表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/69

百点満点のエスコート(3)

(一気に鮮やかになったなあ)


 応接セットの横にある姿見に全身を映しながら、その場でくるりと回ってみる。

 ベースは、クリーム色のワンピース。腰の辺りで切り替えがあり、そこからラッフルスカートになっている。スリットが入った七分袖には、ワインレッドな編み上げ紐の装飾が。そして背中にはジッパー代わりの大量な胡桃ボタン。ボタンに至っては、統一感を保ちつつもすべて色も柄も違っている。

 紐は予め結び、ボタンは上から二つまでだけ外して、後はズボッと被って着ましたとも。色気のない着替え方で、申し訳ない。けれども、私が買いに来たのはあくまで普段着るための服。脱がされるための服では、断じてない。だからデザイナーさん、許して欲しい。


「この服は、今すぐ処分します」


 レフィーが、私が最初に着ていた白いドレスを手に取る。

 家に帰ってからではなく、今すぐとは。早く脱げとは言っていたけれど、まさかそこまで目の敵にしていようとは。


「処分でしたら、こちらで承りますが」


 一歩引いて私たちを見ていた店員さんが、スッとレフィーに寄る。

 流れるような動きだ。プロだ。


「そうですか、では――」

(ん? 何だろあれ)


 店員さんと話しているレフィーの身体が、突然に何本もの青紫色の筋に包まれた。

 前世のテレビ番組で見た、静電気によく似ている。パリパリという音も聞こえるから、余計にそれっぽいというか。とにかくレフィーが電気っぽい光を(まと)っている。

 何か魔法でも使っているのかな。――そう思った直後だった。


「いっ!?」


 レフィーの手から、ドレスが消えた。

 消えただけなら今朝の花束のこともあり、それほど驚かなかったと思う。

 が、


「この()の処分をお願いします」

「……」


 代わりに現れたものが、大問題だった。


(ええー……そこまで目の敵に?)


 謎の技術で散らばらず球体でまとまった灰を、レフィーが店員さんに手渡す。

 私と一緒に呆然としていた店員さんが、ハッとしてそれを受け取る。既に顔色以外はまったく笑顔が崩れていない。プロだ……。


「それではデートの続きをしましょう、ミア」


 他の四着を例によって亜空間に仕舞ったレフィーが、出入口に向かって歩き出す。

 私たちを送り出す店員さんのお辞儀が、さっきより深い気がする。目を合わせてはいけない客と認定されたね、これは。


「レフィーって、竜は竜でも何竜なの?」


 店の扉を潜りつつ、私はレフィーに尋ねてみた。――ある程度の予想を立てて。


雷竜(サンダードラゴン)ですよ」

「やっぱり……」


 それっぽい、すごくそれっぽい。そして電気っぽい光は、ぽいどころか電気だったらしい。

 雷竜。麻理枝先輩の漫画で、鉄塔に雷落として粉々にしていたっけ。だからシクル村で雨雲を呼んで土砂降りなんて真似もできたのか。納得。


「ああ、手を繋ぐのは待って下さい」

「え?」


 もはや自然な動きで触れようとした私の手を、レフィーにスッと避けられる。

 予想外のことに私は、つい彼をまじまじと見てしまった。


「まだ少し帯電しているので、触ってはいけません。……失敗しました」


 そう口にしたレフィーのばつの悪い顔が珍しくて、逆に得した気分にさえなってくる。


「じゃあ平気になったら、レフィーから繋いで」

「わかりました」


 加えてそんな二つ返事まで来たなら、もう上機嫌になるに決まっている。

 私は軽い足取りで、レフィーと並んで街道を歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ