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幸せ過ぎる結婚生活(3)

「読みたかったって、表紙にタイトルも書いてないのに……」

「そこに見たことの無い本があるなら、読むしかないでしょう」


 山を前にした登山家か、貴方は。

 うぅ、本当に何てこと。衝撃から立ち直れない。レフィーの顔が見られない……。


「初めてミアに会った日、私は貴女とその場で番おうとしました。今思うと、酷いことをしようとしていたと思います。申し訳ありません」

「えっ」


 目まで瞑って外界をシャットアウトしていたところ、突然のレフィーの謝罪に私は思わず目だけは開けた。


「私が読んだあの物語は、幸せな結末を迎えるものではありませんでした。だから、参考にすべきではなかったのです。私は貴女が幸せであることを望んでいます」

「レフィー……」


 続けてやはり突然にレフィーから真摯な言葉が来て、両手も顔から外して彼を見る。


「その点、貴女が描いた物語は最高の教材ですね。貴女が描いたくらいです、貴女の望みが反映されているはず。まさに私のために存在するような本ですね」

「いっ!?」


 ジーンと感じ入っていたのも一瞬、私は衝撃のあまり忘れかけていた身の危険を思い出した。

 本をテーブルに置いたレフィーが、再び固まっていた私の両肩に手を置く。そのままジリジリと距離を詰めてきた彼との間合いを、私は仰け反ることで確保した。


「待って、落ち着いて」


 「私の望みが反映されている」という指摘そのものは合っている。が、その本に限らず、自分が主人公になりたいかどうかというのはまた違う。

 差し当たって私は、そこに描いたレベルの濃密ラブストーリーは求めていない。決して求めていない。


「レフィー。この物語はフィクションであり、実在の人物団体とは一切関係ありません」

「わかりました。好くなさそうなら、その時点で止めます」

「いやいやいや、わかってないよね!? 駄目だって言ってるよ、私は」

「それは貴女の身体に聞くことにしましょう」

「ちょっ」


 誰だこの男に、そんなお約束なエロ台詞吹き込んだ奴! 私だ!

 とうとう仰け反る限界――背中がソファに付いて、私は天井を背にしたレフィーを見上げる形になった。

 絶体絶命。この男はやると言ったらやる。何せ先日も、裁縫について書かれた本の『簡単に針に糸を通す方法』という項目を読んだ後、「もっと効率の良いやり方があるのでは」と五時間ひたすら針に糸を通していた男なのだから。


「あ、う……」

「……えーと、これは……俺は助けるべき?」


 まな板の鯉な私の耳に、不意に第三者の声が届いた。

 幻聴が聞こえるほどの危険度とか、やばい。そう思いながらも、寝転がったまま怖いもの見たさで声のした方に目を遣る。

 そして――


(幻覚……じゃない、本物だ!)


 私は思わず目を見開いた。

 天地が逆転した視界の先、見知らぬ銀髪の青年が立っていた。


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