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そんなこんなで初デート(3)

 王都の宿で一泊しての朝を迎えた。記念すべき初デートの日の朝である。

 ちなみに昨夜レフィーが取ってくれた宿は、ちゃんと二部屋だった。そこはわかってくれていたようだ、偉い。偉いので、部屋のグレードが初デートではなくハネムーンで利用するようなレベルだったことについては、指摘しないことにする。


(シクル村の宿の五倍はしていたよね、ここの料金……)


 高額なだけあった部屋の扉を後ろ手で閉め、私は宿の廊下へと出た。

 今頃はレフィーがロビーで待っているはずだ。そこからデートをスタートすると、昨夜彼は話していた。


(そうそう、『待ち合わせ』というのも押さえておきたいポイントだったのよ)


 レフィーは私が思った以上に、『恋するあなたへ ~初めてのデート編~』をなぞらえたデートを考えてくれているのかもしれない。

 私は浮き立つ心で、一階へと続く階段を下りた。




 いやあ、これは何といいますか。

 「私が思った以上」であることには、変わりないのですが……


「レフィー……ものすごく、目立ってるわね」


 私はロビーで大注目を浴びていたレフィーに足早に近寄り、こそっと彼に言った。

 まあ、これは見るよね。私でも見るわ。美形が大きな花束を抱えて立っていれば!

 悪目立ちではなく実際に絵になっているところがまた、逆に申し訳ない気持ちになってくる。こう……美形の無駄遣い的な? 金取れるレベルの絵面を個人的にやってもらっている贅沢さといいますか。


「ミアの本でも男は注目を浴びていました。だからこれで合っています」


 この状況に欠片の動揺も見せないレフィーが、私に花束を差し出してくる。

 そして流れるような動きで、私の手の甲にキスをしてくる。


(うひぃっ)


 危ない! 変な声が出かけた……!


「……そうね。まさにこんな場面だったわ……」


 うん。レフィーが言うように、ちゃんとあの本をなぞらえた場面になっていると思う。――待ち合わせにきた女性(私)も大注目を浴びることになるところまで、きっちりと。


「……とても可愛らしい花ね。ありがとう、レフィー」


 棒読みにならないよう精一杯役を作って、私は『台詞』を言った。

 そうだよ、普通に考えてそうなるよ。何故そこまで頭が回らなかった、私。レフィーが漫画を真似るなら、当然その相手役もやらないとなんだよ……私!

 レフィーから受け取った花は、小さな丸っこい花びらが可愛い白い花だった。もうこのふかふかに見える花束に、ボフンと突っ伏してしまいたい。

 って、そうだ。この花束、どうしよう。ずっと持ち歩くの? それ何て拷問。

 とはいえ、レフィーの空間に入れてもらうのも、何だか突き返すようで……


「ミアの本では宿ではなく女性の家だったので、花束は花瓶に移されていましたよね」


 どうやらレフィーも花束の処置について、考えが及んだらしい。思案顔のレフィーが花束を見て、それから私をじっと見てきた。


「花束は花瓶に移された後は、枯れるまで飾られていただけでした。それなら飾るという役割さえ果たせば、融通を利かせてもかまいませんよね」

「? どういう――えっ」


 ボフンと突っ伏したいと思っていた花束が、まさにボフンと音を立て私の目の前から消えた。

 同時に、私の両手がレースの手袋に包まれる。その手袋には、謎の原理で生花がくっついていた。

 何の変哲もない花柄のデザインですよみたいな顔で、くっついているそれ。私はレフィーの言葉の意味を理解した。

 首に違和感を覚えて手をやれば、やはり生花がついたチョーカーらしきものが。足元を見下ろせば、両足首にはアンクレット。加えて彼は、髪飾りも出したのだと思う。両耳上あたりに、そんな感触がある。


「これでいいでしょう。残した花に他の生命力を移したので、少なくとも今日のデート中に枯れることはありません」

「まぁ。魔法って便利なのです、ね……」


 ――って、魔法!?

 一拍遅れて頭に入ってきた意味に、私は思わず跳び上がった。

 おおおおおぃ。ここ、人間の街だよ。しかも王都だよ。でもって絶賛大注目中だよ。悠長に、かぼちゃが馬車になったお(とぎ)(はなし)を思い出しかけている場合じゃないわ!


「レ、レフィー!」


 ガッ

 私はレフィーの腕に自分の腕を絡ませ、


「とてもとても気に入りました。一刻も早くデートを始めましょう」


 初っ端からもう猫が剥がれ気味の口調で言いながら、早足で彼を宿の外へと連れ出した。


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