表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/69

貴女は私の番(1)

 本屋で換金を終え、私たちは中央区から西区へと向かっていた。


「ねぇ、レフィー」

「何でしょう?」

「かなりの高確率で女性がレフィーを振り返ってる……」


 打率九割行ってやしませんか? 二度見三度見の人までいるのですが。

 おかしい。私の漫画を実践中なのは、レフィーだけのはずなのに。野生のエキストラが多過ぎる件について。


「あと低確率だけど、私が睨まれてる……」


 目を合わせてはいけないし、レフィーにチクっているのを勘付かれるのも怖い。私は街並みを眺める振りをして、こっそり言った。

 それを受けて、レフィーが直近で睨みを利かせていった女性を一瞥する。


「あれはミアが睨まれているというのとは、少し違うと思いますよ」


 本当に一瞥くれただけで、レフィーは直ぐさま進行方向に目を戻した。


「多くの人間にとって他人への関心は、「あの人と比べて自分はどうか?」に集約されます。先程の女性もおそらくその例に漏れないでしょう。彼女にとって、「ミアより自分は魅力的かどうか」という問いは、「バスタブの猫足より自分の足は美しいか」と同レベル。どうでもいい。気にするだけ無駄ですね」

「ズバッと言ったね」

「それから今の私は人間の姿なので、振り返るのが人間の女なのは当然です」

「ズバッと言ったね!」


 いやまあ実際、その潔さも含めて素敵ですけどね、貴方。


「って、あれ? 今の言い方だと、竜のときは竜な女性がレフィーを振り返っていたのよね? 竜は番にしか興味を示さないんじゃなかったの?」


 麻理枝先輩から聞いていた話だと、確かそんな設定だったはず。「本能レベルで唯一」というのが、竜の愛し方だとかどうとか。


「興味の種類によりますね。欲情という点では、ミアが言うように番にしか惹かれません。ですが、竜は基本的に美しいものが好きなので。コレクションとして同族を欲しがる者も、います」

「コレクションとな……」


 それ、人間で例えるなら、人間をコレクションとして集めているという話になるのでは。

 ……ん? 待って、ある。あるわ。成金親父が美女侍らせるとか、普通にあるわ。何てこと、シュールな世界は割と身近にあったのだ……。


「そっか。他に欲情はしないから、番が唯一なの――ね?」


 得心いった。そう話題を締め括ろうとして、ふとその直前のレフィーの台詞が頭を過る。


「番には欲情という意味で、関心がある」

「そうですね」

「私はレフィーの……番」

「そうですね」


 と、いうことはですよ?


「……してるの? 欲情」


 まったくそう見えませんけど。


「してますよ」

「してるの!?」


 まったくそう見えませんけど!


「いやだって、レフィーが私を迎えにきたのって、偶然よね?」


 今年旱魃になったことも、ましてやその生け贄に私が選ばれたことも、レフィーは知りようがないはず。


「偶然ですが、必然です」

「どっち!?」


 それ対義語ですし!


「以前、過去に人間を番とした竜の話を耳にしたのですが、その方は白い結婚をされていたようで。私はそのときに、「そんな稀な状況にありながら、異種族間での繁殖を試さないとは勿体ない。これはもう、私が自分で実行するしかない」そう思ったんですよ。そう思い立ったということは、その時点で私の番が人間だということになります。番以外とは、子を成せないわけですから」

「あ。あー……なるほどね」

「シクル村の風習は随分前から知っていました。でもそのときは、単なる知識でしかなかった。ところが今回の旱魃に限って、生け贄の人間が欲しいと思った……そう、勘が働いた」


 レフィーが空いている方の手で、自身の顎を(ひと)()でする。


「状況的に見て、番は貴女で間違いないと確信しました」


 でもって顎に手をやったままのレフィーに、「容疑者はお前だ」的な言い回しで言われる。恋の始まりを尋ねたはずが、気が付いたら推理を聞かされていた。


「レフィーは女性をコレクションしたいとかは……」

「私は本があればいいです」


 うーん。清々しいほどの即答だ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ