはわかりやすいと。気付いていないでしょうが、貴女はいつも私が視界に入った途端、口元が緩むんです。ついでに言えば、私のことを考えているときも態度で丸わかりです。たまに口パクで私の名前まで呼んでいます」

「え?」

「貴女は貴女自身が思っているより、私を愛しています。そして私はそのことを、貴女以上に知っているんです」

「!?」


 レフィーの指が、私の髪の中に入ってくる。

 でも驚いたのは、そのこそばゆい感触ではなくて。


(私が……レフィーを愛してる?)


 恋はしていると思っていた。事あるごとに、好きだなと思っていたから。

 でも愛は、どこか遠いものと思っていた。独りよがりな私には、到底辿り着けないそんな場所にあるものだと思っていた。


(それなら私たちは、もうずっと前からちゃんと恋愛していたのかもしれない)


 恋がわからないと言うレフィーは、陛下に嫉妬して()(ちよう)(らん)(そう)を摘み取っていた。

 愛がわからないと思っていた私は、レフィーの目からは愛しているように映るという。


(もしかしたら私は、『実験』という単語に、振り回されていただけなのかも)


 私はその単語だけ、上辺だけを見ていて。それを口にするレフィーの心情に、欠片も意識を向けていなかった。

 『実験』は彼が好きな『試す』ことで。彼はただ純粋に、自分の好きなことを私と一緒にやりたいという気持ちで、その言葉選びをしていたのかもしれない。


(そうだ。レフィーは以前、私が幸せであることを望んでいると言っていた)


 どうして忘れていたのだろう。それよりも、どうして聞き流してしまっていたのだろう。

 そんなふうに言う彼が、私を使い捨てるわけがないのに。


(もし……もし次にレフィーが「実験がしたい」と言ったなら、私は……)


 レフィーの手が、私の耳の後ろから首筋を伝って、左頬まで来る。

 そろりと正面に目を戻せば、瞬時に、琥珀色の瞳に囚われた。


「ミア」


 名前を呼ばれる。レフィーがくれた、この世界の新しい『美愛』の名前を。

 覚悟は、出来た。


「そういえば、エレベーターが完成したんですよ」

「…………は?」


 だがその覚悟は、三秒後には私の半開きの口からするっと抜けていってしまった……。


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