只々、君想う
「おい、またお前の婚約者様が覗いているぞ。」
「ん?ああ、可愛いだろう?」
「お前なぁ…今度は何やったんだよ?毎度毎度覗かれる俺の身にもなってくれ…」
「いやいや、今回は何もしていないさ!
逆に何もないことが不安になったんだろうね。」
「お前は婚約成立前から色々やりすぎなんだよ…」
「仕方ないんだよ、喜ぶ顔も怒る顔も驚く顔も何もかも愛おしいんだ。」
「何度も聞いたよバカ野郎…」
「一国の王子にバカと言うのは君ぐらいだろうね。」
「バカはバカだろうが!ったく、今日はもう気が削がれた…話はまた今度だ。婚約者様の機嫌を取って、また会うときには静かに相談させてくれ。」
「分かったよ。また今度だ。」
本当に仕方ないんだよ。
初めて会ったあの日から。
君が欲しいと言うからあの時には存在し得ぬ花を作り、
会いたい時に会えるように婚約者にもした。
私はもう彼女なしでは生きられないんだよ。
「ほら、そんなところで隠れてないで出ておいで。
話をしよう。」
今日の彼女はどんな顔をするのだろうか。
願わくば私がまだ見たこともないような顔を見たいな。