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恋情と愛情(2)

「では、ミアが求めている『軽め』の内容を聞かせて下さい。正直、私には恋とはどういった状態なのか、今ひとつ理解できていませんので」


 会話に適さない距離のままに、レフィーが尋ねてくる。

 聞かせて下さいと言うのなら、もっと聞く体勢になって欲しい。今の貴方の体勢は、手を付いていないだけで完全に壁ドンのそれである。

 でもそうか。具体例を提示すればいいのか。「どう……」と顎に手を当て、考えてみる。

 『恋人とやってみたいデート』に関しては、例のレフィーのパーフェクトエスコートによって完遂された。なので物足りないと感じるのは、計画的ではなく衝動的。技術的ではなく内面的。そういった部分というか。

 あれだ。出会ってからデートまでの、両想いだなんて嬉しいなっていう浮かれた気分、求む。


「……例えばこう、無性に抱き付きたくなるとか「好き」と言いたくなるとか……そういうの」


 うん。これだ。言葉にして、しっくりきた。

 甘酸っぱい雰囲気。欲しいのはこれだよ、これこれ。


「そうですか。ではミアが、やってみせて下さい」

「えっ」

「私に抱き付いて、「好き」と言ってみて下さい」

「!?」


 ……しまった。そうだった。何でも試したくなる人だった、この人。

 つい最近も、マッサージを覚えたというレフィーの実技によって、眠りに落とされたんだった。起きたら生まれ変わったかのようなレベルで、スッキリしていたんだった。


(実演してみせてと来たかー……)


 そりゃ私も王都で散々、レフィーにやってもらいましたけれども。

 でもこう、「いつでもどうぞ」な感じで構えている相手に、甘酸っぱい雰囲気を出すとか無理がありませんかね。


(言っても仕方がないか……ええいっ、ままよ)


 ボスッ

 その胸に額から突撃しまして。

 むぎゅっ

 そこから両手を背中に回しまして。


「す、す、好き!!」


 そしてシンプルな思いの丈をぶつける! これでどうだ!


「……」

「……」


 ……いや、うん。我ながらやけっぱち感がすごい。「どうだ!」じゃないわ。


「……」


 さらにはこのレフィーの無反応。……辛い!

 恋の手本を見せるはずが、『照れ隠しで中途半端なことをしたせいで、余計に恥ずかしいことになった』手本を披露してしまった。


「あれだけ恋愛について書かれた貴女の本を読んだはずなのに、今の感情を表す言葉が見つかりません」


 重度の本の虫すら悩ませる謎行動を取って申し訳ない。あと、レフィーの声のトーンからして、見えないけれどおそらく真顔で言っている。

 取り敢えず実演はした。したにはした。もう離れてもいいかしら。

 私はレフィーの背中から両手を離し、次いで額も離そうとして――したところで、レフィーに抱き締められた。


「レフィー?」

「このままでいたい……千年くらい」


 いやそれは長過ぎでしょう。

 ぎゅう

 ぎゅっ

 ぎゅうぅ

 微妙に角度や力加減を変えながら、レフィーがさらに抱き締めてくる。

 あ、これ一番良い(あん)(ばい)を確かめている動き。一ヶ月以上一緒にいて、私も大分わかって来ましたよ。

 もう二種類ほど試した後に納得が行ったのか、レフィーはそっと解放してくれた。本当に千年ホールドされなくてよかった。


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