治療方法について①
「まず、君には現状の確認をしてもらう」
アーロン先生がそう言うとクロエが何やら資料らしい紙の束を持って来た。それを私の前に置かれた。
「これは……」
「それは学院での君のことについて聞き取り調査をして集めたものだ」
アーロン先生がそう言った。その紙には、箇条書きで
・怖い
・セシリアに対する対応が酷すぎる
・最近はまるで化け物のような見た目で怖くて近づけなかった
・あれが噂の妖精姫とは笑い種だな
・クローディア様は学院に来てから変わってしまわれた
・あの女があのような姿になっているのを見てるととてもいい気味だと感じるわ
・最近は殿下もクローディア嬢に呆れています
・今にも人を殺しそうな犯罪者の目をしているから怖いわ
・セシリアを傷つける奴はオレが成敗する
・
・
・
などの私の現在の学院の評判が書かれていた。私は手が震えた。あまりにも良い加減なことや話に尾ひれがついた発言が散見されたからだ。確かに最近の私が怖かったと言うのはわかるがセシリアを擁護するような発言もかなりあった。私の気も知らないで無責任な発言をした人達に怒りを覚えた。
「ク、クローディア嬢、そんなに怒らないで。まず、深呼吸をしよう。ほら」
アーロン先生はそう言って、ふーと息を吸い始めた。私も一度深呼吸することにした。少し落ち着いた気がした。
「で、こんなものを私に見せて何がしたいのですか?」
私は怒り気味の声のトーンでそう言った。するとアーロン先生はあたふたして
「そうじゃないよ。えーと、あーと……」
と言った。そんなアーロン先生に対してクロエさんがどこから出したのか分からないが大きなハリセンを取り出しアーロン先生の頭を打った。ハリセンはパチンといい音を出して場の空気を支配した。
「しっかりしてください。年下の令嬢に凄まれたくらいであたふたしないでください。みっともない」
クロエは辛辣にアーロン先生に向かってそう言い放った。
「ごめん。さて、理由だね。それは最初に言った通り現状確認だよ」
「どういうことですか?」
「つまり、これが君の状態を判断する指標だよ。このような調査を何回かこれから間を空けて行うから、この調査を見てどれだけ自分を制御できているか見るのさ」
アーロン先生はどうだいい方法だろうと言いたげな表情でそう言った。苛立ちを感じるので一々提案するときにその表情をやめてほしい。アーロン先生は続けて言った。
「それで君が嫉妬に駆られて視野狭窄的になっているかがわかる。恋をしているときは周りが見えなくなり、普段だったら恥ずかしくて出来ないことをしてしまうんだ。だから、君の考えや行動はこの紙に書かれているように周りの人に駄々漏れと言う訳だ」
私はもう一度その紙を見た。さっき見たときは私に対する侮辱や恐怖だけに目がいってしまっていたが、よく見ると私が物騒なことを言っていたなどが詳細に書かれていたのだ。私が考えていたことが他の人に知られていたのだ。知らず知らずのうちに私は独り言で口に出してしまっていたようであった。私は余計な発言や不適切なことを言ってしまったのではないかととても不安になった。もし、セシリアを殺してやるという考えが口に出ていたら、私の人生は終わりを迎えてしまう。誰もが人の揚げ足を取ることに熱心な貴族学院内で、そのような発言するのはとても恐ろしいことなのだ。私は頭を巡らし過去の自分を振り返った。しかし、最近のことはほどんど記憶がなくどのような言動をしていたかも思い出せない。私は焦燥に駆られていた。するとアーロン先生は
「まぁまぁ、落ち着いて」
と言った。私にとって今後が進退に関わってくることだ落ち着いていられるわけがない。お父様やお母様にも迷惑がかかってしまう。
「落ち着いていられるわけないじゃないですか!! ここに書かれていることによってはお父様たちに迷惑がかかってしまうのですよ!」
私は両手をドンとテーブルに載せて体を前に出して言った。
「確かにこのままでは少し問題かもしれない。だが、まだ何かが起きたわけじゃない。これから改善していけばいいだけのことだよ。そのことを知って欲しくて見せたわけだしね。さて、一回気を取り直そう」
アーロン先生がそう言うとクロエさんは私のカップにハーブティーを注いだ。私は一回、心を落ち着けるためにそれを飲んだ。ラベンダーのフローラルな香りに少し心が癒された気がした。私は一旦お茶を楽しむことにしたのだ。